ギリシャ神話、と聞いたら多くの方がまず思い浮かべるのが、
浮気性のゼウス神と、
ヤキモチ焼きの奥さんヘラ女神
かもしれない、と思うのですが、
実はこのヘラ女神はただのヤキモチ焼きの奥さんと覚えておくにはもったいない、
ギリシャ神話の中でも最も偉大な女神!
そんなヘラ女神のグレートなお話、ご紹介します!!
女神ヘラはゼウスの姉にして正妻
というわけで、ギリシャ神話の中で
女神ヘラがどれだけグレートか
って件をご紹介していきたいのですが、
まずはその出自から!
女神ヘラの両親は、クロノスとレア。
ですので、
- 炉の女神・ヘスティア
- 農耕の女神・デメテル
- 冥界の神・ハデス
- 海と地震の神・ポセイドン
- 最高神ゼウス
という神々と、両親が同じ兄弟姉妹です。
そして、ヘラ女神は、
この兄弟の中で末っ子のゼウスの正妻
なのです!
ん? あれ? 近親相姦?
って思った方、鋭いですね! 当たりです!
ギリシャ神話の世界では近親相姦ネタがたくさん出てくるのですが、まあこの世界が始まって初期の頃の神様たちだと他に相手もいないのに仕方ないかな?
同じ兄弟の中では、デメテル女神もゼウス神との間にペルセポネという娘を儲けていますが、
正妻なのはヘラ女神ただ一人!
そしてもちろんですが、
ギリシャ神話の最高神の正妻なので、女神として最高位
当然ながら最もグレートな女神というわけですね!
だからちょっと、そこらへんの女神と一緒にしてもらっちゃ困る、格が違うのよ、ってことです。
ですから、ヘラ女神と聞いて、「ヤキモチ焼きの奥さん」程度に思ってもらっちゃ、困るのよー、その偉大さを、知ってくれ!
で、どうしてこのヘラ女神は他の女神たちとは違う別格の地位を手に入れたのか、って話なんですけど、
一説には、ヘラ女神は
もともとはギリシアの先住民の大女神
だったんじゃないかと言われています。
ギリシャ語を話す人たちがミュケナイ文明を築いた時よりも前に、
ギリシャではクレタ島を中心としたミノア文明が栄えていたのですが、このミュケナイ以前の人たちの女神だったんじゃないかということです。
その後、ギリシャ語を話す人たちがミュケナイ文明を繁栄させた時に、
ギリシャ語圏の人たちが信仰していたゼウス神の妻、という形で神話に取り込まれていったんじゃないか、と。
その根拠の一つとして、ヘラ女神の聖獣は牛で、
「牛目のヘラ」
と呼ばれるのですが、
これはミノア文明の人たちが牛を神聖視していたことの名残なんじゃないだろうか、ということなんですね!
まあこれもありそうな話ではありますが、なにせ文字資料以前の時代の話ですからはっきりしたことは分からないのですが、
女神ヘラがギリシャ神話の中で別格だったことは間違い無いので、そういう可能性も大いにありますね!
でもそうだとすると、割と平和に先住民と後から来たギリシャ系住民との間の融合も進んだような気がするのですが、
ぜひここらへんの歴史を立証できる何かの証拠が見つかってくれるといいですね!
結婚の女神ヘラ
さて、そういうことでギリシャ神話の中で女神ヘラはゼウスの正妻なのですが、
女神ヘラは結婚の女神
でもあります!
ゼウスとの間の
「聖なる結婚」(ヒエロス・ガモス)
の儀礼がヘラに捧げられたそうですよ。
ヘラ女神の異名としては、
「ガメリア」(結婚の)
「ズギア」(結びの)
という結婚に関連する呼び方もありました。
そんなわけで、女神ヘラは神聖な結婚をつかさどる女神でもあったわけですから、
実はゼウス神の浮気に怒る、という神話は、
結婚の女神としてのつとめ
から生まれた神話なんじゃないか、とも言われています。
そう考えると、ヘラ女神は単に嫉妬深いタイプなんじゃなくて、
立派に「結婚の女神」としてのつとめを果たしていただけだった!
ってことになりますから、決してただのヤキモチ焼きでは無いってことになりますから、ぜひそんな一面も知っておいていただきたいです!!
では最後に、結婚にまつわるヘラ女神の下ネタ(?)を一つ。
ゼウス神とヘラ女神は、性行為で男女のどちらが快楽が大きいかを言い争った時に、有名な予言者テイレシアスにことの真相を尋ねました。
すると彼は、男女は1:9の割合(!)と答えたため、ヘラは怒ってテイレシアスを盲目にしてしまったということです。
テイレシアスといえば、盲目の予言者として神話に登場するのですが、まさかこんな理由で盲目になっていたとはね!
それにしても、結婚の秘密って、意外とレベルが低いよね!
ヘラ女神の子供たち
さて、そんな「結婚の女神」ヘラですが、
それでは、ゼウス神との間にもうけたのはどんな子供たちがいたのでしょう?
これがですね・・・
ヘラは「結婚の女神」ではあるのですが、
「母なる女神」としての神話はあんまり充実していません。
鍛冶の神ヘパイストス
は、ゼウスとヘラの子ということですが、
実はヘラが一人で産んだ、って説もあるくらい。
しかも、ヘラは足が不自由だったヘパイストス神を毛嫌いして、天から放り投げてしまった、という話もあります。
えー! 虐待、虐待!!
ヘラ女神って「優しいお母さん」のイメージは程遠いのですよね〜。
そのほかに
戦いの神アレス
がゼウスとヘラの子だということですが、
このアレス神って粗暴で神々の間で評判はあまりよくありませんでした・・・
神話の中でも、腕力は強いが頭がどうも・・・って扱いで、ちょっと残念なキャラなんですよね〜。
その他には、お産の女神エイレイテュイア、青春の女神へべもヘラの子供だ、ということです。
でもね、ゼウス神が女神レトとの間にもうけた子供たちといえば、
アポロンとアルテミス
みたいに重要な神様たちが生まれて神話の中でも活躍しているのですが、ヘラが産んだ子たちはなんかちょっと残念だったり、影が薄かったり、ヘパイストス神なんてヘラが放り投げちゃった、っていうくらいですから、
ヘラは「結婚の女神」ではあっても、「母なる女神」ではない
っていうのは、ギリシャ神話の中の共通認識みたいなものがあったみたいな。
でも確かに、ギリシャ神話の中で「お母さんキャラ」を全面に出してきてる女神としては、デメテルがいるので、母性の部分の神話はヘラにはあまり語られなかったのかもしれませんね!
ヘラ信仰の中心地
さて、そんなヘラ女神ですが、
さすがは先住民の大女神だったという説もあるだけあって、
ギリシャ各地で古くから信仰されてきた聖域が残されています!
ヘラ信仰の中心地は、ペロポネソス半島の
アルゴス
ここには壮大な
ヘライオン(ヘラ神殿)
の遺跡が残されています!
神話の中にもこのヘラ神殿は登場してきて、アガメムノン王がトロイアへ遠征を開始する時には、ここで出陣式を行ったということなんです!
現在は街中から少し外れた場所にあるので、訪れるのは大変ですが、一度行ってみる価値は十分ありますね!
そして、もう一つヘラ信仰で有名なのが、
サモス島
ここに残るサモス島のヘラ神殿はギリシア世界最大級のスケールなんです。
なんとその規模パルテノン神殿の2倍はあったとか。
サモス島の僭主ポリュクラテスが、紀元前6世紀に設計させ、途中までは建てられたのですが、ついにこの大神殿は完成することはなかったそうです。
現在サモス島を訪れると、ほとんど基盤しか残っていませんが、壮大な神殿の跡をみることができますよ!!
*サモス島について詳しくは、こちらの記事も合わせてどうぞ!
ローマ神話のユノへ
さて、このギリシャ神話のヘラ女神は、
やがてローマ神話にも受け入れられ、
ローマ神話の女神ユノ(Juno)
と同一視されるようになります。
このローマ神話のユノは、ローマ最大の女神で「レギナ」(女王)とも呼ばれていた神様でした。
このユノもヘラ女神を引き継いで、
女性と結婚の神
として信仰されていたということです。
そしてローマの暦では、ユノの月は6月でした。
現在欧米で言われている
「6月の花嫁」(ジューン・ブライド)
っていうのは、実はこの結婚の女神であるユノの月に由来するそうです。
結婚の女神の月に結婚した花嫁は、幸せになれる、っていうジンクスの始まりですね!
日本でもこれにあやかって、6月に結婚したい女性は多いと思うのですが、
日本だと6月は梅雨時だから、結婚式をするには向かないかもしれないよ?!
ヨーロッパの方だと、6月は初夏の爽やかな季節だからいいんだけど・・・
偉大なヘラ女神の素顔をぜひ知ってね!
ということで本日は、ギリシャ神話、と聞いたら多くの方がご存知なはずの
ヤキモチ焼きのゼウスの奥さん
というイメージの
ヘラ女神
しかし実はただのヤキモチ焼きの奥さんと覚えておくにはもったいない、
ギリシャ神話の中でも最も偉大な女神
しかも、現代でも「ジューン・ブライド」というジンクスがよく知られているように「結婚の女神」でもあったんですよ、
というお話でした!
「ヤキモチ焼きの奥さん」というとなんだか軽く見られちゃっているみたいな気がしますが、
いやいや、先住民の大女神だったという説もあるくらい、ギリシャではとっても重要で偉大な女神だったので、
ぜひこれからは、実は立派な神殿も各地にある最大級の女神だったんだ! と、見る目を変えてあげてくださいね!
*この記事に興味を持った方は、こちらの記事も合わせてどうぞ!