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[ギリシャ神話]母なる女神デメテルとエレウシスの秘儀

更新日:

ヤー! イレーネです。

本日は、ギリシャ神話の主な神々の中でも、

母としての神話が有名な女神

デメテル

をご紹介したいと思います。

このデメテルの神話では現代の家族関係の問題も投影できるみたいで、

現代の日本の家族像と比較してみるのも面白いですよ!

そして、古代ギリシャの最大の秘儀と言われるデメテルの「エレウシスの秘儀」についてもお話ししますね!

VaniaRaposo / Pixabay

デメテルはゼウスの姉にして妻

本日ご紹介するのは、

ギリシャ神話に登場する女神デメテル

ゼウスと同じ両親であるクロノスとレイアの間に生まれていますので、

ゼウスの姉にあたります。

そして、実は、ゼウスの妻でもあるのです。

えっ? 近親相姦?

そうなんです。姉弟同士で結婚しているんですね。

ギリシャ神話の神々って、基本的に近親婚なんですよ〜

ゼウスの正妻であるヘラも、同じ両親から生まれたお姉さんですからね。

ですから、ゼウスは自分のお姉さん二人と結婚しているわけですね。

ちょっと引きます?

でも、実際にギリシャで近親婚は一般的だったという歴史的な証拠はないみたいです。

あくまでも神話の上での話ですね。

まあ、神話では、神様たちから世界が始まるので、最初はそんなに人数いなかったから、結婚できる相手は近親しかいなかった、という考え方もできますよ!

takazart / Pixabay

母としてのデメテル

さて、ギリシャ神話で有名なのは、

ヘラがゼウスの正妻で、とってもヤキモチ焼きだということ。

でも、ヘラに加えて、

デメテルもゼウスの妻

なのですね〜。

エッ、二人も妻がいたの? 何が違うの?

と思われるかもしれませんが、神話上のヘラとデメテルはまったく違う役割を負っています。

ヘラはあくまでも、ゼウスの正妻

ゼウスの他の女性にやきもちを焼く神話は有名ですが、子供産んでを大事に育てる、という神話は、びっくりするくらい語られなかったんです。

妻であっても、母ではない、というところでしょうか。

800px-jupiter_et_junon_2_by_annibale_carracci
アンニーバレ・カラッチ「ゼウスとヘラ」

それに対して、デメテルはゼウスと一緒の神話のエピソードは少なくて、

娘のペルセポネを愛する母としての神話が断然有名なんです。

ですから、ヘラとデメテルの間には、

妻と母

という女性の役割が、くっきり分担されているんですね。

これは便利?!

世の女性は、この二つの役割を一人で背負って奮闘されている人が多いと思いますが、さすが女神は一つしか背負わないのね〜

まあそういうわけで、デメテルは神話に出てくるときは、

基本的には「母神」として描かれるということなんです。

娘ペルセポネを溺愛するデメテル

そんなふうに、ギリシャ神話の中では

デメテルは、母としての役割を受け持っているのですが、

デメテルはゼウスとの間に一人娘のペルセポネをもうけています。

そして、

この娘のペルセポネを溺愛している母親

として、神話では語られているんですよね〜

それは『ホメロス風 デメテル讃歌』に詳しいのですが・・・

この讃歌によると、デメテルは一人娘のペルセポネをとても可愛がっていましたが、

娘が友達と花摘みに出かけていて、デメテルの手元を離れていたある日、

突然に、何者かがペルセポネを連れ去ってしまいます。

800px-rembrandt_-_the_rape_of_proserpine_-_google_art_projectレンブラント「ペルセポネの略奪」

嫌がる娘の叫び声を遠くから聞いたデメテルは、必死で、姿を消してしまった娘を探しはじめます。

デメテルは9日間もの間、飲食もせず、風呂にも入らず、ひたすらに愛する娘を探しまわったということです。

そして、捜索の結果、娘のペルセポネは冥界の神ハデスに連れ去られたことが判明。

しかし、連れ去ることを許可したのは、なんと夫のゼウスでした。

これもまた近親婚になるのですが、ハデスはゼウスの兄弟(デメテルも)で、娘を結婚させる約束をしてしまったのです。

それを事前に知らされていなかったデメテルは、夫のゼウスに怒り心頭。

神々の住むオリンポス山を離れて、人間の住むエレウシスという町にやってきます。

800px-eleusis現在のエレウシスの遺跡の様子

そのエレウシスでしばらく、

エレウシスの王子デモポンの乳母として働いていたのですが、

今度はデモポンがかわいくなり、人間から神様にしてやろうと計画します。

デメテルって本当に、母親としての愛情がありあまるくらいなんですね〜。

そして、毎晩デモポンを暖炉の火にくべて、神様にしてやる儀式を行いました。

なんでこれが、神様にしてやる儀式なのかというと・・・

ギリシャ神話では神様は死なない(不死)のに対し、人間たちは死にます。

それはなぜかというと、人間たちの体についてる肉がやがて腐って消えてしまう、滅びゆくものだからなんですね。

だから、その滅びゆく肉をいったん焼いてしまえば、神様のように死なない体になる、

という儀式な訳です。

ま。神様であるデメテルから見たらそうかもしれないけど・・・

人間から見たら、これは単に

赤ん坊が暖炉で焼かれている

わけですから、普通だったら死んでしまいますよね〜??

ですので、夜に偶然この儀式を見てしまったお母さんのメタネイラは、

デモポンが殺されると思って悲鳴をあげます。

そりゃそうですよね、自分の息子が火の中で燃えていたら、誰だってびっくりして叫んじゃうと思います。

でもデメテルは本当は、デモポンにいいことをしていたつもりですから、

自分の計画を邪魔されたデメテルは腹を立てて、神殿の中に引きこもってしまいました。

そうして、デメテルは心を閉ざして、神殿の中から一歩も出ない「引きこもり」状態になるのですが・・・

デメテルは豊穣の女神でもあるので、これは大問題になりました。

デメテルが引きこもると、飢饉が起き、人間たちはすべての実りを手にすることができなくなってしまったのです。

このままデメテルが出てこないと、やがて人類は滅んでしまいます!

そればかりではなくて、人間がいないと、人間たちから供え物をたくさんもらっていた神様たちも困るようになります。

そこで、神様たちはなんとかデメテルの怒りを解こうと説得するのですが、デメテルは頑として応じません。

娘のペルセポネを取り戻すまでは、ここから出ない、と完全拒否したのです。

最高神ゼウスもこれには困り果て、ペルセポネをハデスから取り戻して、デメテルに返してやることで、その怒りを解くことにしました。

結局、デメテルの怒りに対して、折れちゃったんですね!

そうして、ゼウスは使者の神ヘルメスを冥界に送り、兄弟のハデスにペルセポネを返すように伝えます。

ハデスも最高神ゼウスの命令には逆らうことができず、しぶしぶ従いましたが、

こっそりとその前に、

ペルセポネに冥界のざくろを食べさせてしまいました。

実は、冥界の食べ物を口にすると、完全には冥界から離れられなくなるのです。

この後デメテルは、ついにペルセポネを自分の元に取り戻して大喜びするのですが、

実は冥界のざくろを食べてしまっていたために、ペルセポネは完全にはデメテルの元に戻ることはできませんでした。

一年のうち3分の1だけは、冥界のハデスの元で暮らさなくてはいけないことになってしまったのです。

それでも、愛する娘に会うことができたデメテルは、引きこもりをやめて再び豊かな実りを人間たちにもたらすことになったということです。

fredericleighton-thereturnofperspephone1891レイトン「ペルセポネの帰還」

デメテルの「エレウシスの秘儀」

そして、娘ペルセポネを取り戻して喜んだデメテルは、

自分がしばらく滞在して縁のできたエレウシスの町の人たちに、

決して口外してはならない特別の儀式を、自分のためにするようにと伝えた

ということです。

これが、いわゆる「エレウシスの秘儀」の始まりだと言われています。

このデメテルに捧げられた秘儀は、古代ギリシャでも最大級の規模を誇ったと伝わっています。

「秘儀」とはズバリ、秘密の儀式のこと

このエレウシスの秘儀に参加して、現場で目撃した人は、そのことを決して口外してはならない

という厳しい掟があったのです。

ちなみに、うっかり口外すると、死刑になったらしいです。

3大悲劇詩人の一人、アイスキュロスも、この罪で糾弾されたことがあるらしいですよ。

幸い罪にはならなかったそうですが、アイスキュロスはこのエレウシスの貴族の出身ですので、

当然その秘密は知っていたわけです。まあ疑われても仕方ない?!

それでも、アイスキュロスは儀式の本当の秘密の部分は明かしていない、と無罪になったそうです。

そんなわけで、厳しくその秘密が守られたエレウシスの秘儀は、現在でもその詳細が伝わってはいないのです。

しかし、古代ではギリシャ中の人々がこのデメテルの秘儀に加入するために集まったそうですので、

その秘密を知っている人たちも相当数いたはずなのです。

いわば、口に出さなくてもみんなが知ってる「公然の秘密」だったことは確かですね!

ただ、文字に書いて残したりはできなかったので、現代の私たちには分からなくなってしまいました。

分からないと猛烈に知りたくなる・・・

というのは人間心理で、今でも多くの議論があるところなのですが、儀式の全貌が解明されることは、もうないのでしょうね・・・

誰かがこっそりと書き残した文書が、どこかの遺跡から偶然発掘される、というような奇跡が起きない限りはね!

奇跡起きないかな〜

ギリシャのどこかで、世紀の大発見!!

というニュースが流れてくる日が、来ますように!

Olichel / Pixabay

エレウシスとデメテル

さて、こんなわけで、今でも謎に包まれている

「エレウシスの秘儀」ですが、

実は長い歴史があり、紀元前7世紀くらいには始まっていたんじゃないかと言われています。

このエレウシスの秘儀の由来を物語っている

『ホメロス風デメテル讃歌』

が作られたのが、だいたい紀元前8〜7世紀くらいか?

と言われているので、その頃にはもう世間にはエレウシスの秘儀は知れ渡っていたとも考えられます。

そして、この「エレウシスの秘儀」が行われていた、エレウシスのデメテル神殿が完全に破壊されたのが、

ゴート族の入って来た紀元400年、と考えられていますので、

ざっと見て1000年は歴史のある儀礼だったわけです。

1000年かあ〜。

さすがギリシャ、スケールが違います。

そして、このエレウシスという町は、デメテル信仰がたいへん盛んだったところで、

『デメテル讃歌』で、デメテル自らがこの町にやってきて、自分の神殿を建てさせた、と謳われているくらいですので、

女神デメテルを信仰する土地としては別格の箔がついているわけですね。

このエレウシスは、現在では「エレフシナ」と呼ばれていて、現在の首都アテネからバスですぐくらいの距離ですので、割と気軽に見学に行くこともできます。

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現在のエレウシスの博物館

By: Tkoletsis

このエレウシスは、もともとは独立した都市(ポリス)だったのですが、

紀元前6世紀頃には、近隣の有力ポリスであるアテナイ市の傘下に降って併合されたと言われています。

アテナイ市は、この由緒正しい「エレウシスの秘儀」を自分のポリスの祭礼行事に組み入れてしまって、

祭礼の時も祭礼行列はアクロポリスから出発したそうですよ!

ギリシャ中から人が集まる儀礼を自分のところで出すというのも、アテナイにとっては自分の名がギリシャ世界で挙がるいいチャンスだったというわけですね。

一体どんな秘密の儀式が行われていたのか?

さて、そんなデメテルに捧げる

「エレウシスの儀礼」

一体どんなことをしていたのでしょう?

肝心の部分は秘密にされていたので、もちろん詳しくはわからないですが・・・

この儀礼はああだったんじゃないか、こうだったんじゃないか、と、いろんな説があります。

まず考えられるのが、

「農耕儀礼説」

デメテルは豊穣の女神として、農作物の実りももたらすと考えられていました。

神話では、デメテルはエレウシスのトリプトレモス王に、麦の栽培を教えたとも言われています。

ですので、このエレウシスの儀礼でも、デメテルが農耕を伝えたことにちなんだ儀礼が行われていたんじゃないか?

と考えられるわけですね。

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デメテルとペルセポネ、トリプトレモス

By: Napoleon Vier

しかし、この「農耕儀礼説」には批判もあります。

そもそも、農耕のやり方なんて、「口外してはならない秘密」な訳ないよ?!

ってことですね。

だって、そこらの畑で隠しようもなくオープンに野外で作業していることを、わざわざ秘密で伝えることもないでしょう?

「秘密」が、何か特別な肥料とか、特別の品種とかだったりするのかな?

ってそういうものをわざわざ「儀礼」で教える必要もないですよね。

農協の寄り合いじゃないんだから。「正しい麦の育て方」の講座とかやってた訳ないでしょう。

じゃあ一体、ギリシャ中から人々が集まって、ぜひ加入したかった「秘密の儀式」ってなによ?

ってなると、他に考えられるのが

「死後の運命説」

これのヒントは、『デメテル讃歌』に出てくるのですが、こんな一節があります。

幸いなるかな、大地に住まう人間の中でこの秘儀を目にした者よ。参入を許されず、祭儀にあずかれぬ者が、死して後、闇覆う冥界で同じ定めにあずかるべくもない。

この一節を素直に読めば、

「この秘儀に加入した人は、死んだ後に冥界で、いいことがあるみたいだ」

ということに気づかされます。

確かにデメテルの神話では、冥界の神ハデスに連れ去られた娘ペルセポネを、デメテルは再び自分のところへ取り戻します。

そうすると、この秘儀に加入した人たちは、あわよくば、

死んだ後もデメテルに、また地上まで引き戻してもらおう!!

と思って加入していたという可能性があります。

じゃあ、ギリシャでは、「死後のよみがえり」とか「輪廻転生」とか、信じていたの??

という話になるのですが・・・

基本的には古代ギリシャでは、仏教のように魂がなんども生まれ変わる、という考えがあった、という証拠はないんですね。

ただ、あくまでも書き遺されることがなかっただけで、実際は人々は「不滅の魂」を信じて、死んでも再びこの世に戻ってくる、と考えていた可能性もあります。

こればっかりは、新たな証拠が出てこない限り、現代から解明することは難しいのです。

でも、「エレウシスの秘儀」には、ギリシャ中から加入者が押し寄せた、という事実を考えると、

「死ぬ前に入信しておこ」

と思った人たちがいっぱいいたんじゃないでしょうかね?

あくまでも、その可能性は、残っています・・・

*『デメテル讃歌』はこの本に収録されていますので、気になった方は読んで見てくださいね!

四つのギリシャ神話―『ホメーロス讃歌』より

というわけで、

「エレウシスの秘儀」で何が行われていたのか、二つの有力な可能性はあっても決定打に欠けるので、

現在も謎は謎のままなんですね。

皆さんは、農耕技術と死後のよみがえりとだったら、一体どっちだったらぜひ「エレウシスの秘儀」に参加したいと思いますか?

私は断然、「よみがえり」だなあ〜。

だって、死んでしまってそれっきりって、やっぱり寂しいじゃないですか。

また別の命の形でよみがえって、大切な人たちにまた会いたいですよね。

古代ギリシャの人たちも同じに考えていたんじゃないかな、なんて思います。

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エレウシス出土の石棺

By: Tkoletsis

子離れできない母親? 一卵性母娘?

さて、そういうわけでデメテルの

「エレウシスの秘儀」は、現在でも謎のままの儀礼な訳ですが・・・

現在では、そのデメテルの神話は、

心理学の面からも注目されることとなっていたりします。

デメテルの神話というと、ご紹介したように、娘ペルセポネに対する愛情が深く、

たとえ地下の冥界に連れ去られようとも、ゼウス相手にごねにごねて、結局自分の元に取り戻してしまいます。

そう聞くと、「いいお母さん」としての女神像が真っ先に目に浮かびますが・・・

現代の心理学の方では、そこまで母親と子供の関係が密着してしまうのは、問題だと考える向きもあるようですよ。

娘が結婚したのに、その結婚に反対して結局は自分のところに取り戻してしまうデメテルは、

子離れできていない母親とも考えられるし、

いわゆる「一卵性母娘」の関係という言い方もできるかもしれません。

ですので、娘を思う気持ちもほどほどに、というところかもしれません。

とはいえ、古代ギリシャの社会で、現代の日本のような「一卵性母娘」みたいな家族関係があったかどうかはわかりませんが・・・

デメテルにこういう神話が残っているということは、人間の心理として、母と娘というのは密着した状態になりやすい、ということを表しているのかもしれませんね。

女性には多かれ少なかれ、思い当たるところがあるのでは??

5540867 / Pixabay

母なるデメテルは永遠に

というわけで、

本日はギリシャ神話のデメテルの究極の母親ぶりと、

現在もなお謎に包まれているデメテルの「エレウシスの秘儀」についてご紹介しました。

デメテルは「母なる神」として、そして絶対口外できない「エレウシスの秘儀」の神として、

さらには「過保護な母親」「一卵性母娘の原型」として見ることもできる、

現代でも様々な興味の尽きない女神だと言えると思います!

この女神デメテルのお話に興味が出たら、ぜひオリジナルのギリシャ神話の方も読んでみてくださいね!

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