ギリシャ神話の最高神といえば、
天空の神ゼウス
しかし日本だとどうしても、ゼウスの浮気に奥さんのヘラが怒る、という神話が有名なもんですから
ゼウス=浮気っぽいダンナ
ってイメージが付いてしまっているかと思います。
しかし実はゼウスはそれだけの神様じゃないんですよ!
ギリシャ神話の最高神で、偉大な神様なのです!
そんなゼウスの偉大さについて、簡単にご紹介したいと思いますので、
興味のある方はぜひ読んでいってもらえると嬉しいです!
ゼウスはギリシャ神話の最高神!!
ということで、
ギリシャ神話の最高神・ゼウス!
について簡単にご紹介していきますね!
まずは、「最高神」ってどういうことかと言いますと、さっくり言えば、
ギリシャ神話に出てくる神様の中で、一番エライ!!
ってことに尽きます。
そう、ギリシャ神話では有名なポセイドンやアポロンなど、いろんな神様がいますが、みんなゼウスに逆らうことはできません!
だって、ゼウスが一番エライからです!
どうして一番エライかって?
それは簡単、
ゼウスがその前の一番エラかった神・クロノスを倒したからです!
下克上ですね!
でも実は、クロノスは、ゼウスの父親の神様でもあるので、複雑です。
ゼウスは、クロノスの子供達の中で末っ子でしたが、
一番勇気があって、父クロノスを倒したので、
跡を継いで世界の支配者・最高神となりました!
一番強い者を倒した者が、一番強い神・最高神だ!
うん、これは、跡目争いにならない、一番すっきりした世代交代ですね!!
*この神様界の政権交代について詳しくは、こちらの記事も合わせてどうぞ!
しかし、クロノスを倒した後でも、すぐにゼウスが世界を手に入れることができたわけではなくて、
その後には、
前の世代の神様たち・ティタン族
という神様の種族との壮絶な戦いがありました。
これがいわゆる
「ティタン神族との戦い」 (ティタノマキア)
神様界を二分する激しい戦いを繰り広げた挙句、
やっと、ゼウスが神様界のトップに立つことができたのです!
神様の世界も、トップに立つのは大変なのですね!
*ティタン族との戦いについて詳しくは、こちらの記事も合わせてどうぞ!
ゼウスは天空の神
さて、こうして
ギリシャ神話の神様たちの中でトップに上り詰めた
最高神ゼウス
ティタン神族との戦いにも勝利を収めた後、世界を支配するにあたって、
ゼウスは、自分の兄弟たちと、くじ引きで世界の支配権を決めたそうです。
その結果決まったのは・・・
ゼウス = 空
ポセイドン = 海
ハデス = 冥界
というふうに、3分割して支配すること。
こうして、ゼウスは世界の支配者でありながら、
主には空を支配する
天空の神
となったのです。
空に関する様々な自然現象が、ゼウスの力の現れと考えられています。
・雷
・嵐
・雨
など・・・
ゼウスの武器は雷!
こうして空を支配するゼウスですので、
その最大の武器は・・・
雷!!
人間だけじゃなくて、どんな大きな動物も、雷に当たると即死ですよね?
それくらい、ゼウスの力はすごい!
と恐れられたのです。
確かに、雷に当たると、ひとたまりもないですからね!
皆さんも、雷にはご用心!
最高神ゼウスの力で、一瞬であの世行きですよ〜!
ゼウスの起源
さて、そんな
ギリシャ神話界の支配者にして、天空の神でもある
最高神ゼウス
その起源は、一体いつから?
というのは、気になるところですよね。
紀元前8世紀頃に、ホメロスの叙事詩が編纂された頃には、もうゼウスは「最高神」として定着していました。
*ホメロスの『イリアス』はヨーロッパ最古の文学!
ということは、ゼウスという神をギリシャ人が信じるようになったのは、もっとその前。
ゼウスはもともと、印欧語族の天の神だったのだろう、と言われていますよ。
印欧語族
っていうのは、歴史の教科書で習ったと思いますが、ちょっと簡単に解説すると・・・
つまり、インド・ヨーロッパ語族のこと。
もともとは黒海北方あたりにいた、インド・ヨーロッパ語を話す民族。
現在のインドやヨーロッパ一帯で話されている言語の、母語となった言葉を話していた集団です。
紀元前2500年頃から、もともとの地域から各地へ移動を開始。
紀元前1900年代くらいから、現在のギリシャの領土あたりへやって来たと考えられています。
つまり、今のギリシャ語はインド・ヨーロッパ語の一種なんですよね。
ギリシャのミュケーナイ文明で使われていた文字である
線文字B
これは、1952年に建築家のマイケル・ヴェントリスが解読した結果、現在のギリシャ語と共通の、古代ギリシャ語だったことがわかっています。
それ以前のミノア文明(クレタ文明)で使用された文字は、
線文字A
こちらは未解読のため、線文字Bの使用されるようになった時代から、インド・ヨーロッパ語であるギリシャ語を話す人たちがやって来て定住するようになったのではないか、というわけです。
インド・ヨーロッパ語で共通して、
「ゼウス」の語根となるdieu-は、
「天」「昼」「光」
という意味になるので、
もともとはインド・ヨーロッパの天の神なのではないか
という説が有力なんですね!
でも、よく分からないのは、
ゼウスはクレタ島で生まれた
という神話もあることなんです。
クレタ島は、もちろんミノア文明の発祥の地で、別名「クレタ文明」とも言うくらい。
じゃあ、やっぱり、ゼウスはミノア文明の時代からいた神様で、インド・ヨーロッパ語族と一緒に移動して来たわけじゃないの?
とも考えられるわけです。
これについては、はっきりとしたことは分かりませんので、
まあとにかく、ミノア文明とミュケーナイ文明が色々混ざって、
その後のゼウスという神様ができあがったんじゃないですかと考えられます。
これについては諸説あるので、今後の研究結果にも期待!
ゼウスと鷲
さて、そんなギリシャ神話の天空の神でもある
最高神ゼウス
神の象徴である聖獣は
鷲(ワシ)!!
鷲は空を飛ぶことでゼウスの意思を人間に伝える、と考えられたほか、
ゼウス神自身も鷲に変身して登場したりします。
有名なエピソードとしては、
美少年ガニュメデスを愛したゼウスが、
鷲に変身して連れ去ってしまったとか。
*ゼウスとガニュメデスについて詳しくは、こちらの記事もどうぞ!
「わし座」とゼウス神!
というわけで、
空飛ぶ鷲(ワシ)はゼウスの聖獣
ですので、星座の
「わし座」(Aquila)
これは、ゼウスの鷲を表している!ということです。
この「わし座」は、空で美少年ガニュメデスの持つ「水がめ」=(みずがめ座)を狙っている、
とも言われていますよ!
そして、「わし座」のα星は
「アルタイル(Altair)」
という星です。
この「アルタイル」とは、アラビア語で「鷲」という意味なんだとか。
ちなみに、この星は日本では、
七夕の彦星(ひこぼし)
です!
そしてこの「アルタイル」は、こと座のベガ、はくちょう座のデネブとともに、夏の大三角を形成します。
う〜ん、ゼウスは「ワシ」としても、夜空ですごい存在感がありますね!
*「わし座」について詳しくは、こちらの記事も合わせてどうぞ!
ゼウスの恋!
さて、そんなゼウスですが、
ゼウスといえば・・・
浮気の神話
と思い浮かべる人たちも多いのではないでしょうか?
実際のところ、ゼウスには無数の女神や人間の女性との恋物語が残されているんですよ〜!
でも、なんでそれほど恋物語の数が増えたのでしょう・・・?
その理由として考えられるのは、古代ギリシャに蔓延していた
自分のご先祖はゼウスだ!症候群!!
要するに・・・
自分のところの都市(ポリス)の先祖は・・・
自分のところの一家の祖先は・・・
ゼウスなんだ!!
とみんな言いたいわけですよ。
だって、ゼウスがギリシャの神様たちの中で、ナンバーワンなわけですから!
で、そういうことにするためには、
ゼウスが自分のところの女性と恋をして、ご先祖が生まれた!
っていう話にするのが、一番わかりやすんですよね。
なんだか、いい加減な気もするけど、
そういうわけで、みんなが「自分はゼウスの血を引いている」と言いたがったために、ゼウスの恋物語があちこちで語り継がれるハメになった、っとこと。
う〜ん、ゼウスが好きこのんで浮気した、というよりは、
みんなで、「ゼウス様!ぜひうちの先祖を嫁にもらってくだせえ!」みたいな感じ?
だから、ゼウスが超・浮気虫だった!っていうだけの単純な話と思っていると、ちょっと違う感じがしますよ!
ゼウスのお相手の女神たち
さて、では、実際にゼウスは、どんな女性たちと関係を持ったと言われているのか、さっくりまとめてみました!
その間に生まれた子供たちと合わせて、ざっとリストアップしてみます!
(*これで全部ではありませんが、ご参考までに!)
<ゼウスと関係を持った主な女神たち>
ヘラ(正妻) — 息子アレス、ヘパイストス、娘エイレイテュイア
デメテル — 娘ペルセポネ
メティス — 娘アテナ
テミス — 娘ホーライ(季節)
ディオネ — 娘アプロディテ (*異説あり)
レト — 息子アポロン、娘アルテミス
ゼウスのお相手の女性たち
ついでに、人間の女性たちもあげていってみましょう!
<ゼウスと関係を持った主な人間の女性たち>
レダ — 娘ヘレネ、息子たちディオスクロイ
エウロペ — 息子たち ミノス、サルペドン、ラダマンテュス
イオ — 息子エパポス
ダナエ ー 息子ペルセウス
・・・などなど、ほんの一部!
ここではとても全部は上げきれないので、ほんの一部だけ。
いや〜、世の男性たちはうらやましい??
ゼウスの女性遍歴なのでした!
ゼウスの予言!
さて、そんな、
最高神ゼウス
天空の神様であるのはもちろんなのですが、
実はギリシャでは、
予言の神様
だとも考えられていました!
ゼウスは、ギリシャ北部の「ドドナ」という場所に、
人々に予言を与える
「ドドナの神託所」
を持っていて、人々の悩みに答えていたそうですよ!
ギリシャの予言の神様としては、アポロン神が有名ですが、
そのアポロン神の「デルポイの神託所」より先にできていたのが、この「ドドナの神託所」だったそうです!
つまり、ゼウスのドドナの神託所は、ギリシア最古!!
さすが、ゼウスの神託所だけあって、由緒正しい聖地だったんですね!
言い伝えによれば、ギリシアの伝説的な先住民族・ペラスギ人たちによって、このドドナの神託所は始められたんだそうです。
このドドナでは、ゼウスの奥さんは、ヘラ女神じゃなくて
女神ディオネ
と伝えられていたそうです。
だから、ちょっと伝承が違うのかもしれませんね!
この神託所でも、神官と、巫女たちが仕えていました。
ここの巫女たちは、オークの木、青銅の鍋、泉の水などを使って、神の意志の予兆を読み解き、人々に伝えていたそうです。
ご神託といっても、直接神様の言葉を聞くわけじゃなくて、いろんなサインから読み解こう!としていたのですね。
なんだか、不思議。
そんな神託所で、一体人々は何を聞きたかったのかとういうと、
国家の一大事レベルから
引っ越しとか結婚みたいな個人的な相談事まで
判断に迷うな〜 どうしよう?
よし!神様に聞いてみよう!
って感じで、色々聞きに来ていたらしいです。
相談する時にはどうするかというと・・・
神様の神託を知りたい人たちは、まず、鉛で作られた小さなタブレットに、自分の相談ごとを書いて、神官に手渡します。
そうすると、神官たちが、神様の意思を確認してから、そのお返事を別のタブレットに書いて、返却してくれました。
相談に来た人たちは、その「神様からのお返事」を読んで、家に大事に持っていったらしいですよ!
この「相談タブレット」が鉛でできていたお陰で、神託所を発掘調査したら、山ほど出て来たらしいです。
でもね・・・
「神様からのお返事」の方は、みんな家に持って帰っちゃたので、遺跡から出て来たのは、
「質問タブレット」の方だけだったそうです。
だから、今では、どんな質問がされていたのは分かるんだけど、
それに対する神様のお返事はどうだったのか?
それは永遠の謎になってしまいました!!
この「ドドナの神託所」は、現在は「ドドニ」と呼ばれている村に遺跡が残っています!
興味ある方は、ぜひ訪れてみてくださいね!
古代オリンピックとゼウス
さて、
ギリシャの最高神ゼウス
はこういうわけで、
天空の神であり
予言の神でもあった
ってことなんですけれども、
そのほかに忘れちゃいけないのは、
オリンピア市で開催されていた
「オリンピア祭」
いわゆる
「古代オリンピック」
として知られるお祭りの神様でもあったんですね!
そうなんです!
だから今でもこの「古代オリンピック」を継承した「オリンピック」を楽しんでいる私たちは、
ゼウス神に感謝しなくちゃいけないんですよ〜!
この「古代オリンピック」が行われていたオリンピア市は、ギリシャでも指折りの、ゼウス信仰の一大中心地だったということです。
ですので、ここで行われていた「オリンピア祭」=「古代オリンピック」とは、
ゼウスに捧げるお祭りだったのです!
現代のオリンピックは、全然ゼウス神は関係なくなっちゃったけど、元々は、そういうお祭りだったんですね。
そして、ここオリンピアでおこなわれた「オリンピア祭」は、古代ギリシアでも最大級の規模を誇った、大きなお祭りだったそうです!
で、オリンピックといえば、もちろんスポーツ競技をするわけですが・・・
一番初期の頃には、
スポーツ競技はお祭りのメインじゃなかった
らしいですよ。
お祭りって、いろんな出し物をしますよね?
ここら辺は、日本のお祭りでも似ているなあと思うのですが、
神様に贈り物を奉納したり、
行列を作って練り歩いたり、
音楽や踊りなどもあって、
そういうのの一つとして、
短距離走(スタディオン走)
が行われていたんですが、
そのうち、他の行事よりも、この短距離レースの方が人気が出ちゃって、
短距離以外にも種目が増えちゃって、
完全にスポーツ競技メインのお祭りになってしまったということなんです。
う〜ん、意外?!
でも確かに、スポーツ観戦って楽しいから、ついついそっちばっかりになっちゃう気持ちは分かるなあ。
あんなにドキドキしながら勝負の行方を見守るのって、他のイベントではなかなか無いですよね?!
そんなわけで、ついには、
ボクシング、レスリング、総合格闘技パンクラティオン、戦車競争、競馬、幅跳び、やり投げ、円盤投げ、5種競技、などなど・・・
競技は激増!
「オリンピア祭」自体も参加者がどんどん増えて、
なんと日程も、5日間も延々とやるくらい延長されるようになって、
ついには、ギリシャ中ですっかり有名になって、
運動に自信のある選手たちが続々と集まって、
それがいわゆる「古代オリンピック」と呼ばれるものの原型になったそうです。
で、この古代ギリシャ世界で名を馳せた「古代オリンピック」を
現代に蘇らせたのが、現代の「オリンピック」なんですね。
しかし古代では、現代と違ってオリンピックの会場を毎回移すことはなかったので、
開催はず〜〜〜〜っと、このオリンピアにあったゼウス神の聖域で行われました。
今でも、オリンピアには、びっくりするような大きな遺跡が残っています!
ギリシャを訪れたら、ぜひ一度、この遺跡にも足を運んでくださいね!
古代オリンピックの競技施設を、今でも見ることができますよ〜!
*古代オリンピックについて詳しくは、こちらの記事をご参照ください!
ギリシャのゼウスからローマのユピテル神へ
さて、そんな
ギリシャ神話の最高神ゼウス
のちには、他のギリシャ神話の神様たちと同様、
ローマで神話ごと受け入れられ、
ローマ神話のユピテル(Jupiter)
と同じ神様である、と考えられるようになりました。
このユピテル神も、元をたどれば、同じ印欧語族の天空の神だったようです。
ですので、
ローマのユピテルも、雷、雨、嵐と関わっていると考えられていました。
ローマ神話の方でも「最高神」となっていて、
カピトリウムの丘の建てられていたユピテルの神殿では
「ユピテル・オプティムス・マクシムス」(至善至高の神ユピテル)
と呼ばれたんだそうです。
ゼウスはローマでも、最強の神様だったんですね!
ゼウスは木星の神!
さて、この
ギリシャ神話の最高神ゼウス
ローマで引き継いだのは
ユピテル(Jupiter)
ですが、そのラテン語表記「Jupiter」という名前を英語で読むと・・・
「ジュピター」
です。
そう!
この名前が、太陽系最大の惑星
木星
に与えられた名前なんですね!
そう、だから
ゼウス=ユピテル=ジュピター(木星)
っていう流れが、頭の中でつながると、
「あ!そういうことなの?」
と納得してもらえると思います!
というわけで・・・
木星には、かの有名なガリレオ・ガリレイが発見し、
「ガリレオ衛星」
と呼ばれている衛星群がありますが、
それらにはみんな、
ゼウスが愛した女性・美少年の名前
が付いているんですよ〜
これらの衛星、左から
イオ、エウロパ、ガニメデ、カリスト
と呼ばれています。
イオは、ゼウスが愛した美女ですが、奥さんのヘラに見つからないように、牛の姿に変身させられました。
エウロパ、あるいは エウロぺ は、テュロスの王女で、彼女に恋したゼウスは牛の姿で彼女に近付き、油断して背に乗ったところでクレタ島まで連れ去ったと言われています。
この二人のどちらかが、「おうし座」となっているということです。
*「おうし座」の神話について詳しくは、こちらの記事を合わせてどうぞ!
ガニメデ は美少年ガニュメデスのこと。その美しさを愛したゼウスは、ワシの姿でさらっていったと言います。
そして、
カリスト は、女神アルテミスのお供のニンフでした。ゼウスが愛して子供アルカスができましたが、本当は女神アルテミスに仕える者は、男性関係を持っちゃいけなかったのです。そのため、アルテミスはこれを怒って、カリストを熊の姿に変えてしまったということです。ゼウスはこれを憐れんで、母カリストを「おおぐま座」、子供を「こぐま座」にしました。
そんなふうに、愛した男女に囲まれて、
夜空のゼウス神=木星は、今も幸せに違いないでしょうね!
ゼウスの偉大さを知ってね!
というわけで本日は、
本日はギリシャ神話の天空の神
最高神ゼウス
をご紹介しました!
どうしても、浮気の神話ばかりが有名ですが、
ギリシャ神話の最高の神として世界を支配し、
しかも現代の私たちにも、オリンピックや木星を通じて実は深い関わりのある神様です!
これを読んだ皆様は、ぜひぜひ、ゼウスを見直してあげてくださいね!