世界が注目しているギリシャ出身の映画監督
ヨルゴス・ランティモス監督
エマ・ストーンを主演に迎えた最新作
『哀れなるものたち』
劇場で鑑賞してきましたが、
最初から最後まで圧巻!
圧巻の映像美、圧巻の音楽、衣装、セット、全てが唯一無二の独創的世界!
映画というのは「総合芸術」なのだと改めて思い知らされる、
ランティモス美学が詰め込まれた凄まじい作品でした!
『哀れなるものたち』ヨルゴス・ランティモス監督、圧巻の独創的芸術世界!
ギリシャから登場した世界が注目する映画監督
ヨルゴス・ランティモス監督
作品を撮るたびに数々の映画賞の山を築いてきて、その才能は映画界の注目の的です。
*ヨルゴス・ランティモス監督について詳しくは、こちらの記事もあわせてどうぞ!
そんなランティモス監督の最新作は、
現在拠点にしているロンドンが舞台の再びの英語作品で、
エマ・ストーンを主演に迎えた
『哀れなるものたち』
とある事情で胎児の脳を移植された成人女性が、新しく世界を発見するというストーリーで、
さっそく劇場で鑑賞してきましたが、
最初から最後まで圧巻!
さらに磨きをかけられた美しい映像世界と、音楽、美術、衣装、全てが一級品のアート作品のような、
とにかく他ではこんな世界は見たことがないという、唯一無二の作家性を発揮したものすごい作品でした!
『哀れなるものたち』のキャスト
それではこの映画
『哀れなるものたち』
そのキャストをご紹介していきます。
まず胎児の脳を移植された主人公の女性・ベラを演じるのは、
ランティモス監督作品では『女王陛下のお気に入り』に続いての登板となる
エマ・ストーン
体は成人女性なのに、脳は幼児、というアンバランスな主人公を演じて、
すでにその演技は高く評価されていて、アカデミー賞でも主演女優賞にノミネート!
自身2度目のオスカーを獲得することができるのか、注目されています!
そして、ベラに脳を移植したゴドウィン・バクスター博士を演じるのは、
すでに多くの作品でおなじみの名優
ウィレム・デフォー
かのフランケンシュタインを思わせるような特殊メイクで熱演です!
そして、ゴドウィン・バクスター博士の助手で、ベラに思いを寄せるマックス・マッキャンドルスには
ラミー・ユセフ
そしてベラをロンドンのバクスター博士のもとから世界へと連れ出す怪しい弁護士ダンカン・ウェダバーン役には
MCUなどでおなじみの人気俳優
マーク・ラファロ
この役でマーク・ラファロもアカデミー賞助演男優賞にノミネートされています。
こんなふうに、ハリウッドの豪華なキャストが集結して、ベラの発見する奇妙な世界を作り出していっています!
『哀れなるものたち』のスタッフ
そしてこの映画
『哀れなるものたち』
スタッフも素晴らしくて、ランティモス監督のもと、
脚色を担当した トニー・マクナマラ
撮影 ロビー・ライアン
編集 ヨルゴス・モブロプサリディス
衣裳デザイン ホリー・ワディントン
メイクアップ&ヘアスタイリング ナディア・ステーシー、マーク・クーリエ、ジョシュ・ウェストン
作曲 イェルスキン・フェンドリックス
美術 ショーナ・ヒース/ ジェームズ・プライス
こういったスタッフが全員、アカデミー賞ノミネート!
映画を見ても、本当に全員が全員、どれも印象に残るような素晴らしい仕事をしていて、
これだけの一流アーティストたちが集まって、これだけの作品を作り上げたんだ、と深く納得。
ランティモス監督自身も、素晴らしいアーティストたちと仕事ができて幸せだった、とコメントしていて、
このアーティスト集団を率いて見事な一つの芸術作品を作り上げた、
ランティモス監督の手腕にも改めて衝撃を受けました!
『哀れなるものたち』のあらすじ
ではこの映画
『哀れなるものたち』
そのあらすじを簡単にご紹介します。
この映画の原作は、アラスター・グレイの同名の小説。
ゴドウィン・バクスター博士は自ら身投げした若い女性に、胎児の脳を移植して甦らせることに成功。
大人の体に宿った子供の脳の成長の記録を助手のマックス・マッキャンドルスに任せ、
父親として保護しながら、その成長を見守る。
しかし、放蕩者の弁護士ダンカン・ウェダバーンがベラの前に現れ、世界を見せてやると誘惑。
ベラは好奇心を抑えることができず、ダンカンと一緒にバクスター博士のもとから旅立っていくのだが・・・
というストーリー。
ずっとバクスター博士のもとで外の世界から隔絶されていたベラが、
世界を発見していく姿がこの映画のメインになっています。
『哀れなるものたち』の見どころ
さて、そんな映画
『哀れなるものたち』
その見どころとなるところを、ここからご紹介していきます!
ネタバレは極力避けるつもりですが、まだ映画を見ていなくて、できるだけ映画の情報を入れないでおきたい方は、以下を読む前に映画本編をぜひご覧くださいね!
画面の隅々まで精密に作られた美術作品
この映画の1番の見どころは、なんといっても
圧巻の映像世界!!
画面の隅から隅まで、見どころがぎっしりの全編美術作品のような映画なのです!
ショーナ・ヒースと ジェームズ・プライスが担当したセットは、
実物大をブダペストの広大な敷地に実際に建てて撮影したもの。
ベラの部屋、食堂、解剖室など、どこも丁寧に作り込まれていて、セットだけでも一件の価値あり!
ロンドン、リスボン、アレキサンドリア、パリの街なみまで、独特の美的センスで構築されていて、
ベラと一緒にこの街の中を歩き回ってみたくなります!
室内の装飾から小物類まで精密に作り込まれた美術は、これがアカデミー賞取れないなら何が取るの?と正直疑問なくらいです。
そしてさらに目を奪うのが、
ホリー・ワディントンさんの担当する、数々の衣装!
ヴィクトリアンの袖を強調したデザインではありますが、素材などは当時になかったものを積極的に使い、
独特の造形美を誇っています!
こんな衣装、どこでも見たことない!
と、思わず前のめりで見たい素晴らしい衣装ばかり!
これも本当にアカデミー賞取れないならなんのための賞なのか分からないレベルです。
そしてイェルスキン・フェンドリックスさんの、ちょっと変わった奇妙な音楽!
不協和音と中間音の連続で、これも今まで聞いたことのないような音楽の連続で、
それがこの映画の世界と絶妙にマッチしています!
そして一番強烈に印象に残ったのは、
ロビー・ライアンさんの撮影した映像!
魚眼レンズを多用したり、場面場面で細かく切り替えられる映像は多くはゆがんでいたり、変わったアングルだったりと、とにかく手がこんでいて、
これだけのバリエーションを持った映像を全部撮影していくのは並大抵のことではないと思うんですよね。
しかもそんな数々の映像を絶妙のタイミングで編集した、監督の長年の相棒であるヨルゴス・モブロプサリディスさんの手腕も光っていますし、
とにかく圧巻の映像世界としか言いようがないです!
これを見た後だと、普通の映画の映像だと物足りなく感じてしまうかも・・・
映画というのは、映像と音楽と美術とが全て合わさった総合芸術なんだな、と改めて実感します!
ストーリーに込められたいくつものメタファー
そしてこの映画
『哀れなるものたち』
この作品を見る上で、観客である私たちにとって一番見どころでもあるのは、
ランティモス監督の仕込んだメタファーの読み解き
だと思います!
これまでもランティモス監督作品でも、寓意的に仕立て上げられたストーリーで、
いくつもの読み解きができるようにしてあるのが特徴でした。
『籠の中の乙女』
この中でも、寓話的な隔絶された親子の姿を通じて、痛烈な社会風刺を込めていたのは明らかで、
見る人によって受け取り方も違うように重層的にメタファーが込められていた作品でした。
今回の新作は原作小説があるものなので、どの程度が映画オリジナルなのかは不明ですが、
ベラの発見していく世界はどこもファンタジー的に作り込まれていて、映像もゆがめられて、
写実というよりは「ここではないどこか」の物語であるということが見てすぐに分かるようになっています。
ですので、表層的には、一人の女性が社会に触れて、成長と発展をしていく物語ですが、
社会とは、人間とは、社会の通念とは、といった、大きな意味もメタファーとして重層的に込められているように感じました。
特に、閉じ込められていたベラが自由を求めていくところは、人間の自立性や、独立性など、
往々にしてそれが侵害されている現代社会への風刺も込められているように思います。
そして、食欲や性欲を止めようともしないベラというキャラクターにカリカチュアライズされていた、
欲深い人間という生き物への風刺。
さらには、ベラが自分の考えを発展させていく途中で、エマーソンやゲーテの思想にも触れているところから、
人間の思索の歴史や、人類の発展というところにも、意味がが込められているように感じて、
ランティモス監督の人間への洞察の深さに触れるようでもありました。
そんなふうに、映画の中に出てくるいろんな人物や小物やちょっとした会話から、
いろんな意味を読み解いていくのはこの映画を見る上で1番の楽しみになることは間違いなさそうです!
ぜひ、ランティモス監督の投げかけるメタファーの意味を、自分なりの読み解きをしながら楽しんで見てくださいね!
『哀れなるものたち』の残念なところ
そんな、圧巻のランティモス監督の新作
『哀れなるものたち』
冒頭からエンディングまでどれも素晴らしくて、
ほとんど不満も何もなくて大絶賛状態なのですが、
あえて言えば・・・というポイントもあげておきますね。
性描写は多過ぎるかも?
この映画のなかでは、大人の体を持った幼児ベラが、
自分の性欲を発見していく過程というのもかなり生々しく描写されています。
しかも、頭が幼児なだけに、快楽を発見すると、止まるところのない貪欲さなんですね。
子供はほっとくと好きなものを好きなだけ食べちゃいますが、
このベラも快楽を追い求め続けて抑制するということがありません。
そのため、
映画の中には相当量の性描写が!
エマ・ストーンもよく嫌がらずにやったなと思うのですが、
そういう描写が続くのを嫌がる方もいるかと思います。
ここまでの時間を割くほどに必要な描写なのか、という意見の方もいるでしょう。
それでも、ベラの発達の中で、食欲や性欲をむさぼる段階だったと思えば納得できるし、
外ではうまく取り繕っていても、実際は食欲や性欲をむさぼっている人たちへの風刺とも考えられるし、
人間が目をそむけてしまうような部分に光を当てるような作品を多く作っているランティモス監督からすれば、当然の描写だったような気もしますね。
それによく考えてみると、ヨーロッパ系の映画だと主人公がほとんど裸だったりすることもよくありますよね。
フランス映画とかは、ハリウッド映画よりも性描写が多めな印象がありますが。
とはいえ、この部分は賛否両論だと思うので、見る人たちがそれぞれで判断していくしかないのかな、と思います。
くれぐれも、デートムービーのつもりで気軽に見にいくことのないように!
もっと見たかったウィレム・デフォー
そして、これは不満というよりも願望なのですが、
ゴドウィン・バクスター博士を演じた
多くの作品でおなじみの名優
ウィレム・デフォー
出番がもっとあったらよかったな!
特殊メイクのフランケンシュタインのような姿も迫力だったし、
何よりも、「実験だ」と言いながら、ベラに本当の父親のような愛情を注いでいる博士の
複雑なキャラクターをよく表現していて、博士の登場するシーンは心に残るものになりました。
バクスター博士が主人公でも映画一本撮れるよね?
と思わずにはいられない、印象深いキャラクターだったので、
欲を言えばもっとこのウィレム・デフォーの演技を見たかったな、というのが正直な気持ちです。
アカデミー助演男優賞にはノミネートされませんでしたが、
私の中ではアカデミー賞ものでした!
『哀れなるものたち』のアカデミー賞の行方は?
そして、この映画
『哀れなるものたち』
一目見ただけでそのクオリティーに圧倒される一作だったのですが、
今年度2024年に開催される
第96回アカデミー賞で11部門ノミネート!
映画界でのこの映画の評判が、どれだけ高いものかがよくわかりますね!
*ノミネートされた各賞について詳しくは、こちらの記事もあわせてどうぞ!
では、実際のところどれだけ受賞の可能性があるのか・・・?
気になるところですが、
ランティモス監督の前作『女王陛下のお気に入り』は、アカデミー賞で10部門ノミネートという快挙を成し遂げましたが、
最終的には1部門の受賞で終わっています。
ランティモス監督の作風からして、ハリウッドの主流とは異なるところにいますので、
ノミネートされただけでもよくやったとは思うところですよね。
今作でも撮影や音楽などかなり実験的な試みもしていますので、
ヨーロッパの映画祭向けの作風なんじゃないかと思います。
ゴールデングローブ賞では2冠を達成することができましたが、
ドラマ部門とコメディ部門で分かれていたので有利だった気もします。
ですので、アカデミー賞では順当に行けば『オッペンハイマー』が強いのだろうな、と思っていますが、
しかし前作よりも映画界でのランティモス監督の評価は上がってきていますので、
ひょっとしたらひょっとするかも、という期待も高まっています!
『哀れなるものたち』ぜひ一度は見てほしい圧巻の映画!
ということで、
世界が注目しているギリシャ出身の映画監督
ヨルゴス・ランティモス監督
エマ・ストーンを主演に迎えた最新作
『哀れなるものたち』
劇場で鑑賞してきましたが、最初から最後まで圧巻の一言!
圧巻の映像美、圧巻の音楽、衣装、セット、全てが唯一無二の独創的世界!
映画というのは「総合芸術」なのだと改めて思い知らされる、
ランティモス美学が詰め込まれた凄まじい作品でした!
これは確実に、ランティモス作品の中でも一つの頂点となる完成度を見せていますので、
できるだけ多くの方にぜひ一度は見ていただければと思います!