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ギリシャの映画

アカデミー賞ノミネート『4.1 Miles』はギリシャの難民問題に切り込むドキュメンタリー!絶対見るべき!

2017年の米アカデミー賞には、ギリシャ勢が一挙に3名もノミネートされて注目を集めました。

その中でも、短編ドキュメンタリー賞にノミネートされた

ダフニ・マツィアラキ監督の

『4.1 Miles』

という映画をご存知ですか?

ギリシャを突如襲った難民問題を、アテネ出身の気鋭の新進ドキュメンタリー作家が撮り上げた映画、

多くの方達に絶対一度は見て欲しい作品です!

『4.1 Miles』というタイトルの意味とは・・・

第89回アカデミー賞で、

短編ドキュメンタリー賞にノミネートされたのが、

ギリシャ人監督のダフニ・マツィアラキさんが撮った

『4.1 Miles』

このタイトルって何を意味していると思いますか?

この「4.1マイル」とは、

私たちが使い慣れているメートル法に直すと、6.5キロです。

これは、トルコ沿岸から、対岸のギリシャのレスボス島までの距離。

内戦と空爆から逃れてきたシリア難民たちは、新天地を求めて、この6.5キロの海を渡ってきます。

しかし、このたった6.5キロの船旅は、彼らにとってはまさに命がけ。

小さなゴムボートにすし詰めにされて、女性・子ども・お年寄りまでが、沈没と漂流の恐怖と戦いながら、ギリシャの地を目指すのです。

当然、多くのボートが沈没し、多くの命が犠牲になりました。

海に投げ出されたお年寄りや小さな赤ん坊が生き延びるのは、至難の技です。

それでも、激しい空爆と戦闘から逃れてきた人々は、わずかの希望を胸に、この6.5キロを超えるために、続々と海に乗り出して行ったのです。

ギリシャ沿岸警備隊の絶望的な戦い・・・

私が内容を詳しく語るよりも、まずは一度見てもらうのが一番いいと思いますので、

現在インターネットで公開中の実際の作品を是非ご覧ください。

ほんの20分ほどの短い作品です。

冒頭から、いきなり沿岸警備隊の救助の緊迫したシーンです。

見ての通り、ボートが大揺れしていますので、海は荒れていたんですね。

それなのに、難民たちを乗せた小さなゴムボートはトルコ対岸を出発してきて、途中で難破してしまう・・・

ゴムボートの上には、女性、子ども、赤ん坊たちまでがぎっしり・・・

助けられた人々は、恐怖と安堵で泣き叫び、

救助に当たる沿岸警備隊は一刻でも早く助けるため、怒鳴りあって指示を出しています。

もたもたしてる間に完全にボートが沈没したら、さらに犠牲者が増えるため、一刻の猶予も許されません。

これは、まさに戦場です・・・

シリア・イラクも戦場ですが、それと同時にギリシャの沿岸も戦場となっていたのです。

のどかな島は一変した

この『4.1 Miles』の舞台は、ギリシャのレスボス島。

情熱的な恋愛詩で有名な、古代の詩人サッポーで有名な島です。

面積は1630km2

人口は9万人ほどの、のどかな島。

シリア内戦で、こののどかな島は一変しました。

たった十人しか沿岸警備隊のいない島に、多い時には五千人もの難民たちが、次々とゴムボートでやってきます。

沿岸警備隊も多くの人々を救うために、必死の救助を行いますが、なんといっても人手が足りません。

現場に到着すると、すでにボートが沈没し、人々は海に投げ出されていたりする・・・

水を飲み、意識不明となる子どもたち・・・

必死の人工呼吸・・・心臓マッサージ・・・

どこまでやっても、全員を救うことは不可能です。

あまりの惨状に、屈強な沿岸警備員も思わず涙するシーンもあります。

日本人の知らない、レスボス島の戦い

こんなふうに、続々とやってくる難民たちに対して、

ギリシャのレスボス島の沿岸警備隊は絶望的な戦いを続けていたわけですが、

こういった惨状は、びっくりするくらい日本では報道されないんですよね〜

日本人が関わっていないから、ニュースになりにくいというのは分かるんですが・・・

いや、日本だけじゃなくて、多くの世界の国でも、あまり報道されていないのかもしれない。

今イラクやシリアで市民たちを脅かしているのは、ISのような非道な組織であるのはもちろんですが、

アメリカや有志連合による空爆です。

市民たちの住んでいた町は粉々。

このまま街にとどまって、空爆で一緒に粉々になるか、ISに殺されるか、それとも逃げるか?

どちらにしても死ぬ可能性があるなら、やっぱり希望がある方を選択しますよね。

そうして、新天地ヨーロッパへ希望を託した難民たちは、わずか6キロほどでも、とても危険な航海に乗り出して行ったのです。

そんなふうに戦争のしわ寄せは、いつも弱者に来る、と思うと、やりきれない気持ちでいっぱいになります。

*ギリシャ沿岸に押し寄せる難民のニュース映像

Refugees Continue Flocking to Greek Island amid General Election

密航業者の非道なやり口

この映画の中でも出てきますが、

こんなふうに頼りないゴムボートにすし詰めにされて、難民たちは海を渡ってきます。

これはトルコ沿岸で暗躍する密航業者が、難民たちからお金をとって、ボートに乗せるのです。

密航業者にとっては、一人でも多くの難民からお金を取る方が儲かりますから、ボートはすし詰めの方がいい。

そして、海が荒れている日でもお構いなく出航させるのです。

ボートに乗りたい人たちは次から次へとやってくるから、どんどん送り出した方が効率がいいから。

そうしてすし詰めのゴムボートに押し込められた難民たちは、荒れた海でボートが沈んで遭難してしまう。

これを次から次へと助けているのが、ギリシャの沿岸警備隊たちなのですね。

そんなひどい状況でも、ほとんど改善されず、多くの犠牲者が出ました。

現在はEUとトルコで難民の強制送還の取り決めをしたので、密航は減ったと言われていますが、実は難民が地中海で死亡する例はまだ後を絶ちません。

昨年の地中海の密航者は36万人 前年比で約7割減

特にトルコからエーゲ海を渡り、ギリシャの島などに到着した人が約8割減り、約18万2500人となった。一方、主にイタリアを目指し地中海中部の密航を図った人は約2割増え、過去最高の約18万1千人に達するなど、依然、深刻な状況が続いている。

(http://www.sankei.com/world/news/170107/wor1701070003-n1.htmlより引用)

現在はギリシャ沿岸を避け、地中海中部を狙って密航業者が暗躍しているんですね。

難民たちの安全が確保される日は来るのでしょうか?

そして減ったといえども、まだまだ、ギリシャにやってくる難民は約18万2500人!!!

ギリシャの沿岸警備隊の戦いは、まだまだ続いています。

ダフニ・マツィアラキ監督は期待の新星!

この映画を撮ったのは、

アテネ出身のダフニ・マツィアラキ監督

もともとはジャーナリストとして、アフリカやヨーロッパの人権問題に取り組み、

カリフォルニア大学バークレー校ジャーナリズム大学院で勉強。

その在学中に撮ったのが、この映画

『4.1 Miles』

この作品は見事、

2016年学生アカデミー賞を受賞

2016年国際ドキュメンタリー協会賞受賞

そして、2017年米アカデミー賞ノミネート

と、高い評価を受けています。


IMDb.のウェブサイトよりスクリーンショット

私も映画を見て、その緊迫感溢れる画面に釘付けになりました。

20分くらいの作品ですが、本当にあっという間に感じましたよ。

これも監督の確かな手腕の証拠ですね。

ダフニ・マツィアラキ監督は現在、サンフランシスコを拠点に活動中だそうです。

今後も活躍が期待できそうですね!

この映画『4.1 Miles』も、見事米アカデミー賞受賞なるか?!大注目です。

一人でも多くの人に見て欲しい・・・

というわけで、この映画

『4.1 Miles』

は、報道機関がほとんど取り上げてこなかったような、

ギリシャ・レスボス島の沿岸警備隊たちの、奮闘を記したドキュメンタリーです。

押し寄せる難民と、たった十人の警備隊たちの、絶望的な戦い。

日本ではあまり難民問題自体も取り上げられてこなかったので、ぜひこのドキュメンタリーを見て、

シリア・イラク危機とともに、ギリシャで何が起こっていたのか、知って欲しいと思います。

ドキュメンタリー映画『4.1 Miles』は、現在ウェブで公開中です。

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