マーベル・シリーズに、ついに登場したアジアのヒーロー
『シャン・チー/テン・リングスの伝説』
その内容はVFXを駆使したカンフー・アクションがメインですが、
ストーリーのベースには、ギリシャ神話などにも通じる英雄神話、
そして中国の神話伝承も使われていて、
実は神話ファンタジー大作にもなっています!
こういうカンフー・ファイトと神話ファンタジーが掛け合わされて、さらに面白くなっているので、
この映画に出てくるギリシャ神話的要素、そして中国の神話伝承についても、簡単にちょっとまとめてみました!
よかったらぜひ読んでいってくださいね!
『シャン・チー/テン・リングスの伝説』と英雄神話!
ということで、
マーベル初のアジア人ヒーローが誕生した映画
『シャン・チー/テン・リングスの伝説』
VFXを駆使した、進化したカンフー・アクションが満載で、大人から子供まで楽しめるエンターテイメント大作に仕上がっていたのですが、
この映画のストーリーをよく考えてみると、
やっぱりこれまでのマーベルなどのヒーローものの映画と共通するような
ギリシャ神話とも共通点のある神話的世界
に基づいて描かれていることに気が付きました!
以下、どんなところが共通しているのか、簡単にご紹介していきますね!
父と息子のギリシャ神話
まず、このマーベル初のアジアのヒーロー
『シャン・チー/テン・リングスの伝説』
この物語の核になるのは、
父親と息子との対決
という構図です!
主人公のシャン・チーは、犯罪組織「テン・リングス」を率いる父親に反発して逃走。
しかし再び父親が目の前に姿を表し、
以前は逃げ出すしかなかった強大な父親と対決することに・・・!
というのがメインのストーリー。
このように父親と息子の葛藤を描いているのは、
今でも高い人気を誇る「スター・ウォーズ」シリーズのオリジナル3部作で、
主人公のルーク・スカイウォーカーが、
父親であるダース・ベイダーと対決することになるストーリーと似ていますね。
『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』
このように父親と息子が対決し、息子は自分より強大な存在だった父親を倒すことで本物の大人に成長していく、
というストーリーは、実はギリシャ神話でも見られます!
ギリシャ神話で有名な
この王様は、神託で「父を殺し、母と結婚する」と告げられて、本当の両親と思っていたコリントス王夫妻を守るために、コリントスを離れる決心をします。
しかし、その旅の途中で出会ったテバイのライオス王と口論になり、カッとなって殺めてしまうことになるのですが、
実はこのライオス王こそ、自分を赤ん坊の頃に捨てた実の父親だったのです!
しかも、その後オイディプスはテバイ市で王として迎えられ、ライオス王の未亡人である王妃と結婚することになるのですが、
この王妃こそ自分の実の母親!
つまり「父を殺し、母と結婚する」という神託がいつの間にか実現していたのです。
この事実を知った時、絶望したオイディプス王は自分の両目を潰して、自ら進んでテバイから追放されて出ていくことになってしまいました・・・
という絶望的なストーリー。
このお話にヒントを得て、心理学者のフロイトは、
男子の成長過程には「父親を倒して、母親と結婚する」という心理が見られる、という
「エディプス(=オイディプス)・コンプレックス」
の有名な理論を提唱したわけです。
で、このお話と映画
『シャン・チー/テン・リングスの伝説』
のストーリーを比べてみると・・・
もちろん全く同じではありませんが、
お父さんが巨大犯罪組織のボス(王)で、その父親に立ち向かい、乗り越えることで、シャン・チーは一人前のヒーローになるわけですから、基本的なところは同じだと言えますね!
しかも、お母さんと結婚したわけじゃないですが、心理的に明らかにお母さんサイドに立っていて、お母さんと一体化したような形で真の自分の力に目覚めていくので、やっぱり「父を倒し、母と結婚する」のパターンを踏襲しているようにも思えます。
まあ、「スター・ウォーズ」でも「シャン・チー」でも、「母と結婚する」の方はうまく省かれているようにも思うのですが、
基本的に「父親と対決して、倒す、乗り越える」というパターンは同じ!
そんなことを考えながら見ると、この映画のストーリーも、もっと面白く感じるかもしれません?!
*この「スター・ウォーズ」の父と息子の葛藤について詳しくは、こちらの記事もあわせてどうぞ!
ヒーローが誕生する・・・英雄神話!
さて、そしてこの映画
『シャン・チー/テン・リングスの伝説』
そのストーリーを全体的に見ると、これも
ギリシャ神話にも通じる英雄神話
がベースになっているということが分かってきます!
この「英雄神話」というのは、
有名なアメリカの神話学者ジョーゼフ・キャンベルが
『千の顔を持つ英雄』
という本の中で分析したもので、
ギリシャ神話など世界各国の神話には、英雄についての共通した物語のパターンが見られるということです。
これに基づいて、映画『シャン・チー/テン・リングスの伝説』を考えてみると、
やっぱり同じような物語のパターンが見られるのですよね。
ジョーゼフ・キャンベルによると、その同じようなパターンというのは、次の3つの要素になるそうです。
1.出発 (召命)
主人公は、それまでの安全な環境を追い立てられるように離れることになります。
2.試練(イニシエーション)
そして主人公は、それまでの安全な環境を離れて、外の世界で試練を経て、一人前にならなくてはいけません。
3.帰還
そして、一人前になった主人公は、一度は後にした故郷に戻り、英雄として迎え入れられて、「英雄神話」の完成です。
これを映画『シャン・チー/テン・リングスの伝説』に当てはめてみると、こうなりますね!
1.出発 (召命)
主人公シャン・チーは、母親が死んだあと殺伐とした家庭環境に耐えかねて家を離れます。
2.試練(イニシエーション)
そして主人公シャン・チーは、アメリカに渡り、言葉もうまく使えない新しい環境で一人で奮闘して、一人前の男性に成長します。しかし、父親の放った刺客と戦ったり、捕まってしまったりと試練も続きますが、乗り越えて行きます。
3.帰還
そして、一人前になった主人公は、母の故郷に戻り、故郷を守る英雄として勇敢に戦って成功し、「英雄神話」の完成です。
ということで、まあ大体、ストーリーのメインのところは同じなんじゃないでしょうか。
やっぱり、無力な少年が一人前のヒーローに成長していく過程というのは、
ギリシャ神話の時代から、だいたい同じようなものと人類が共通認識として持っていたことなのかもしれませんね!
だから私達は、いまでもこういう「ヒーロー誕生」の英雄神話を見ると、知らず知らずに胸が熱くなってしまうのかもしれません?!
『シャン・チー/テン・リングスの伝説』と中国の神話伝承
そしてこの映画
『シャン・チー/テン・リングスの伝説』
は、アジア人初のヒーローの物語でもありますから、
日本でもおなじみの中国の神話伝承
がふんだんに使われているファンタジーでもあります。
この映画の主人公シャン・チーのお母さんは、
通常の人間ではたどり着くことができない、理想郷のような村「ター・ロー」の出身です。
これはよく聞く
「桃源郷」
のようなもののようです。
つまりお母さんは、仙人の種族みたいな感じですね。
その「ター・ロー」では人間と、神々に仕えるような、不思議な動物たちが一緒に住んでいます。
日本でもおなじみの幻想動物・竜も登場してきます!
この龍の描き方ですが、西洋のいわゆるドラゴンだと、通常大きな羽が付いて飛ぶように描かれていますが、
日本の神社などでよく見る東洋の竜には無いんですよね。
で、この「ター・ロー」の竜は、ちゃんと東洋式でした!!
しかし、西洋の竜の元祖、とも言える
ギリシャ神話に登場する
「ドラコーン」(δράκων)
は、もともとは「大蛇」という意味で、今の西洋の、言わゆる『ゲーム・オブ・スローンズ』に出てくるようなドラゴンとはちょっと違ってたんですよね。
そう考えると、ギリシャ神話の時代では、東洋の羽のない竜に近かったのかもしれませんね!
そんな、幻想動物の東洋と西洋の違いなんかも考えながら見ると、もっと楽しいかも!
*「ハリー・ポッター」シリーズにも、いろんなドラゴンが登場しています!
『シャン・チー/テン・リングスの伝説』は神話的ファンタジー大作!
ということで、
マーベル・シリーズに、ついに登場したアジアのヒーロー
『シャン・チー/テン・リングスの伝説』
その内容はVFXを駆使したカンフー・アクションがメインではありますが、
ストーリーのベースには、ギリシャ神話などにも通じる英雄神話、
そして中国の神話伝承も使われていて、
実は神話ファンタジー大作にもなっています!
というお話でした!
マーベル映画では、いつもこんなふうにギリシャ神話などの要素がうまく使われているのですが、
この映画に出てくるギリシャ神話的要素、そして中国の神話伝承についても、ぜひ注目してあげてくださいね!
色々情報を仕入れておくと、後で見返した時に「あれ? これってこういうこと?」って気がつくことも増えてくるかと思いますので、楽しみ方が広がってくると思いますよ!
ぜひいろんな元ネタも探しながら、楽しんで見てくださいね!
『シャン・チー/テン・リングスの伝説』は現在DVD&ブルーレイ、そして各種動画配信サービスで見ることができます!