ドゥニ・ヴィルヌーブ監督の最新作
『DUNE デューン 砂の惑星』
砂漠の美しい映像で繰り広げられる近未来が舞台のSF映画ですが、
実際に映画を見たところ・・・
ギリシャ神話の世界につながっている!
と思ったところがチラホラ・・・
そんなわけで、このSF映画とギリシャ神話について、まとめてみました!
最先端SFと古代ギリシャ神話の世界の意外な共通点について、ぜひ読んでいってくださいね!
『DUNE デューン 砂の惑星』はギリシャ神話と意外につながっている?!
というわけで、
このドゥニ・ヴィルヌーブ監督の最新SF映画
『DUNE デューン 砂の惑星』
クオリティの高い傑作SFを撮ってきた監督の最新作ということで、楽しみにして映画館で見てきました!
そして実際に映画を見たところ、「元ネタがギリシャ神話っぽいな」と思うところがチラホラ・・・
多分・・・というか、確実に、
この映画の原作小説
『デューン 砂の惑星』
の作者フランク・ハーバートさんはギリシャ神話が好きなんじゃないかな、と思っています。
そんなわけで、この映画を見て気づいたギリシャ神話とのつながりについて、次の3つのポイントでまとめてみました!
ギリシャ神話のアトレイデスが名字?!
まず、一番はっきりとギリシャ神話とのつながりがわかるのは、
主人公の名前がポール・アトレイデス
ってことですね!
そう、この名字「アトレイデス」は
ギリシャ神話に登場する「アトレイデス」に由来しています!
ギリシャ神話の中の「アトレイデス」とは・・・
「アトレウスの子」という意味で、
アトレウスの息子たちであるアガメムノンとメネラオスのことを指します。
このアガメムノンはアルゴス王、メネラオスはスパルタ王という王家の血筋ですが、
彼らの父親のアトレウスは、兄弟のテュエステスと王座を争い、
なんとテュエステスの子供を殺して料理した上、テュエステスに食べさせてしまったという、
血みどろの醜い争いをしたことで有名です。
そしてアガメムノン王は、トロイア戦争の総大将として出陣し、10年の戦争を終えて国に帰ってきたところ、
テュエステスの子であるアイギストスと共謀した妻のクリュタイムネストラに殺されてしまいます。
この時、アイギストスは父テュエステスの恨みをはらすため、アトレウスの子であるアガメムノンを殺したということです。
そしてメネラオスの方は、妻の絶世の美女ヘレネを、トロイアの王子パリスに連れ去られてしまいます。
この出来事が、多数の犠牲を生んだ10年に及ぶ大戦争・トロイア戦争の原因であると言われています。
そんな数々の殺戮にいろどられた歴史を持つ、
まさに呪われたアトレウス家!
そんなアトレウス家の名前を持つのが、
この映画『DUNE デューン 砂の惑星』の主人公なのです!!
なんと、原作小説では、
主人公のポール・アトレイデスはこのギリシャ神話のアトレウス家の末裔
という設定なんだそうです!!
SF小説の主人公がギリシャ神話の王家の末裔って、意外な気もしますが面白い設定ですね!
ところで、この主人公の場合「アトレイデス」という家名になっていますが、
ギリシャ神話の時代では、家名、つまり名字はなかったので、単にお父さんの名前をつけて「〜の子」と呼ばれていただけなんですけどね。
だから、アガメムノン王は「アトレウスの子アガメムノン」と呼ばれるだけで、
「アガメムノン・アトレイデス」っていう名前だったわけじゃないですよ、念の為。
それにしてもこの映画『DUNE デューン 砂の惑星』を見た時、
この最新VFXを駆使したSF映画のなかで、
「アトレイデス」
って兵士たちが連呼する姿を見たときは、ちょっと感動しましたね!
まるで『イリアス』の出陣式みたいな感じ?!
未来によみがえる古代のギリシャ神話の世界、って、そのギャップもたまらないです!
映画を見るときには、この未来と古代のマッチングも、楽しんでいただけたら嬉しいです!
*アガメムノン王とアトレウス家の運命については、こちらの本を読むとよく分かりますよ!
お母さんのレディ・ジェシカの不思議な能力
そして、この映画のギリシャ神話につながるようなポイントの一つとして、
ポールのお母さんである
レディ・ジェシカの操る不思議な能力!
というのも挙げられると思います。
実はこのお母さんのレディ・ジェシカは
ベネ・ゲセリット
と呼ばれる女性だけの秘密の教団に入っていて、
「声」という人を操る術などの能力を鍛えているのです!
この映画の本編を見る前には、自分の予想としては、
主人公ポールのお父さんが、ギリシャ神話で言うならアガメムノン王かな、
ということは、お母さんのレディ・ジェシカがクリュタイメストラなのかな?
と思っていたのですが、
映画を見たところ実はレディ・ジェシカは、ポールのお父さんであるレト公爵の正妻じゃない、
要するに、側室? 妾? のような存在ということが分かりました。
ということは、
レディ・ジェシカはカッサンドラの方に近いのかも?
ギリシャ神話のカッサンドラは、トロイアの王女でしたが、
アガメムノン王率いるギリシャ軍によってトロイアは攻め落とされ、
アガメムノン王に戦利品として妾にされてしまったのですよね。
このカッサンドラは、実はアポロン神に仕える巫女で、予言の能力がありました。
しかし、神の妻となるところを直前で拒否したので、その罰として誰も予言を信じてもらえないようにされてしまいました。
そのため、トロイアが攻め落とされる前に、トロイアの人たちに「トロイアが攻め落とされる」と予言をしても、誰も信じてはくれなかったのです。
しかし結局は、カッサンドラの予言のとおり、トロイアはギリシャ軍に攻め落とされてしまいました。
つまり、カッサンドラの不思議な予言の能力は、本物だったということです。
そんなわけで、映画の中のレディ・ジェシカが不思議な能力を持っているのは、なんとなくカッサンドラに近い気がしますね。
しかし、映画の中では、予言の能力を持っているのは、どうやら主人公のポールのようです。
ポールは、夢の中でこれから起こることや、出会う人が分かったりするのですね。
でも、ポールは男の子なんだけど・・・
と思ったら!
ポールは男の子ですが、女性だけの教団ベネ・ゲセリットの「声」のトレーニングを密かにお母さんから受けています!
映画の中では触れられていなかったのですが、原作によるとどうやら、レディ・ジェシカは本当は女の子を産むはずだったのを、レト公爵の望みを叶えて男の子であるポールを生んだ、ってことらしいですね!
そんなわけで、主人公ポールも、ちょっとカッサンドラみたいな能力を持っているみたいです。
まあ、ギリシャ神話そのまんまのお話ではないですが、ちょっとずつ、そのニュアンスみたいなものが秘められているみたいで、読み解いていくのも楽しいです!
ギリシャ神話では、アガメムノン王が妻のクリュタイメストラに殺された時、
一緒にカッサンドラも殺されてしまっています。
映画の中でも、レト公爵は味方の裏切りで殺されてしまいますが・・・
これまでのところ、レディ・ジェシカとポールは生き延びることができています!
ここらへんも、またギリシャ神話とはちょっと違った展開!
その後の二人の運命は、ギリシャ神話から予測するのは難しいみたいなので、映画の続きで見るのを楽しみに待ちたい思います!
主人公・ポールの英雄神話?!
そして、この映画の全体のストーリーに関してですが、
私はまだ原作小説
『デューン 砂の惑星』
を読んでいないので、その後のストーリーは把握していないのですが、
今回公開になった映画『DUNE デューン 砂の惑星』を見る限り、
この物語は完全に、
ギリシャ神話にも通じる英雄神話
の構成でできているんだろうな、と思います。
この映画のストーリーは、ざっくり分けるとこの3部構成でできています。
この「英雄神話」というのは、
有名なアメリカの神話学者ジョーゼフ・キャンベルが
『千の顔を持つ英雄』
という本の中で分析したもので、
ギリシャ神話をはじめとする世界の神話には、同じような英雄に関する物語のパターンがある、
ということなんですね。
その同じようなパターンというのは、次の3つの要素になるそうです。
1.出発 (召命)
主人公は、それまでの安全な環境を追い立てられるように離れることになります。
主人公がいつまでも両親のもとで安全に暮らしていたら、いつまでたっても英雄にはなれませんからね!
この映画の中の主人公のポールは、有力者であるレト公爵の後継者として、愛情をたっぷり受けて安全な環境で育っていました。
しかし、皇帝の罠にはまり、父は命を落とし、ポールも命を狙われて逃げ出すことになります。
そして、新たな世界(惑星アラキス)のなかへ旅立っていきます。
神話とちょっと違うのは、お母さんのレディ・ジェシカが付いてきてるところですが、まあ大筋はあってますよね。
2.試練(イニシエーション)
そして主人公は、それまでの安全な環境を離れて、外の世界で試練を経て、一人前にならなくてはいけません。
これはいわゆる通過儀礼(イニシエーション)と考えられます。
大人になるために試練をかいくぐる強さを身に着けていくことなります。
映画の中では、ポールとレディ・ジェシカは命を狙われて逃げて行き、アラキスの先住民族「フレメン」のもとにたどりつきます。
当然ですが、この「フレメン」たちは、ポールを特別扱いはしてくれません。
厳しい試練を与えてきて、ポールはいきなり真剣勝負の洗礼を受けることになります。
実際血を流すような戦いはしたことがなかったポールですから、これは大きな試練です。
「フレメン」は、こうしてポールを鍛えていって、少年から大人にしてくれるはずです。
この映画では「part 1」なのでここまででしたが、
おそらくはこの後、ポールは「フレメン」の中で腕を上げて、認められていくんだろうな〜って予想してます!
3.帰還
そして、一人前になった主人公は、一度は後にした故郷に戻り、英雄として迎え入れられて、「英雄神話」の完成です。
この映画でも、最後には、やっぱり一人前になったポールが「フレメン」たちと協力して、皇帝とハルコンネン家たちを倒して英雄になる。
って結末になるんじゃないかな。
そうじゃないと、すごーいバッドエンドの物語になっちゃいますけどね!
ポールが皇帝とハルコンネン家に敗れて皆死んで終わり! って身もふたもない!!
まあ、そうはならないだろうな、とそこは安心しています。
というわけで、この映画『DUNE デューン 砂の惑星』も、ギリシャ神話にも共通する「英雄神話」なんじゃないのかな。
まあこれで、原作小説最後まで読んでみて、違ってたらごめんなさい!
映画の「part 2」が公開される前までには、必ず読みますよ〜!
しかし、実はこのストーリーのパターンは、映画「スターウォーズ」でも採用されているように、
現在でもいろいろな作品にストーリーのベースとして使われていますよ!
気になった方は、以下の解説記事も合わせて読んでみてくださいね!
『DUNE デューン 砂の惑星』とギリシャ神話のつながりも楽しんでね!
ということで、
ドゥニ・ヴィルヌーブ監督の最新作
『DUNE デューン 砂の惑星』
を実際に見たところ・・・
ギリシャ神話の世界につながっている!
と実感したので、この新作SF映画とギリシャ神話について、まとめてみました!
こうしてまとめてみると、ストーリーの根底の部分に、しっかりギリシャ神話とのつながりが隠されているんだな、と改めて思います。
海外の作品だと、こうしてギリシャ神話へのオマージュが散りばめられていることがよくありますので、
この映画を見るときにはぜひ、もとになったギリシャ神話についても思い出してあげてくださいね!
その神話に隠された意味などを考えると、その作品自体に対する考え方もより深まるし、その分もっと作品を楽しむことができると思いますよ〜!
*この映画を見る時には、ぜひギリシャ神話とのつながりも頭に入れて見てみてくださいね!
*そして「part 2」の制作も決定しています!最後まで見ないと英雄神話については語れないかも?!