丑年にちなんで、
牛にまつわるギリシャ神話を5つ
有名なものをセレクトしてご紹介します!
牛は古代から家畜として人間社会に重要な役割を果たしてきた存在
牛にまつわるギリシャ神話もいろいろです!
丑年生まれの方もそれ以外の方も、良かったらぜひ読んでいってね!
ミノア(クレタ)文明と牛
では、牛にまつわるギリシャ神話を始める前に、
そもそも古代ギリシャで牛というのはどんな存在だったのか、についてご紹介します!
ギリシャで時代をさかのぼること
ミノア文明
あるいは
クレタ文明
と呼ばれる時期、
クレタ島では大規模な宮殿建築が現れ、線文字Aと呼ばれる独自の文字も使用され、
強力な中央集権の都市国家が現れて、華やかな文明を築きました。
そして、この時代クレタ島では、どうやら牛は神聖視されていたようで、クノッソス宮殿には数々の
牛の姿をかたどったレリーフ
が残されているのですよ。
どれも色彩豊かで躍動感があって、完全な姿を見たかった逸品ばかり!
*有名なクノッソス宮殿の牛の壁画
*牛を飛び越えるアクロバットを描いたフレスコ画
このようにミノア文明は、牛を大事にしていた文化だと考えられるのですが、
ギリシャ語を話す人たちの属するインド=ヨーロッパ語族では、牛を神聖視する傾向が各地で見られます。
しかしクレタ文明の担い手の人たちがギリシャ語を話していたインド=ヨーロッパ語族なのかどうかは、線文字Aがまだ解読されていないので、はっきりした事は分からないんですよね。
でも、このクレタ文明の衰退後に発展してきたミュケナイ文明、
そしてその後の暗黒時代を挟んでアルカイック期、古典期のギリシャ文明の最盛期では、
語り伝えられている神話の中に、牛にまつわるものが出てくるので、クレタ時代の名残が全く忘れ去られてしまったわけではないように思えます。
という事で、ギリシャ神話に出てくる牛にまつわるお話で、有名なものを5つ集めてみましたので、良かったら読んでいってください!
1)牛に恋したパシパエ
ではまず最初には、これも有名なギリシャ神話ですが、
牛に恋してしまったパシパエ
のお話をご紹介しましょう。
パシパエはクレタ島のミノス王の奥さん、つまり王妃でした。
パシパエのお父さんは太陽神ヘリオス、お母さんはオケアノスの娘ペルセイス。
ですから人間よりは血筋から言うと神様に近いですよね。
姉妹には魔女キルケがいます。
*キルケについて詳しくは、こちらの記事も合わせてどうぞ!
さて、そのパシパエの運命が狂わされたのは、
夫のミノス王が、自分がクレタの正式な王であることを示すため、ポセイドン神に一頭の牛を送ってくれるように頼んだことがきっかけでした。
ミノス王は、その牛を送ってくれたらポセイドン神に犠牲に捧げると約束していたのですが、
いざその牛が届いてみると、とても美しい、立派な雄牛だったので、その牛を犠牲に捧げることが惜しくなってしまったのです。
そうして、その雄牛を殺す代わりに他の牛を殺してポセイドン神に捧げてごまかそうとしたのですが、
当然神様はお見通しで、ミノス王が約束を破ったことを怒って、罰を与えます。
その罰とは、
妻のパシパエがポセイドンの送った雄牛に恋をしてしまう
と言うものだったのです。
神様のせいで牛に恋してしまったパシパエは、名工ダイダロスに頼んで木製の雌牛の模型を作ってもらってその中に入り、
ポセイドンの雄牛と思いを遂げたという事です。
・・・・・・
えー! 牛と?!
と、このお話を聞いた方はほぼ全員拒否反応を起こすことは間違い無いのですが、まあそこらへんはギリシャ神話なので聞き流してください・・・
ともかく、ミノス王の妻パシパエは、牛に恋をしてしまった! という何とも不思議な神話が語られている人なのですよね。
*名工ダイダロスについて詳しくは、こちらの記事も合わせてどうぞ!
2)ミノタウロス退治
そうしてその後、
パシパエは子供を産むのですが、生まれた子供は
人間の体に牛の頭が乗った怪物・ミノタウロス
だったのです!
ミノス王はこの怪物の姿の息子を恐れ、名工ダイダロスに命じて、
一度入ったら2度と出ることのできない迷宮・ラビュリントス
を作らせ、その中にミノタウロスを閉じ込めます。
そして、その当時ミノス王の勢力下だったアテナイ市から、
毎年7人づつ少年少女を生贄として送らせました。
これに怒ったのが、
アテナイ王の子テセウス
テセウスは自ら生贄の一人となってクレタ島に乗り込み、
クレタの王女アリアドネの助けを得て、迷宮ラビュリントスに侵入。
見事ミノタウロスを退治して、アリアドネの渡してくれた糸をたどって無事に生還したのでした。
これが有名な
テセウスのミノタウロス退治
テセウスに恋したアリアドネの渡した「アリアドネの糸」とともに、今でも多くの方達に親しまれている神話ですね!
この時倒されてしまったミノタウロスの方はいわば悪者役になっていますが、
このお話もクレタ島で牛が神聖視されていた名残なのかもしれないですね!
*「アリアドネの糸」について詳しくは、こちらの記事も合わせてどうぞ!
*「ミノタウロス退治」について詳しくは、こちらの記事も合わせてどうぞ!
3)ヘラ女神の目
さて、そして牛つながりで有名なのが、
ゼウスの正妻の女神・ヘラ
当然ながら、ギリシャ神話に登場する女神の中でも最大の女神で、
アルゴス、サモス島には大神殿が残されて、絶大な信仰を集めていました。
このヘラ女神の美しさを形容するのに
「牛眼のヘラ」
って言っていたのです。
え? ヘラが牛?
というわけではなくて、
牛の目って、黒目がちでキラキラしてて可愛いじゃ無いですか?
だからそれにあやかって、ヘラ女神の瞳の美しさを表していたみたいなんです。
ですけど、一説によると、ヘラ女神はギリシャの先住民の女神だったのが、ギリシャ神話に取り込まれてゼウスの妻になった、
という考え方もあるようですので、そうすると牛たちを信仰していた人たちの習慣が受け継がれていたのかもしれません。
ま、ことの真相は分かりませんが、今の私たちだと「目が牛みたいだね」ってあまり褒め言葉にならないような?
まあ文化が変われば褒め言葉も変わる、ってことですね!
4)牛に変えられたイオ
そしてヘラ女神にちなんで、
ヘラの女神官だったイオが牛にされてしまった
という神話もご紹介!
イオは、アルゴスのイナコス王とメリアとの間の娘、つまりアルゴスの王女でした。
このイオは、アルゴスのヘラ神殿に仕える女神官だったということです。
しかし、そんなイオの美しさに惹かれたゼウス神が、イオに手をつけてしまいました。
ゼウスは、この情事が妻のヘラにバレることを恐れて、
イオを雌牛の姿に変えてしまいます
しかしヘラも疑い深いので、
このイオが変身した牛をゼウスから譲り受けます
ゼウスも渡すのを拒否すればバレてしまいますから、これはヘラ女神も考えました!
そして百目の巨人・アルゴスにこのイオ牛の番をさせたのですが、
しかしゼウスも負けずに、ヘルメス神に頼んでこのアルゴスを殺させてしまいます。
そうすると、ヘラ女神も負けずに、今度はこのイオが化けた牛を虻に襲わせます。
イオは虻に苦しめられて世界中を逃げ回り、
最後にはエジプトに渡って、ようやっとそこでゼウスに人間の姿に戻してもらったということです!
かわいそうなイオ・・・
ゼウスも、自分が怒られないようにして、結局イオを苦しめたんですから、お気の毒としか言いようがありません・・・
5)エウロペを連れ去った牛になったゼウス
そして最後に、
牛になったゼウスに連れ去られたエウロペ
のお話もご紹介しますね!
エウロペは、フェニキアのテュロス王アゲノルとテレパッサとの間の娘でした。
この王女エウロペは、とても美しく成長し、
またか・・・という感じではありますが、ゼウス神が彼女に恋をしました!
そこでエウロペに警戒されないように、
ゼウスは白い牡牛に姿を変えて彼女に近づきます。
そうして油断してエウロペがその牡牛の背中に乗ったところを、
一気にクレタ島まで連れ去ってしまった!
ということです。
ええ、現代なら犯罪行為ですが、これがギリシャ神話だとあるあるなのですよ。
そしてこのエウロパが、
現在の「ヨーロッパ」(Europe)の語源になっている
ということです!
*ちなみに、星座の「牡牛座」は、このエウロペかイオのどちらかの姿を表している、ということで、二つの説があるらしいですよ!
丑年だけに、牛にまつわるギリシャ神話も楽しんでね!
ということで本日は、
丑年にちなんで、
牛にまつわるギリシャ神話を5つ
有名なものをセレクトしてご紹介しました!
牛は古代から家畜として人間社会に重要な役割を果たしてきて、
ミノア文明では神聖視されていた、という説もあるくらいなので、
牛にまつわるギリシャ神話もいろいろ残っています。
古代から牛さんたちは、私たち人間のそばにいて、いろんな役に立ってくれてたんだなあ〜
と、このギリシャ神話を読んでぜひ思い出してあげてくださいね!
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