名作・良作が目白押しのディズニー・アニメ
メキシコが舞台の映画
『リメンバー・ミー』
そのテーマはなんと!
死者の国に迷い込む少年のお話です!
ディズニー映画のテーマが「死の国」とは、なかなかに攻めている印象ですが、
ギリシャ神話でも、死者の国に行くお話が残っているように、これまで人類はいろんな形で「死後の世界」を想像してきました!
この映画では、そんな古来から人類が想像してきた死後の世界をアニメ化した意欲作!
これは絶対、一度は見た方がいいオススメです!
ディズニー・アニメ『リメンバー・ミー』舞台はメキシコの「死者の日」!
見るたびにCGアニメ技術の進歩に驚かされる
ディズニー/ピクサーのCGアニメーション
『リメンバー・ミー』
(2018年3月16日(金)公開)
原題: Coco
2017年 アメリカ映画 (ディズニー/ピクサー)
上映時間: 105分
監督: リー・アンクリッチ
製作総指揮: ジョン・ラセター
声の出演: アンソニー・ゴンサレス、ガエル・ガルシア・ベルナル、ベンジャミン・ブラット、アランナ・ウバック、レニー・ビクター
予告編:
どうですか、この最先端CG技術による、色鮮やかな世界!
この美しい予告編を見ただけで、胸が高鳴ってしまいますね!
この色とりどりの明かりが揺れる幻想的な光景・・・
CGアニメーションの進歩にも驚かされます!
しかも、今回のこのアニメのテーマは、
メキシコの「死者の日」!!
なんと、ディズニー/ピクサー・アニメが、人間の「死」と「死者の世界」という、ある意味ダークなテーマに取り組むとは!意欲作ですね!
でも、映像を見る限り、陰気で怖〜い「死者の国」というわけではなくて、
カラフルで明るい「死者の国」を作り出しているところが、この映画の特徴です!
まだ生きているのに、「死者の国」に迷い込んでしまった少年は、無事に元の世界に戻れるのか?というストーリーで、
世代を超えた家族のつながりがテーマになっています。
メキシコの「死者の日」って何??
さてそんな
ディズニー/ピクサーのCGアニメーション
『リメンバー・ミー』
テーマは、
メキシコの「死者の日」!!
というわけですが・・・
日本ではあまり馴染みのないこの、メキシコの「死者の日」って一体な〜に?
と思う方も多いかもしれません。
メキシコの「死者の日」とは、
毎年11月1日と翌日2日に行われるお祭り。
11月1日には子供たちの魂が、2日には大人たちの魂が、生きている人たちの元へ戻ってくる日と考えられていて、
町中をマリーゴールドの花と、ド派手な装飾で飾り立て、賑やかに死者たちを迎えるのが、このお祭りの特徴です!
一応、カトリックの諸聖人の日のお祭りなんですが、
もともとはアステカ族の冥界の女神に捧げるお祭りだったということですよ!
確かに、このガイコツの行進やド派手な装飾って、
これ、キリスト教のお祭りなの?!
って、ギョッとするようなお祭り! アステカとキリスト教が出会って、独自に出来上がったお祭りなんですね〜
この「死者の日」の様子は、
「007シリーズ」の大ヒット作
『スペクター』の冒頭のシーンでも見ることができますよ!興味がある方は、ぜひ一度、その奇抜なお祭りの模様をご覧ください!
それにしても、このメキシコの「死者の日」のにぎやかさは、まさにカーニバルですね!
一度見に行ってみたい!
こ〜んな、すごいお祭り騒ぎの、メキシコの「死者の日」
この映画
『リメンバー・ミー』
では、主人公の少年ミゲルは、この「死者の日」に、いつのまにか「死者の世界」に迷い込んでしまう!! というお話です。
この「死者の日」のお祭りと、「死者の国」が一体どんなふうにアニメーションで作り出されているのか、今から見るのが楽しみです!!
「死者の世界」とギリシャ神話の「冥界下り」!
さて、そういうわけで、ディズニー・アニメ新作映画
『リメンバー・ミー』
は、
メキシコの「死者の日」に、少年が「死者の国」に迷い込んでしまう!!
というお話なのですが、
実はこういうふうに、生きている人、「死者の国」に本来は行ってはいけない人が、「死者の国」に行って、戻ってくる! っていうお話は、ギリシャ神話の世界でも出てくるんですよ!
一般的にこれを
「冥界下り」の神話
って、言います。
本当は冥界(=死者の国)は、死んだ人しか行けないところで、行ったら二度と出てくることはできない世界なんですよね。
でも、そんな「死者の国」に行って戻ってきた、という「冥界下り」の神話が、ギリシャ神話ではいくつか見られるんです!
女神デメテルの娘・ペルセポネの冥界下り
まず有名なのは、
ペルセポネの冥界降り!!
ペルセポネは、冥界の神ハデスに連れ去られて、冥界でハデスの花嫁にさせられてしまいます。
本当は、神様は死なないので、冥界の神以外は冥界に行くことは無いのですが、ペルセポネの父親である最高神ゼウスが、特別に許可したのですね。
しか〜し!
これを怒った母デメテルが、ゼウス相手にゴネまくり、ついには、自分の神々の世界に連れ戻す、というお話です。
でも、ペルセポネはハデスに「冥界の食べ物」を食べさせられていたので、結局は一年の3分の1は冥界でハデスと一緒に過ごさなくちゃいけなくなっちゃったんですけどね!
*ここらへんの詳しい話は、こちらの記事も合わせてご参照ください!
ヘラクレスの「冥界下り」
そして、
英雄ヘラクレスの「冥界下り」
も有名ですよ!
英雄ヘラクレスも、冥界の番犬ケルベロスを捕まえに冥界に行く、という神話があります!
これもヘラクレスがエウリュステウス王に命じられた「12功業」の一つなのですね!
でも、生きているヘラクレスは、基本的に冥界に行くことはできません。
そのため、エレウシスに行って女神デメテルの秘境に入会して、行けることになりました。
(*「エレウシスの秘儀」については、上と同じデメテルについての過去記事でご参照くださいね!)
それでも、生きているヘラクレスは一人ではいけないので、特別にヘルメス神とアテナ女神に案内してもらって、冥界に行きました。
そこで、見事に冥界の番犬ケルベロスを生け捕りにして、「12功業」の一つを見事に成功させます!
冥界の番犬ケルベロスを生け捕りにしたヘラクレス(紀元前525年頃:ルーブル美術館所蔵)
*この「冥界の番犬ケルベロス」については、こちらの記事も合わせてご参照ください!
オデュッセウスの「冥界下り」
さらには、ギリシャ神話の大戦争・トロイア戦争で活躍した、
英雄オデュッセウスも「冥界下り」の神話がありますよ!
英雄オデュッセウスは、10年間もかかったトロイア戦争がやっと終わって、船で故郷に帰ろうとしたら、船が遭難して、なんと10年間もエーゲ海をさまよったと言われています!
その間に、魔女キルケーに愛されて、しばらくキルケーと一緒に暮らしていたんですが、やっぱり故郷が懐かしいので帰りたい、と願い出て、再び船出することになります。
でも、その航海も困難が待ち構えているので、出航する時に、すでに死者となっていた大預言者テイレシアスの予言を聞いておくことになりました。
すでに死んで冥界にいる預言者テイレシアスに会うために、オデュッセウスは冥界に下ることになるのです。
冥界に降りて行ったオデュッセウスが出会った死者たちは影のようで、不気味な声を上げながら飛び回っていたということです。
動物を犠牲に捧げて、その血を死者たちに飲ませると、姿がはっきりして話をすることができました。
古代ギリシャの死者の国のイメージって、こういうふうに暗くて怖〜いものだったんですね!
そうして、オデュッセウスは無事に預言者テイレシアスとも話すことができて、航海を成功させて、無事に故郷に帰りつくことができました!
*魔女キルケーについて詳しくは、こちらの記事を合わせてご参照ください!
オルペウスの「冥界下り」
そして最後に、
竪琴の名人オルペウスが冥界に行った神話もあります!
オルペウスは、アポロン神から竪琴を与えられた竪琴の名人で、彼が竪琴を引くと、動物も植物も、みんな彼の竪琴に聞き惚れてしまったくらいの、達人だったそうです。
そんなオルペウスは、奥さんのエウリュディケを溺愛していました。
でも、ある日エウリュディケは、運悪く蛇に噛まれて、そのまま亡くなってしまったそうです。
愛する妻エウリュディケをあきらめきれないオルペウスは、彼女を取り戻すため、死者の国に下って行きました!
冥界の入り口を守っている、番犬ケルベロスも彼の竪琴で眠ってしまい、無事に愛する妻のいる冥界にたどり着くことに成功!
オルペウスの竪琴は、冥界の全ての住人を魅了して、
冥界を支配するハデスとペルセポネも、虜にしました!
そうして、ハデスとペルセポネは、オルペウスが地上に戻るまで後ろを振り返らないという条件付きで、エウリュディケを連れて帰ることを認めてくれたとのことです。
オルペウスは大喜びして、愛する妻エウリュディケの手を引いて、地上に連れて帰ろうとします。
けれど・・・
もう少しで地上に着く、という時に、ついに我慢しきれなくて、愛する妻の姿が見たくて、振り返ってしまうんですね。
するとたちまち、エウリュディケは冥界に連れ戻されてしまった、ということです。
オルペウスはもう一度、なんとか妻を連れ戻そうと冥界に向かったのですが、もう2度と、死者の国にたどりつくことはできませんでした・・・
ジャン=バティスト・カミーユ・コロー「オルフェ」(1861年)
(*「オルペウス」は「オルフェウス」とも表記します。欧米では「オルフェ」と言います。)
なんてかわいそうな、オルペウス!!
そういえば、今回の映画
『リメンバー・ミー』
でも、主人公のミゲルはギターの名手、ということですから、
このオルペウスの神話も反映させているのかもしれませんね!
*オルフェウスの神話について詳しくは、こちらの記事も合わせてどうぞ!
おまけ:日本神話の「冥界下り」
そして、このオルペウスの神話は、日本の神話にもそっくり! ということでも有名ですよ〜
それは、
イザナギとイザナミの神話!
イザナギとイザナミは、日本という国を作った「天地開闢」神話で有名な神様ですよ。
イザナギとイザナミは夫婦だったんですが、イザナミが子供の火の神であるカグツチを産んだ時に、亡くなってしまいます。
あきらめきれないイザナギは、イザナミを連れ戻しに、死者の国まで降りて行きました。
でも、そこで、オルペウスと同じように、イザナミの姿を見ては行けない、と言われていたのに、
愛する妻の姿が見たくて、ついに見てしまうんです。
すると、愛する妻の姿は、腐敗して変わり果てたものになっていました・・・
これにびっくりして、イザナギは冥界から逃げ出して、地上の世界に帰ろうとします。
すると、イザナミは変わり果てた姿で追いかけてくる・・・
なんとか地上の世界の冥界の世界の境界である
「黄泉比良坂(よもつひらさか)」
まで逃げてきたイザナギは、
その出入り口を大きな岩でふさいで、イザナミが追いかけてこれないようにして、これで地上と冥界は簡単に行き来できなくなったということです。
というわけで、この神話、確かにオルペウスのお話とそっくりなんですが・・・
それにしても、日本の神話だと、ギリシャ神話より、残酷!!
そしてグロ!
これも、日本とギリシャの夫婦のあり方の違いかな??
日本の奥さんの方が、ずっと怖い??
いやいや、ギリシャの奥さんがたも、負けず劣らず最強なので、まあ、そういうことはないんじゃないかな〜
ギリシャ神話の女性たちも、みんな強くて、出入り口をふさいだ岩くらい、突破してきそうですよ!!
ファンタジーの基本:「異なる世界に迷い込む」!!
というわけで、
ディズニーの新作映画
『リメンバー・ミー』
ギリシャ神話や、日本神話にも登場する「冥界下り」がテーマになっているんですが、
主人公がふとした拍子に、異なる世界に迷い込んでしまう
って実は、ファンタジー映画の王道パターンでもあります。
やっぱり神話って、全てのファンタジーの原型でもあるんですよね〜
例えば、日本のファンタジー映画の金字塔
『千と千尋の神隠し』
この作品では、主人公の千尋が、いつのまにか、人間が行ってはいけない「神様の世界」に迷い込んでしまう、っていうお話でした!
「冥界下り」とは逆パターンの「天界行き」になるんですが、
人間は行ってはいけない「異なる世界」に迷いこむ、っていう基本は同じですね!
この映画『千と千尋の神隠し』は、日本だけじゃなく世界的にも大ヒットした名作なのですが、
こういうギリシャ神話にも共通する要素が、いろんな文化背景をもつ人たちにとっても受け入れやすかったんじゃないかな〜と思いますよ!
*『千と千尋の神隠し』とギリシャ神話については、こちらの記事も合わせてご参照ください!
現代の「冥界下り神話」=『リメンバー・ミー』!?ぜひ見てね!
というわけで、
2018年3月16日(金) から公開の
ディズニー/ピクサーのCGアニメーション映画
『リメンバー・ミー』
この映画に出てくる「死者の国」とギリシャ神話についてでした!
フルCGの最先端アニメーションの映画のテーマが、古代ギリシャから受け継がれている「冥界下り」の神話とそっくりだなんて、面白いですよね!!
気になった方はぜひ一度見てみてくださいね!
*主題歌「リメンバー・ミー」はアカデミー主題歌賞をとったよ!
*日本語版はシシド・カフカさんが歌います!
*オリジナル・サウンドトラック発売中!
追記:『リメンバー・ミー』現在DVD&Blue-ray発売中! 各種動画サービスにて配信中!
そしてこのギリシャ神話の時代から人類におなじみの「冥界下り」がテーマの映画
『リメンバー・ミー』
現在DVD&Blue-ray発売中です! 色鮮やかな死者の世界をいつでも手元に置いて楽しめる!
そして、
各種動画サービスでも配信中! ネット接続さえあればいつでもレンタル/購入できるのは嬉しいですよね〜