ギリシャ神話の登場人物の中で、
英雄テセウスのミノタウロス退治を助けた女性
アリアドネ
をご存知ですか?
「アリアドネの糸」
という言葉を聞いたことがある方も多いかと思いますが、
このアリアドネという女性がテセウスを救うために与えた糸のことで、
正しい道への道しるべ
というような意味で現在も使われています。
その語源となったアリアドネの神話について、簡単にご紹介したいと思います!
アリアドネはクレタ島の王女
さて、本日お話しするギリシャ神話に登場する女性
アリアドネ
(*長母音を表記すると「アリアドネー」ですが、読みやすくするため以下長母音表記は全て省略しますね)
彼女は、
クレタ島の王女
つまり、
父親はクレタ島のミノス王
母親はその妻の女王パシパエ
という王夫妻から誕生しました。
クレタ島はギリシャの南端、地中海の真ん中に浮かぶ島です。
このクレタ島は、
クレタ文明(ミノア文明)
で知られるように、
ギリシャの中でもいち早く文明が花開き、豪華絢爛な王宮が築かれていたという場所です!
一番有名なのは、
クノッソス宮殿!!
世界遺産にもなっているクノッソス宮殿の遺跡は、壮大で見応え十分!
古代にこれだけの豪華絢爛な宮殿があったなんて、驚かされますよ!
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神話の中のクレタ島のミノス王も、このような巨大な宮殿に住み、権勢を誇っていたのかもしれません。
アリアドネもこんな豪華な宮殿で王女として暮らしていたのかも?
そうすると、まあ、ケタ違いのお嬢様だった、ということは分かりますね!
まあ、お嬢様というか、本物の王女様ですからね!
ミノタウロスとラビュリントス(迷宮)
さて、このクレタ島のミノス王とその妻パシパエには、秘密がありました。
ミノス王は、王様の地位について、増長してよくない行いが目立ったため、
ポセイドン神が、
妻パシパエが牡牛に恋をしてしまうように仕向ける
という罰を与えることになりました。
そうして、妻パシパエはその牛との間に
半分が人間で、半分が牛という怪物・ミノタウロス
を産み落としたのです。
その恐ろしい怪物をミノス王は恐れて、
名工ダイダロスに頼んで、
壮大な迷宮ラビュリントス
を作らせて、その中にミノタウロスを閉じ込めました。
ちなみに、クレタ島で、先ほどご紹介したクノッソス宮殿が発掘された時、その複雑な宮殿の構造から、
これこそが神話のラビュリントスだったのでは?
という説も出ましたが、これを裏付ける確固とした証拠はまだありません・・・
でも、そうだったとしたら、すごく面白いですよね!
そうか、この宮殿の中に、本当にミノタウロスがいたのか・・・?
一体どの部屋にいたんだろう?
なんて想像すると、あっという間に時間が経っちゃいます!
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*ラビュリントスを作った名工ダイダロスについて詳しくは、>>こちらの記事を合わせてどうぞ!
アリアドネとテセウスのミノタウロス退治
さて、そうしてミノタウロスが閉じ込められていた当時、
が、このクレタ島のラビュリントスへとやってきます。
実は、英雄テセウスの故郷アテナイ市は、クレタのミノス王に戦争で負けており、
毎年少年少女を7人ずつ、ミノタウロスへ捧げる
という習慣が行われていたのです。
要するに、人身御供ですね。
ひどい話です!
アテナイの王子であるテセウスは、この悪習を止めさせるため、
ラビュリントスの中にいるミノタウロスを退治しようとしていたのです。
しかし、複雑なラビュリントスは、一度入ったら二度と出てくることはできません。
いくらテセウスが屈強で、ミノタウロスを倒すことができても、
生きてラビュリントスを脱出し、故郷に帰ることは不可能に近いことと思われていました。
う〜ん、さすがのテセウスにも無理難題のミッションだったのですね!
*英雄テセウスについて詳しくは、こちらの記事も合わせてどうぞ!
アリアドネの糸
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そんな苦境のテセウスを救ったのが、アリアドネです。
アテナイからやってきた美青年の英雄・テセウス
その美しい姿を見て、
王女アリアドネは熱烈な恋をしてしまいます
そしてアリアドネは、テセウスに妻にしてもらう約束で、ラビュリントス脱出のための秘策を授けます。
それが、有名な
「アリアドネの糸」
アリアドネはテセウスがラビュリントスに入る前に、一つの糸玉を渡してやりました。
その糸玉から糸を垂らしながらラビュリントスの中に入り
ミノタウロスを退治した後は、その糸をたどってくれば
再び外に出ることができるのです!
このアリアドネの助けを得て、
無事にテセウスはミノタウロス退治を成功させ、
糸をたどってラビュリントスの中から脱出することができました。
ですので、アリアドネの糸は脱出不可能の迷宮から脱する「道しるべ」となった糸のことというわけです!
しかし、冷静に考えてみると、
アリアドネにとってミノタウロスは、父親違いの兄弟
その兄弟の殺害を助けてやるって、ちょっと皮肉ですけれどもね・・・
父親のミノス王、そして兄弟のミノタウロスにとっては、大変な裏切り行為です!
まあそれくらい、アリアドネはテセウスに恋してしまっていたのでしょうね・・・
恋は盲目! それはギリシャ神話の時代から、変わらないんですね!
*テセウスのミノタウロス退治については、こちらの記事も合わせてどうぞ!
アリアドネの恋の行方
そんなふうにして、
「アリアドネの糸」
によって、恋したテセウスを助けてやったアリアドネですが・・・
ミノタウロス退治の後については様々な伝承が残っていて、その後どうなったのかはっきりとはわかりません。
テセウスがアテナイに帰る船に一緒に乗り、ナクソス島まで一緒に行ったらしいのですが、
そこでテセウスに置き去りにされた
という説もありますし、
アルテミス女神に殺されてしまった
とか、あるいは
ディオニュオス神に愛されて、妻となった
とも語られています。
一体どれが本当なのか、確かなことはもはや分かりませんが、はっきりしていることは・・・
アリアドネがテセウスの妻になった、という神話がない
ということです。
エッ? 妻にしてもらう約束で「アリアドネの糸」で助けてやったのに、どういうこと?
って当然思いますよね?
つまり、
結局アリアドネの恋は実らなかったんです
せっかく、親兄弟を裏切ってまでテセウスを救ってやったのに、
その恋は成就しなかったなんて、かわいそう〜
テセウスにとっては、ミノタウロスを退治することが大事で、アリアドネのことなんてそんなに気にかけていなかったのかも・・・
テセウスも薄情なヤツ!
まあつまり、アリアドネの神話が語っているのは、
盲目なくらい恋しても尽くしすぎはダメよ
ってことかな?
結局、尽くした後に捨てられちゃったら、目も当てられませんからね!?
な〜んてね?
ま、いろんな人が、いろんな思うところがある神話だと思いますが・・・
やっぱり自分を犠牲にしてもいいことないよね。
という教訓になる神話なのでした!
ディオニュソス神の花嫁
さて、そんなわけで
アリアドネのテセウスへの恋は実らなかった
というわけなんですけれど、
先ほどもお話ししたように、実はアリアドネには、
ディオニュソス神に愛されて花嫁になった
という神話も残されているんですね!
だからそもそもナクソス島でテセウスに置き去りにされたのは、
ディオニュソス神がテセウスに去るように命じた
って説もあるらしいんです。
う〜ん、テセウスに恋してたアリアドネにとっては、なんかちょっとありがた迷惑な話のような気もしますが、
神様に愛されて花嫁になる、っていうのは、言ってみれば大出世?!なので良かったのかなあ。
で、この時にディオニュソス神が花嫁のアリアドネに贈った冠が、
天にあげられて
となった、ということです!
神様が恋した花嫁に贈った「冠」なんて、なんだかロマンチック?!
*星座の「かんむり座」について詳しくは、こちらの記事も合わせてどうぞ!
もともとは女神だった?アリアドネ
ま、そんなわけでアリアドネは
神様の花嫁に大出世!?
したとすると、この神話は一種のハッピーエンドになってるわけですが、
どうしてこういう神話が残っているのかというと、
そもそもアリアドネって女神だったんじゃない?
って説もあるんですよね。
なんでも、アリアドネはテセウスとの子供を身ごもっていたけど、テセウスはキプロス島に身重の彼女を置き去りにして、
そこでお産で亡くなったという伝承もあるんです。
アリアドネはそこで「アリアドネ・アプロディテ」の聖地に葬られたらしいです。
要するに、アプロディテ女神と一緒に祀られていた、ってことになるんですよね。
だから、元々はクレタ島などでミノア時代に祀られていた女神だったんじゃないか、っていう説があるわけです。
もしそうだとすると、ディオニュソス神の花嫁というのも、まあ当然?!
だから、テセウスとの恋の終わりだけを考えると「かわいそうな女の子」感があるアリアドネですが、
意外とナメられない?
実は神様なんだぞ!
という、アリアドネの意外な正体?!の話も、実は信憑性があるかもしれません!
そう思うと、テセウスと別れて良かったかも?!
アリアドネの悲しい恋も思い出してね!
っていうことで、
「アリアドネの糸」で有名なアリアドネのお話でした!!
英雄テセウスを助けるために、迷宮から脱出できる秘策を授けてやったのに、そのあとは奥さんにしてもらう約束ははたしてもらえなかった・・・
なんて、ちょっと悲しい神話でもあります。
でも実はディオニュソス神の花嫁になったかもしれないし、ひょっとしたら、女神様だったのかもしれないし。
その正体は、実はちょっとミステリアス?!
今ではここ日本でも
「アリアドネの糸」
という言葉はすっかりおなじみになっていますが、次からはこの言葉の元となった女性・アリアドネのことも思い出してあげてくださいね!