ギリシャ神話の中で大活躍する
英雄テセウス
をご存知ですか?
名前を聞いてピンとこなくても、
「ミノタウロス退治」「アリアドネの糸」と言われれば、聞いたことがある方も多いはず!
これは全部、英雄テセウスに関係するお話なのです。
そんな、ギリシャ神話の英雄テセウスについて、簡単にご紹介しますので、
興味ある方はぜひ読んでいってくださいね!
ギリシャ神話の英雄テセウスってどんな人?
さてそれでは、ギリシャ神話に登場する
英雄テセウス
について簡単にご紹介していきますね!
*「テセウス」はギリシャ語表記だと Θησεύς 、正確には「テーセウス」ですが、横棒がめんどいのでここでは「テセウス」表記にしておきますね
テセウスはアテナイ市の英雄で、数々の冒険物語で知られていますよ!
まずは、その誕生からして不思議なものでした。
テセウスの誕生
さて、ギリシャ神話の
英雄テセウス
父親はアテナイ王アイゲウス
母親はその妻アイトラ
という両親の間の子として誕生しています。
しかし、テセウスが生まれる前、もともとアイゲウス王は子供がいなくて悩んでおり、
どうやったら子供ができるかをデルポイのアポロンの神託所へ聞きに行きます。
そして、皮袋の先を解いてはいけない、という神託が出たのですが・・・
アイゲウス王はこの意味がよく分かりませんでした!
こうしてよく分からない神託を受けたアイゲウス王は、
仕方ないのでアテナイに帰る前に、トロイゼンのピッテウス王に神託の意味を訪ねに行きます。
実はピッテウス王は予言の力がある人だったのでした。
そして相談を受けたピッテウス王はすぐに予言の意味がわかり、
アイゲウス王を酒に酔わすと自分の娘アイトラと一緒に寝かせたのだそう。
・・・・?
予言の意味って・・・下ネタ的な??
かどうかは良くわかりませんが、こうしてアイトラは子供を身ごもります。
(でも実は、テセウスは本当はポセイドン神の子だという伝説もあって、どうなのかな??)
こうしてようやく子供を授かったアイゲウス王は、国内の反対勢力を恐れて、
子供は身分を隠してトロイゼンで育てるように、
そして、岩の下に刀とサンダルを隠しておいて、子供がそれを取れるまで成長したらアテナイに送り出すように、
と妻に頼みます。
こうして生まれたテセウスは、16歳になると、隠してあった刀とサンダルを取り出して、アテナイ市に向かいます。
その道すがら、数々の敵を退治していったという伝説が伝わっています!
こうして、アテナイへ向かう途中で名を挙げた英雄テセウスですが、
その時父アイゲウスは、このアテナイに向かってくる無双の若者が誰か分からず
当時アテナイにいた魔女メデイアの力を借りて、テセウスを倒そうとします。
この時メデイアは夫イアソンに裏切られた復讐に、コリントスの王と王女を殺し、さらに自分の子供達も殺し、アテナイに逃亡していたのでした。
しかし、アイゲウス王が実際にテセウスに会ってみると、自分がトロイゼンに置いてきた刀を持っていたので、我が子と知ることに!
テセウスを殺そうとした魔女メデイアは、アテナイ市から追放されることとなりました!
*魔女メデイアについて詳しくは、こちらの記事も合わせてどうぞ!
テセウスのミノタウロス退治!
さて、こうしてアテナイ市で王子として受け入れられた
英雄テセウス
その冒険で名高いのは・・・
このミノタウロスというのは、頭が牛で体が人間の、人喰いの怪物で、
クレタ島の迷宮(ラビュリントス)に住んでいました。
当時アテナイ市は、クレタ島のミノス王との戦いに敗れ、
怪物ミノタウロスへの生贄として、9年ごとに少年少女を7人づつ送る
という犠牲を払わなくてはいけませんでした。
これを嘆き悲しむ国民の声に立ち上がったのが、我らがテセウス!
自ら志願して生贄の一人に加わり、クレタ島に船出することになりました!
しかし、怪物ミノタウロスの住む迷宮は、一度足を踏み入れたら二度と出てこれない、というもの。
当然お父さんのアイゲウス王は大反対しましたが、
テセウスはミノタウロス征伐に燃えて船に乗り込みます!
お父さんは仕方なく許しましたが、無事に帰ってくるときには、船の帆を白に張り替えて知らせてくれるように言い聞かせて、クレタ島へと送り出しました!
*怪物ミノタウロス退治については、こちらの記事も合わせてどうぞ!
「アリアドネの糸」とテセウス
さて、こうしてクレタ島に乗り込んだアテナイ市の王子テセウス
そこで待ち構えていたのは、
クレタ島のミノス王
そして、その娘の
王女アリアドネ
テセウスにとって幸運だったことに、
この王女アリアドネがテセウスに一目で恋に落ちてしまったのです!
いやー、イケメンって、どんな時にも得ですよね!
テセウスに死んでほしくないアリアドネは、テセウスがミノタウロスの迷宮に入る時に、糸玉を渡してやります。
この糸を垂らしながら迷宮に入り、帰る時にはその糸をたどれば、無事に帰ってこれるはず!ということですね。
これが有名な
「アリアドネの糸」
こうしてテセウスは、怪物ミノタウロスの迷宮に入って、ミノタウロスを倒した後、
無事に糸を辿って帰ってきたのでした!!
目的を果たしたテセウスは、他の少年少女と一緒に王女アリアドネも連れて、
急いでクレタ島から船出して、逃げていきました!
・・・で、ここでテセウスとアリアドネは、結ばれてハッピーエンド!・・・って普通思うでしょ?
いやいや、そうは行かないのがギリシャ神話のすごいところ!
なんと、テセウスはその後到着したナクソス島で、
眠っているアリアドネを置き去りにした!
ということなんですよね〜いや〜恐ろしいですね、ゲスですね〜テセウス!
でもこれには諸説あって、実はアリアドネを恋したディオニュソスが連れ去ってしまった、という話もあります。
でも結局、二人は結ばれなかったんですよね・・・
アリアドネ、せっかく命を救ってあげたのにね!
*アリアドネについて詳しくは、こちらの記事も合わせてどうぞ!
その後のテセウスは?
さて、このクレタ島での大冒険の後のテセウスはどうなったかというと・・・
クレタ島から帰る時には、無事なら船に白い帆を張って帰ってくるように、
と、お父さんのアイゲウス王に頼まれていたのをすっかり忘れてしまい、
黒い帆のまま故郷のアテナイ市に帰ってきてしまいます。
それを見たお父さんは、息子が死んだと思って絶望のあまり海に身を投げて死んでしまったのだそうです!
ひ・・・ひどい・・・約束忘れちゃダメ!テセウス!
この時、お父さんのアイゲウス王が嘆き悲しんで身を投げた海が、彼の名前をとって
エーゲ海
と呼ばれるようになったとか。
え?「エーゲ海」と「アイゲウス」がどう同じなの?
と思うかもしれませんが・・・
「エーゲ海」は、英語で表記すると
Aegean Sea
「アイゲウス」は
Aegeus
って、ほら!
「アイゲウスの海」ってことなんですよね!
あんなに綺麗なエーゲ海も、名前の由来を知るとなんだか寂しいですね!
ま、そういうわけで王であるお父さんが亡くなってしまったので、
テセウスは跡を継いでアテナイの王になりました!
そして、アテナイ市の勢力を拡大し、民主主義を整備し、祭礼を整備するなど、アテナイの繁栄に尽力したことになっています!
テセウスは、こうして一番愛されて神話の多い英雄の一人となったわけですね!
アマゾン族との戦い
そして王となったテセウスの有名な冒険は、
アマゾン族との戦い!
アマゾン族は女だけの民族で、戦争にめちゃくちゃ強かった!
テセウスは、一時はアテナイ市内まで攻め込んできたアマゾン族を打ち破ったということです!
*アマゾン族がどんな人たちかは、こちらの記事も合わせてどうぞ!
こうしてアマゾン族を破ったテセウスですが、
一人のアマゾン族の女性を略奪して結婚し、
ヒッポリュトス
という一人息子が生まれます。
しかし、テセウスはこのアマゾン族の女性がいながら、
ミノス王の娘パイドラ
を妻に迎えたため、アマゾン族との間に争いが起こって、妻のアマゾン族の女性も死んでしまった、という話もありますよ。
ちょっと、テセウス、女関係はいい話が無いわ〜
しかも!!
この後妻に迎えたパイドラは、あろうことか、
美青年に成長したヒッポリュトスに熱烈に恋してしまいます!
義母と息子の恋・・・叶うはずが無い!
特にヒッポリュトスは潔癖な性格の人なので、パイドラの恋心を猛烈に拒否!!
絶望したパイドラは、その腹いせに事実とは逆に
「ヒッポリュトスに無理やり言い寄られて嫌だったので死にます」
と遺書を残して自殺してしまったのです!
妻の死後に、この遺書を発見したテセウスは大激怒!!
無実の息子ヒッポリュトスに死の呪いをかけてしまい、瀕死の重傷を追わせてしまいます!
でも、ヒッポリュトスが亡くなる直前に、誤解だったことが分かり、親子は和解することができましたが・・・
でも、テセウスって、父親としてもダメなやつ・・・
というか、女関係がひどいわ〜
*ヒッポリュトスのお話について詳しくは、エウリピデスの悲劇「ヒッポリュトス」をご参照くださいね!
*ヒッポリュトスとパイドラの恋については、こちらの記事でもご紹介しています!
現代に受け継がれた英雄テセウス
さて、そんな大冒険の数々で有名な
英雄テセウス
現代でもそのお話は愛され続けていて、ギリシャ神話に登場する英雄の中でも最も有名な一人、と言ってもいいのではないでしょうか。
今でも多くの方たちが、意外なところでその名前を耳にしているはずですよ!
映画「ファンタビ」にテセウスが!
日本でも大人気の、
「ハリー・ポッター」シリーズのスピンオフ映画第2弾
『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』
この第2弾から映画の中に登場するのが、
主人公ニュート・スキャマンダーのお兄さん
テセウス・スキャマンダー
そうです、なんと、
英雄テセウスの名前を持つ魔法使い!
「闇祓い」の一員として、危険な任務に当たるという役柄ですので、
英雄テセウスの名前にぴったりかもしれません?!
原作者のJ.K.ローリングさんは、「ハリー・ポッター」オリジナルシリーズの中でも、ギリシャ神話ネタをふんだんに使っていたのですが、
このスピン・オフでもやっぱりギリシャ神話の名前が登場しました!
このギリシャ神話の英雄の名前を持つテセウス兄さんが、映画の中でどんな活躍を見せてくれるのか、
ぜひご注目くださいね!
映画『インモータルズ』は英雄テセウスが主人公!
そして、インドの名映画監督ターセム・シンの
『インモータルズ』
この映画は実は、
主人公が英雄テセウス!
テセウスにまつわるギリシャ神話を題材にした映画です。
・・・が!!
その内容は、かなり独自で斬新なので、
「えっ?テセウスの神話ってこんなお話だっけ?」
とオリジナルのギリシャ神話を知ってる方達はびっくりするだろうな?
って内容になっています。
でも、映像はとても美しく、元のギリシャ神話を知っていると、
「こんなふうに大胆なアレンジをしてるんだな」
と、監督の独自な視点もよく分かるので、ぜひ一度見てみてくださいね。
英雄テセウスはイギリスが誇る美形俳優ヘンリー・カヴィルなので、目の保養にもなりますよ!
*この映画『インモータルズ』について詳しくは、こちらの記事も合わせてどうぞ!
「テセウスの船」のパラドックスとは何か?
そして、日本のドラマのタイトルにもなった
『テセウスの船』
このドラマは同名のマンガのドラマ化だそうです。
このマンガも面白くって、読み始めたらハマってきちゃいました。
で、このマンガの冒頭に、このタイトルの由来が説明されていたんですけど、
これは有名な
「テセウスの船」のパラドックス
から来てるんですね!
これはプルタルコスが書き残したものですが、
英雄テセウスは、ここでご紹介したように、クレタ島に船出して、ミノタウロスを倒して無事にアテナイ市に戻ってきました。
この偉業を達成した「テセウスの船」をアテナイの人たちは保存していましたが、
木はやがて腐って痛んでくるから、痛んだ部分を少しづつ新しいものと交換して修復していくと、
やがて全部木材が取り替えられてしまったその船は、果たして元々のテセウスがクレタ島の冒険に行った船と同じなのか?
それとも、全く別の船なのか?
っていう、パラドックス。
普通に考えたら、人間の細胞だって、日々生まれ変わってる。
生まれた時とまるっきり同じ細胞なんて、今の私たちの体内にもあるのか?
では、私たちが「自分」と認識する、その「アイデンティティーはなんなのか」
って、言われてみると確かに「え〜〜〜っと・・・・」ってなかなか答えられないですよね?
そんな「自分とは何か」って永遠に溶けないような難問についてのパラドックスが
「テセウスの船」のパラドックス
ということなんですね!!
このパラドックスをタイトルにつけるなんて、その時点で、かなりツウというか、もうタイトルだけで壮大な物語を想像できますよね!?
このドラマとマンガも、興味ある方はぜひ見てみてくださいね!
英雄テセウスは現代も生き続ける!
ということで、
ギリシャ神話の中で大活躍する
英雄テセウス
について、簡単にご紹介しました!
「ミノタウロス退治」「アリアドネの糸」という、有名なエピソードに彩られたテセウス伝説!
しかも、現代でも映画やドラマでその名前が何度も登場し続けるという、
今では私たちの文化に深く根付いた大英雄がテセウスです!
次にこの英雄の名前を耳にしたら、ぜひその数々の冒険を思い出してあげてくださいね!