日本を襲った未曾有の地震・津波をもたらした
あの東日本大震災から11年
この映画のことは知ってはいても、辛くてとても見られないな・・・と思っていた
『遺体 明日への十日間』
震災から随分時間も経って、そろそろ見ておかなくてはいけないかも・・・
と思いたち、意を決して見てみました。
ニュースなどでは流れてこない凄惨な映像の連続でやはり見るのは辛かったのですが、
こういうことが現実に起きていたことを忘れてはいけないですね・・・
『遺体 明日への十日間』とは
あの東日本大震災から11年経って、
辛くてとても見られないな・・・と思っていた
『遺体 明日への十日間』
意を決して見てみました。
この映画は、ジャーナリストの石井光太さんが出版したドキュメンタリールポ
『遺体―震災、津波の果てに―』
この本を君塚良一監督が映画化し、2013年に公開されたものです。
この石井さんのルポは、東日本大震災の際に岩手県釜石市に作られた遺体安置所で取材して書かれています。
その本に基づいて、遺体安置所で起きた出来事を時系列に沿って追っていく形で構成されている、ドキュメンタリー・タッチの映画に仕上がっています。
『遺体 明日への十日間』のキャスト
この映画
『遺体 明日への十日間』
日本映画界のそうそうたる面々が顔を揃えて作られています。
主な出演者は以下の通り。
- 西田敏行 (映画の主人公・相葉 常夫 / 遺体安置所のボランティア)
- 筒井道隆 (市役所職員・平賀 大輔 / 遺体安置所の管理)
- 勝地涼 (市役所職員・及川 裕太 / 遺体安置所の管理)
- 志田未来 (市役所職員・照井 優子 / 遺体安置所の管理)
- 沢村一樹 (市役所職員・松田 信次 / 遺体回収業務)
- 佐藤浩市 (医師・下泉 道夫 / 遺体の検死業務)
- 柳葉敏郎 (歯科医師・正木 明 / 遺体の確認業務)
- 酒井若菜 (歯科助手・大下 孝江 / 遺体の確認業務)
- 佐野史郎 (釜石市長・山口 武司)
- 緒形直人 (葬儀社社員・土門 健一)
- 國村隼 (住職・芝田 慈人)
これだけの俳優さんたちが揃っているので、当然全員演技がうまいです。
突然の大惨事に見舞われてしまった普通の人々の、戸惑いや苦悩をうまく表していて、
本当にこういう現場だったんだろうな・・・
という説得力を見ていて感じさせられます。
そして彼らの立場に自分が置かれることになったらどうだろう・・・
と、考えずにはいられない迫真の演技の数々でした。
『遺体 明日への十日間』のあらすじ
さて、この映画
『遺体 明日への十日間』
そのあらすじを簡単にご紹介します。
舞台は2011年3月11日の岩手県釜石市。
市民たちはごく普通の日常を送っていたところ、
そこにあの、大地震と津波・・・
(映画では、その場面の映像は入っていません)
釜石市の沿岸部は津波に襲われて大きな被害が出て、
市では臨時の遺体安置所を設置することになる。
しかし、市役所から配属されてきた平賀たち職員は、次々と運ばれてくる遺体に戸惑いを隠せない。
現場が混乱する中、医師の下泉、歯科医師の正木は遺体の確認作業に追われる。
誰もが未曾有の事態に動揺を隠せない中、遺体安置所を訪れた民生員の相葉は、現場の混乱をみて衝撃を受け、ボランティアを申し出る。
葬儀社での勤務経験がある相葉は、遺体の取り扱いを周りの職員たちにも教え、安置所を訪れる遺族たちの世話も始める。
そうして少しずつ遺体安置所には秩序が生まれるのだが、
読経に訪れた住職も、現場のおびただしい遺体を前に、声を失うのだった・・・
『遺体 明日への十日間』を見て
こうして、震災11年目にして見た
『遺体 明日への十日間』
この映画は、ドキュメンタリールポルタージュに基づいて作られたフィクションですが、
再現されたシーンの数々は決してテレビカメラなどは入ることができなかった部分ですので、
本当にこんなことがあったのか・・・と衝撃を受ける映像の数々になっています。
津波で被害を・・・と言われても、現地を見たことがない私たちにとっては、
テレビで流れてくる何も無くなってしまった街を見ても、その被害の実態って想像しにくいところがありますよね。
でもこうして、遺体安置所に次々と運び込まれてくるご遺体の数々を映像で見ると、
津波・・・だけど、まるで町がまるごと空襲の爆撃を受けたみたいな・・・
これ、本当に「戦争状態」だったんだな・・・
と思わずにはいられません。
今ウクライナのニュースが毎日流れてきていますが、平穏な日常を送っていたら突然ミサイルが撃ち込まれてきた、
そんな状態に近かったんじゃないかと思います。
遺体安置所で働く人たちも全員被災者で、電気も水もない、食料もわずか、という極限の状態で、
でも次々と運び込まれてくるご遺体は待ってくれない・・・
映画の中で、市役所の若い職員たちが参ってしまうシーンもあるのだけど、
もし自分がこの場で働かなくちゃいけなくなったら・・・
とてもじゃないけど正気でいられないな・・・
見ていて、ご遺族もですが、職員の方達のメンタルケアなど、大丈夫だったんだろうか・・・
これは本当に人間の耐えられる極限に近い状態だったんじゃないかと思わずにはいられません。
映画の中での山場となったのは、お経を上げに来たお寺の住職が、安置所の惨状を見て、思わず読経の声が途切れてしまう・・・というシーン。
これまでずっと亡くなられた方達を送ってきた住職でも、声も出なくなってしまうほどの衝撃というのが、國村隼さんの演技で伝わってきて、見ているこちらも息を呑みました。
津波はこれほどまでに人々の日常生活を打ち砕くものだということを改めて感じさせられます。
津波は怖い、と言われても、体験したことがないとピンとこないところはありますが、
これほどの破壊力があるものだ、ということは心に刻んでおきたいと強く思いました。
意外な後日談にがっくり
そんな衝撃的だった映画
『遺体 明日への十日間』
ですが、映画を見終わった後にwikipedia のページを読んでいたら、なんと、主人公のモデルとなった人物はのちに逮捕されたことがあると知ってびっくり!
この映画は、
『遺体―震災、津波の果てに―』
という、ジャーナリストの石井光太さんのドキュメンタリーに基づいて作られたフィクションですが、
モデルとなった人物の取材をされていたときには、そういう言動はなかったんだろうか・・・
そういう人物なら、周辺で聞き取りなどすれば、評判くらい出てきそうなものですが・・・
とはいえ、そこまで取材するのも、当時の状況を考えると難しかったでしょうし、これは残念ですが避けることはできなかったのかも。
しかし、映画化までには時間もあったし、裏付け取材はしなかったのかな〜
などと、いろいろ考えてしまいます。
こういう事件が後にあったと知ると、映画自体もどこまで信用していいのかな?
と、つい思ってしまいますが、映画自体はあくまでもフィクションですから、見ているこちらもそう思って見る必要はありますね。
実際の現場やご遺体の様子なども、実際にはもっと凄惨なものだったはずですし、
映画で見ているのはあくまでもフィクションとして作られたものですから。
ただ、実際の状況を想像させるには十分ではあるので、やはり津波の恐ろしさを伝えるという役割は十分果たしていると思いました。
本当に、もう2度と、津波が日本を襲ってくることがないことを祈りたいです。
しかしこの国の地勢を考えると、どう考えてもまた津波はどこかで来ます。
その時のために、後世に語り伝えることが大事ですので、この映画はその役割の一つを果たしてくれているのは間違いありません。
『遺体 明日への十日間』未来への警告になれば・・・
ということで、
あの東日本大震災から11年
この映画のことは知ってはいても、辛くてとても見られないな・・・と思っていた
『遺体 明日への十日間』
震災から随分時間も経って、そろそろ見ておかなくてはいけないかも・・・
と思いたち、意を決して見てみたのですが、
やはり見ている間も、目を覆いたくなるような状況の連続で、見ていてとてもツラかったです。
しかし、こういうことがあった、そして今後も起こりうる、ということを再度、深く考えさせられました。
震災から11年経って、多くの人々の記憶が薄れてきているところもありますが、
日本に生きている以上、またこういう災害が襲ってくるという可能性は十分にあります。
これからもこの災害を語り伝えておかなくてはいけないな、と強く思わせる映画でした。
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