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追悼蜷川幸雄:ギリシャ悲劇の上演3つの蜷川流ポイント

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世界的に活躍された舞台演出家

蜷川幸雄さんが亡くなられました。

その業績を偲び、本日は、

ギリシャ悲劇の上演にも心血を注がれた蜷川さんが、

上演の際にきちんとギリシャ悲劇の様式に敬意を払っていた

というポイントを3つに絞って、お話ししたいと思います。

1)男性が女性を演じることについて

蜷川さんは革新的な演出で知られていますが、

ギリシャ悲劇を上演する際には、

古代の上演形式に大幅には手を加えることは、しませんでした。

そこに、ギリシャ悲劇へのリスペクトを感じます。

その一つが、男性俳優が女性キャラクターを演じること。

「王女メディア」では、男性の平幹二朗さんに、

女性の主人公メディアを演じさせて、これは今も伝説的な舞台となっています。

実は古代ギリシャ悲劇の上演では、

俳優は全員男性で、女性の役も男性がやっていたんです。

だから、古代ギリシャの上演形式にのっとった形でもあったんですね。

なぜ、古代ギリシャでは、そのような形で演じていたのかというと、

俳優は最大3人までしか使えなかったのです。

そして、仮面を使用しての上演であったので、

3人の俳優が、仮面と衣装をとっかえひっかえして、いろんなキャラクターを演じていたというわけ。

だから、女性の役があったら、女性用の仮面と衣装で、男性俳優が演じていたんですね。

ギリシャ悲劇が、日本の能と比較される所以もそこにあるんですが、

顔全体を覆う仮面を使用していたために、男性が女性を演じていても、観客は女性だと仮面と衣装で認識できるわけです。

歌舞伎の場合は仮面も使わず、衣装とメイクと仕草で、男性が女性に化けるのですから、ちょっと違いますね。

まあでも、蜷川さんの「王女メディア」の上演でも、仮面は使わずに、メイクと衣装で男性が女性になりきっていたのですから、歌舞伎に近いといえば近いんですけど。

ともあれ、男性俳優に女性を演じさせた、という蜷川演出は、ギリシャ悲劇の上演として実に正しかったわけですね。

*「王女メディア」の上演については、こちらの過去記事もご参照ください。

http://irenekitakami.sunnyday.jp/%E8%BF%BD%E6%82%BC%E8%9C%B7%E5%B7%9D%E5%B9%B8%E9%9B%84%EF%BC%9A%E3%82%AE%E3%83%AA%E3%82%B7%E3%83%A3%E6%82%B2%E5%8A%87%E4%B8%8A%E6%BC%94%E3%81%A7%E4%B8%96%E7%95%8C%E7%9A%84%E8%A9%95%E4%BE%A1/

2)コロスの使用

現代でギリシャ悲劇を舞台なり、映画なりで再上演すると、

どうしても隅に追いやられがちなのがコロスです。

コロスとは、合唱隊のことで、古代のギリシャ悲劇上演には欠かせないものでした。

古代の上演では、舞台の最初にコロスが入場して、最後までずっと舞台上にいて、

歌舞を披露したり、セリフに入ってきたりしていたと考えられています。

でも現代の上演で、12〜15人もいるコロスが常に舞台にいると、まあ要するに邪魔にもなるわけですよ。

だから3人くらいに減らして、コロスのセリフを言わせればいいじゃないか、という演出もあるんですよね。

が、蜷川さんの演出のギリシャ悲劇では、

大人数のコロスがちゃんと登場してきて、ずっと舞台上にいます。

大勢のコロス全員に芝居をつけるのは、演出側も大変だとは思うんですけどね。

でも、コロスの役者さん全員、きちんと芝居に参加して、舞台を引っ張っていく様子は、

古代の上演を彷彿とさせるところでもあります。

ただ残念なのは、古代のコロスは歌ったり踊ったりをしていたはずなんですけど、

当然ながら現代には譜面も踊りの振り付けも伝わっていないので、

蜷川さんの舞台のコロスたちは、歌う代わりにセリフを同時にしゃべる、という形になっています。

歌って踊ってくれたら完璧でしたが、それはもう再現は難しいですからね。仕方ない!

*ギリシャ悲劇のコロスについては、こちらの過去記事もご参照ください

http://irenekitakami.sunnyday.jp/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E4%B8%AD%E3%81%AE%E3%82%AE%E3%83%AA%E3%82%B7%E3%83%A3%E8%AA%9E%E3%80%8C%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%A9%E3%82%B9%E3%80%8D/

3)ストーリーに忠実

これは、当たり前に思われるところもあるかもしれませんが、

蜷川さんの演出のギリシャ悲劇は、基本的にオリジナルのストーリーに忠実です。

でも、古代の台本に沿うと、現代では大変なところも出てくるのですが、

見ている限りかなりオリジナルに沿っています。

これは、蜷川さんの舞台の脚本を手がけた、山形治江さんの業績でもあるんですが、

蜷川さんから、古代の原典を日本語訳にしたものだとそのまま使えない、

と言われて、現代ギリシャで上演されている脚本をアレンジして作り上げたそうです。

詳しくはこちらのインタビューを見ていただきたいのですが・・・

http://www.performingarts.jp/J/art_interview/0612/2.html

現代の上演に耐えられる脚本を作り上げるために、

いくつもの台本を参照して、古代の原典にも当たって、苦労して作り上げられたのですね。

ですからその内容は、古代の原典そのままではないですが、

かなり古代のオリジナルに忠実でありながら現代の上演に耐えられる内容になっています。

例えば、藤原竜也さんが主演の舞台

「オレステス」

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古代のエウリーピデースの原典では、オレステスのえらく長いセリフがいくつかあるのですが、

ちゃんと藤原竜也さんは、延々長ゼリフを言っていましたよ。

よく間違えないな・・・私なら絶対間違える!!

その長ゼリフをそのまま使ったのは、蜷川さんのこだわりかもしれないですね。

ギリシャ悲劇を愛した蜷川さんに敬意を込めて

というわけで、

蜷川幸雄さんによるギリシャ悲劇演出について、

目に付いたポイント3つを解説してみました。

どれを見ても、蜷川さんが古代ギリシャ悲劇を愛していたんだなあ、

ということがよく分かります。

日本でこれだけギリシャ悲劇上演が盛んになったのは、蜷川さんの大きな功績と言えるでしょう。

心よりの敬意を込めて、

蜷川幸雄さんのご冥福をお祈り申し上げます。

*この記事が気に入った方は、こちらもどうぞ!

http://irenekitakami.sunnyday.jp/%E8%BF%BD%E6%82%BC%E8%9C%B7%E5%B7%9D%E5%B9%B8%E9%9B%84%EF%BC%9A%E3%82%AE%E3%83%AA%E3%82%B7%E3%83%A3%E6%82%B2%E5%8A%87%E3%80%8C%E3%83%A1%E3%83%BC%E3%83%87%E3%82%A4%E3%82%A2%E3%80%8D%E3%81%AE%E4%B8%96/

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