ギリシャ悲劇の傑作中の傑作
『オレステイア』
今新国立劇場にて、ロバート・アイクが斬新に新解釈を加えた新作として上演中!
主演は人気俳優・生田斗真!
ギリシャ悲劇が、どう現代の劇場によみがえるんでしょう?
大注目の公演です!
新解釈『オレステイア』!
そうなんですよ、ギリシャ悲劇の大作家アイスキュロスの傑作中の傑作
『オレステイア』
現代の日本で、蘇ります!
2019年6月6日(木)〜30日(日)まで!
新国立劇場にてただいま上演中!
イギリスの気鋭の劇作家、ロバート・アイクが大胆な発想で新解釈を加えたと言う劇場版!
まだ自分も上演を見ていないので、一体どんな「新解釈」になっているのか、とっても気になる!
幸運にもチケットが取れたので、後日レビューをまた書きます!
こちら、大人気の作品になってまして、もうほとんどチケットが残ってないらしいです。
気になる方は、お早めにチケットゲットしてくださいね!
公式ウェブサイトはこちら! https://www.nntt.jac.go.jp/play/oresteia/
(*この記事は2019年6月13日時点のものです。この公演は現在終演しています)
スタッフ・キャストは豪華だよ!
さて、そう言うわけで、
ロバート・アイク版ギリシャ悲劇
『オレステイア』
現在新国立劇場にて上演中な訳ですが、
その人気の秘密は豪華なスタッフ&キャスト!
演出:上村聡史
まず演出は、注目作を多く手掛けてきた演出家 上村聡史
読売演劇大賞最優秀演出家賞を受賞したこともある実力者で
古代ギリシャの大傑作の現代的解釈に挑みます!
ギリシャ悲劇は現代の日本の観客には理解が難しいところも多いと思うのですが、
そこは演出家の腕の見せ所ですね!
主演:生田斗真
主役のオレステスには、超人気俳優 生田斗真
映像作品によく出てると思っていたのですが、舞台にも出演してるのですね!
ジャニーズ事務所でも珍しい俳優活動に専念している役者さん。
舞台の上でどのように輝いてくれるのか、注目です。
そのほか、テレビなどでも活躍中の 音月 桂、趣 里、横田栄司 などの出演陣で
なんと!
予定上演時間が約4時間20分!!
(1幕 1時間20分 休憩20分 2~3幕 1時間35分 休憩20分 4幕 45分)
という超長丁場!!
俳優陣とスタッフが、体力の限界まで熱演を見せてくれるのか?!
スタッフ&出演陣の熱気に負けないように、見に行く観客側も体力十分で臨みたい大作ですね!!
原作はアイスキュロスの『オレステイア』!
さて、そんな注目の舞台
『オレステイア』
現在上演中なのは、イギリスの作家ロバート・アイクのリメイク版ということになりますが、
元々の原作は古代ギリシャの3大悲劇詩人の一人
アイスキュロスが書いた『オレステイア』!
あ〜、そんなん、文学史の授業でやったわ〜って範囲でご存知の方も多いと思います!
ここでちょっと、その原作についておさらい!
実際に舞台を見る前にぜひ読んでいってね!
3本セットで『オレステイア』!
さて、アイスキュロスの『オレステイア』は、そのまま『オレステイア』って一つの作品になってるわけじゃないんですよ〜
もともとは『オレステイア3部作』と呼ばれるもので、3つの悲劇作品をまとめてこう呼んでます。
なぜ三つまとめて?
って疑問に思われる方もいるかもしれませんが、
ギリシャ悲劇はもともと3本セットで上演されていたんですよね。
ですので、この『オレステイア3部作』も
『アガメムノン』
『コエポロイ』
『エウメニデス』
の3作セットで上演されていたもの。
それをまとめて、『オレステイア3部作』って呼んでます。
実は現在、この3本セットが全部残っているのは、この『オレステイア』だけ!
他の悲劇は、みんな3作バラバラになってしまって、そのうちの1本しか残っていないんです。
そういう意味では、セット全巻揃ってるこの作品はとっても貴重なものなんですよ〜!
ストーリーは、トロイア戦争で活躍したアガメムノン王の一家のお話なんですが、
この一族が、身内で殺し、殺されして、ふつーに考えると悲惨なんですが、
娘の仇、父の仇、母の仇、って一体何が正義なの?
って見ているこっちも考えさせられる内容になっていますよ。
ざーっくりここで、各作品を解説してみますね!
『アガメムノン』
『オレステイア3部作』の1作目は、
トロイア戦争で英雄アキレウスたちと一緒に戦ったアガメムノン王が主役の
『アガメムノン』
この作品の舞台は、10年間も戦った大戦争・トロイア戦争の後のこと。
勝利を納めたアガメムノン王が、故郷のアルゴスに帰ってきます。
戦利品として手に入れた、トロイアの美貌の王女・カッサンドラと一緒です。
しかし、故郷で彼を待っていた妻クリュタイメストラは、夫の不在の間に愛人を作り、
その愛人アイギストスと一緒に、夫の殺害計画を企てていました!
実は、アガメムノンがトロイアに出陣する際に、愛する娘イピゲネイアを神に生贄に捧げて殺してしまったのです。
その娘を殺された恨みを晴らすため、クリュタイメストラは復讐の機会を待っていたのでした!
何も知らずに故郷に帰ったアガメムノンは、殺意を隠して歓迎するクリュタイメストラにすっかり騙されてしまいます。
でも、その真意に気がついたのは、今や王の妾となった王女カッサンドラ。
実はカッサンドラには、アポロン神に与えられた予言の力があるのです!
クリュタイメストラの殺害計画を知ったカッサンドラは、自分のそこで一緒に殺される運命なのを知って、その死を受け入れる覚悟を決めます。
そして、そんな計画にまったく気がつかないアガメムノン王は、
お風呂で裸になった隙に、クリュタイメストラにあえなく刺し殺されてしまうのでした!
こうして愛する娘の敵討ちとして、自分の夫を殺してしまったクリュタイメストラ
女性ながら、にっくき夫をナイフでバッサリやってしまうなんて、なかなかやるな!
このクリュタイメストラの悪女ぶりにも大注目ですよ!
*クリュタイメストラについてはこちらの記事も合わせてどうぞ!
*悲しい運命の王女カッサンドラについても、こちらの記事を合わせてどうぞ!
『コエポロイ』
アイスキュロスの『オレステイア3部作』の第二作目は、
『コエポロイ』
舞台は、アガメムノン王殺害後のアルゴスです。
今は、クリュタイメストラと愛人のアイギストスが権力を握っています。
その家では、クリュタイメストラとアガメムノン王の娘であるエレクトラが、父を殺されて愛人がのさばる現状に怒りを持って暮らしています。
そして、とある日エレクトラは、亡き父アガメムノン王の墓参りに出かけます。
そこで思いがけず出会ったのは、末の弟オレステスでした!
オレステスは幼い頃から外国に預けられていましたが、成長して故郷のアルゴスに密かに帰ってきていたのでした。
その目的はもちろん、父アガメムノンの敵討ちです。
父を討った仇アイギストス、そして母のクリュタイメストラ・・・
え? お母さんが父の仇なの?
そう、実のお母さんであるクリュタイメストラが父親アガメムノンを殺したんですから、
オレステスが父の仇を打とうと思ったら、お母さんを殺すしかないのです!
それでも、実のお母さんを殺すなんて、心が痛まないの??
と、もちろんオレステスにも葛藤はあるんですが、
当時のギリシャは男系相続。
父の跡を継いでアルゴスの王となるためには、どうしても父の仇を倒さなくちゃいけないんですよ〜
そして、母のクリュタイメストラも、自分の母親が殺せるのか、と情に訴えて、命乞いをしてきます!
しかし、ついに意を決して、実の母親を殺して父の仇を討ったオレステス・・・!
すると、その目の前には、他の人たちには見えない、恐ろしい姿の
復讐の女神エリニュスたちが襲いかかってきました!
それは、肉親殺しの復讐を請け負う、と言う恐ろしい女神たち
でも、周りの人たちに見えないと言うことは、良心の呵責に苛まれたオレステスが見ている幻?!
それとも・・・
『エウメニデス』
こうして実の母親を殺したオレステス
今度は復讐の女神たちに追いかけられ、
デルポイのアポロン神殿まで逃げていきます!
『コエポロイ』の最後では、オレステスの幻覚か?と言う目に見えない復讐の女神たちだったのですが・・・
この3作目には、冒頭から、復讐の女神たちがわんさと登場します!
当時のギリシャ悲劇では、12〜15人のコロス(*コーラス隊。歌ったり踊ったりする)が登場したのですが、
なんとこの全員が、黒い衣装で頭は蛇になってる復讐の女神エリニュスに扮して登場したそうですよ!
この女神たちはもちろん、実の母親を殺したオレステスを捕まえて罰を与えようとしています。
血の繋がったもの同士の殺人を罰する女神たちなのでね。
しかーし、ここで登場するのが、デルポイの主アポロン神!
アポロンは、オレステスは父親の仇を討ったんだからいいじゃないか、とオレステスの味方をしてくれます!
こうしてアポロンとエリニュスの間で、どっちが悪いのケンカに発展!
ついには、決着がつかないので、アテナイ市のアテナ女神の法廷で裁判をすることになりました。
裁判でも、両者一歩も譲らず、
オレステスが悪い、いや、悪くないの議論は平行線・・・
最後には投票で決めることになりました。
投票の結果・・・
オレステスが無罪、有罪のどちらの票も同数と言う結果に!
そこで、裁判長であるアテナ女神の一票で最終的に有罪か無罪か決まることになるのですが、
アテナ女神は・・・
オレステス無罪に投票!
なんでかって言うと、アテナ女神は母親から生まれたんじゃなくて、父親ゼウスの額から生まれたので、
父親の仇を討ったオレステスに罪はない!
と言う意見になったんだそうです。
なるほどね〜そうきたか!
と言う裁判の結果なのでした。
しかし!これで黙って引き下がれないのが、復讐の女神エリニュス!
実の母親を殺したのに無罪なんて、信じられない!
と大変お怒りに。
そして、アテナイ市に怒りの呪いをかけようとするのですが・・・
そうなると、とんだとばっちりなので、アテナ女神は説得にかかります。
そして、エリニュスたちをアテナイでお祭りしてやるから!
ってことを丁寧な言葉で言って、ついにその怒りを解いたのでした。
そうして、最後には、オレステスも罪は許され、エリニュスも怒りを解いて、みんなハッピー!
と言うハッピーエンド!
あ、あれ、悲劇なんじゃないのか?
と言う疑問はさておき、最後にはみんな、丸く収まったのでした!!
*アポロン神について詳しくは、こちらの記事も合わせてどうぞ!
*アテナ女神について詳しくは、こちらの記事も合わせてどうぞ!
原作も読んでみてね!
と言うことで、
この3つの作品が合わさったのが
『オレステイア』!
ですので、3本全部合わせての、ながーい、壮大な物語になっています!
現在新国立劇場で上演されている『オレステイア』も、このアイスキュロスの悲劇がベースらしいですので、
観劇に出かける前に、時間の余裕があったらぜひ、原作も一度読んでみてください!
登場人物も多いし、長い物語なので、一通り頭に入れておくことをオススメしますよ!
『アガメムノン』
現在文庫本で手軽に読めるのは、
第1作目の『アガメムノン』
『オレステイア』をまとめて読むなら全集で!
そして、『オレステイア3部作』をまとめて読みたい方は、
文庫版のギリシャ悲劇全集がオススメです!
ギリシア悲劇〈1〉アイスキュロス (ちくま文庫)
さらには、経済的余裕のある方には、岩波書店から出ている、ハードカバーの
アイスキュロス I ギリシア悲劇全集(1)
これだと解説まで読み応えがありますよ!
オレステスのそのほかの物語も!
そのほか、この悲劇の主人公オレステスについて、もっと知りたい方は、
エウリピデスの『オレステス』と言う作品もあって、
この作品は藤原竜也さん主演で舞台化もされているんですよ〜
この作品は、ちょっとアイスキュロスの『オレステイア』と話が違ってるんですけど、なかなか面白い作品です。
姉・イピゲネイアの物語
そのほかに、お姉さんのイピゲネイアが主役の作品もありますよ
エウリピデスの
『アウリスのイピゲネイア』
そして
『タウリケのイピゲネイア』
では、父親のアガメムノンに犠牲として殺されそうになったイピゲネイアが、実はタウロイ人の国で生き延びていて、
逃げてきたオレステスと再会して一緒に故郷に戻る、と言うストーリーに!
この2作品とも、文庫版全集に収録されています!
姉・エレクトラの物語
そして、オレステスのもう一人のお姉さん、
エレクトラについての作品もありますよ〜
エウリピデスの『エレクトラ』
この作品では、エレクトラが主人公になって、オレステスが母親を殺すのを手助けする内容になっています。
そう、エレクトラは、自分の母親クリュタイメストラを憎んでいて、
弟のオレステスにその父親の仇を殺すように励ます立場なんです!
でも、エレクトラだって、自分のお母さんを殺すのは心が痛みそうなものなんだけど・・・
実はこうしてエレクトラは父親を愛して母親を憎む、
いわゆるファザコンの代表!
心理学では、その名前をとって
「エレクトラ・コンプレックス」
って命名されていたります。
女性の皆さんには、自分にも心当たりある??
ちなみにその反対で、男の子が母親を愛して父親を憎むようなマザコンの場合は、
ギリシャ神話で父を殺し母と結婚した英雄オイディプス王の名前をとって、
「エディプス・コンプレックス」
って言うんですよ!
と言うわけで、現代の心理学にも使われているほどの有名なエレクトラのお話
こちらも文庫版の全集に収録されていますので、気になった方はぜひ一度読んでみてくださいね〜
*エレクトラについて詳しくは、こちらの記事も合わせてどうぞ!
と言うように、オレステスの話には、周辺の登場人物を含めて色々なバージョンがあるので、読み比べてみるのも、きっと楽しいですよ!
この機会に、ぜひ読んでみてくださいね!
『オレステイア』新国立劇場にて、ぜひお楽しみください!
ということで本日は、
ギリシャ悲劇の大作家アイスキュロスの傑作中の傑作
『オレステイア』
現代の日本で、蘇りますよ〜!
2019年6月6日(木)〜30日(日)まで
新国立劇場にてただいま上演中!
という話題でした!
イギリスの気鋭の劇作家、ロバート・アイクが大胆に書き下ろした意欲作!
日本でこんなギリシャ悲劇が見れるなんて、幸せ!
ご興味ある方は、ぜひチケットを手に入れて、劇場を訪れてみてくださいね!
これをきっかけに、ギリシャ悲劇の世界にハマっちゃうかも〜??
(*この記事は2019年6月13日時点のものです。この公演は現在現在終演しています)