世界的に高い評価を受けていた
演出家の蜷川幸雄さん
が亡くなられました。
80歳でした。
蜷川幸雄さんはシェイクスピア劇の演出と並んで、ギリシャ悲劇の演出に生涯情熱を傾けられ、
「王女メディア」の演出
などで世界的にその名をとどろかせました。
本日は、そんな蜷川幸雄さんと
ギリシャ悲劇との関わりについて振り返ってみたいと思います。
ギリシャ悲劇「王女メディア」で国際的名声を確立
蜷川さんは1935年、埼玉県川口市生まれ。
「劇団青俳」で演出家として頭角を現し、
1974年、「ロミオとジュリエット」で大劇場デビュー。
エウリーピデースのギリシャ悲劇「メーデイア」
を基とした舞台、
「王女メディア」では、俳優の平幹二朗さんを女形で主演に起用
この意表をついた演出で、蜷川幸雄さんの代表作の一つとなり、
1983年にはギリシャ悲劇の故郷であるギリシャ、そしてイタリアでも公演を行い、
海外でも高い評価を受けることとなりました。
この平幹二朗さん主演の「王女メディア」は、残念ながら現在DVDなどは品切れの模様。
これを機に再販してくれるといいのですが。
この、東洋を思わせる豪華絢爛な衣装と、
白塗りのメイク・・・
まさに時代を超えた、東洋と西洋の融合ですね。
今見ても、斬新!!
1983年にこれを見たギリシャの人たちは、さぞ驚いたことでしょう。
この作品「王女メディア」については、蜷川さんの思い入れも深かったようで、
2005年には大竹しのぶさんを主演に迎えて、
「メディア」として新演出で再び上演しています。
私はこの作品はDVDでみましたが、
舞台の上に浅いプールを作って、睡蓮の花を生け、
そのプールの中を役者さんたちがバシャバシャと水をはねながら動き回る、
という斬新な演出でした。
大竹しのぶさんも、すごい迫力の熱演で、こちらも素晴らしいものでした。
「王女メディア」を女形として演じた平幹二朗さんも、
現在もこの作品を自身の代表作として大切にしており、
新しい演出家の演出で、今年2016年にも再演を行いました。
(公式サイト http://lyric-produce.com/medea2015-2016info/)
このように、
ギリシャ悲劇「メーデイア」は、
日本の稀代の演出家の人生に、大きく関わった作品となっているのです。
数多くのギリシャ悲劇を上演
蜷川幸雄さんが手がけたギリシャ悲劇は、
「王女メディア」だけではありません。
狂言師の野村萬斎さんを主演に迎えた
「オイディプス王」
狂言という日本の伝統芸術を身につけた野村萬斎さんが演じることで、
ギリシャ悲劇「オイディプス王」に東洋的様式美が加わりました。
この作品もギリシャ、アテネで公演を行っています。
そして、10本のギリシャ悲劇をまとめた大作
「グリークス」
名優・平幹二朗さんと再びギリシャ悲劇でタッグを組んでいます。
そして、蜷川幸雄さんの秘蔵っ子として知られる、藤原竜也さんを主演に起用した
「オレステス」
オレステスの厖大な長ゼリフを、難なく演じきった藤原竜也さんには脱帽しました!
そして、2012年には、
「トロイアの女たち」
の上演で、イスラエルでも公演を行いました。
この東京公演は私も見たのですが、パレスチナの平和を願い、
ユダヤ系のキャストはヘブライ語、アラビア系はアラブ語で演じるという、意欲作でした。
思えば、これが蜷川さんの舞台を生で見た最後か・・・
歴史的業績を持つ演出家の作品、もっと見ておけばよかったなあ、と悔やまれます。
ギリシャ悲劇上演の偉大な業績
このように、
蜷川幸雄さんは、ギリシャ悲劇の上演において、
日本のみならず世界的な業績を残された、偉大な演出家でした。
この方がいなければ、日本でこれほどギリシャ悲劇作品が広く知られることは、なかったんじゃないでしょうか・・・
蜷川さん以降、このように日本でも世界でも、ギリシャ悲劇の演出で名を馳せる演出家が、今後出てくるかどうか・・・
蜷川さんの業績は、亡くなられてもなお、燦然と輝き続けるでしょう。
蜷川幸雄さんのご冥福を、心よりお祈り申し上げます。
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