ヤー! イレーネです。
先日もテレビ地上波で放送になった
大人気映画シリーズ「パイレーツ・オブ・カリビアン」の第3作
『パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド』
ご覧になった方も多いかと思いますが、
その中に
「女神カリプソ」
というキャラクターが出てきますね!
これはギリシャ神話の女神から名前をつけています!
では、「女神カリプソ」はギリシャ神話では、どんな女神なんでしょう??
「パイレーツ・オブ・カリビアン」の「カリプソ」
日本の多くの方達にとっては、
ギリシャ神話に登場する女神カリュプソ
のことは知らなくても、
大人気映画シリーズ「パイレーツ・オブ・カリビアン」の第3作
『パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド』
に登場してくる
「カリプソ」
は知っている、という人は多いんじゃないでしょうか?
「カリプソ」はその力を封じるために、人間の女性ティア・ダルマの体の中に閉じ込められていましたが、
映画の中では最終的には本来の姿が解放されることに!
こうして見ると、この女性
「カリプソ」
はいかにも恐ろしげで魔女みたいに思われるかもしれませんが、
「カリプソ」を演じたナオミ・ハリスさんは、普段はこんな知的なカンジの美人です。
なんと、ケンブリッジ大学卒業の才媛ですよ!
「パイレーツ・オブ・カリビアン」以外では、
「007」シリーズでボンドの同僚・マネーペニーを演じて人気です。
ふむ、こういう知的な美女が、恐ろしげな女神「カリプソ」をやると、
より神秘的になって、見る人をひきつけちゃいますよね!
では、この「パイレーツ・オブ・カリビアン」の「カリプソ」のもととなった、
ギリシャ神話の女神「カリュプソ」とは、一体どんな女神だったのでしょう??
気になりませんか?
ギリシャ神話の女神カリュプソ
というわけで本日ご紹介したいのは
ギリシャ神話の女神「カリュプソ」
この女神は、
ギリシャ神話の中でも、ゼウスとかアプロディテとかの有名な神様とは違うので、
「そんな女神がいるの?」 「はじめて聞いた」
と思われる方も多いかもしれません。
女神「カリュプソ」は、ギリシャ神話の中では、
ティタン神族のアトラスが父親で、母親はプレイオネということになっています。
*父アトラスについて詳しくは、以下の過去記事をご覧ください!
「パイレーツ・オブ・カリビアン」の中では、「カリプソ」と呼ばれていますが、
古代ギリシャ語では正しくは、
「カリュプソ」(Καλυψώ)
現代ギリシャ語だと読み方が変わって、「カリプソ」になっています。
この「カリュプソ」(Καλυψώ)という名前は、
「隠す女」
という意味になります。
なんで隠すの? 何を隠してるの?
と言うと、これはやっぱり女神カリュプソの有名な神話のエピソードと関連しているのかな。
女神カリュプソが登場するのは、
ホメロスの『オデュッセイア』の冒頭の第1歌からです。
主人公の英雄オデュッセウスは、故郷のイタケ島に妻子を置いたまま、
トロイア戦争に従軍し、10年もの長い間トロイアで戦いました。
ようやくトロイアを攻め落として、妻と子供に会える!と思い、故郷のイタケ島へと船出したところ、
その帰国の途中の海で次々と苦難にあい、なんと10年間もエーゲ海でさまようことになりました。
実はその10年間のうち、7年間は、オデュッセウスは女神カリュプソのもとで引き止められていたのです。
つまり、そこでオデュッセウスを「隠していた」ということになりますね!
女神カリュプソは、エーゲ海のどこかにあったという神話上の島・オーギュギア島に住んでいましたが、その島へ、オデュッセウスが遭難して流れ着いてきました。
女神は、そうして出会ったオデュッセウスに男性として惹かれ、恋をしてしまったのですね!
その様子は、『オデュッセイア』の中では、こんなふうに語られています。
天地を隔つ巨大な柱を自ら支えるあのアトラスの娘(*カリュプソのこと)が、悲運に泣く哀れな男(*オデュッセウスのこと)を引きとどめ、故国イタケを忘れさせようと、日夜優しく甘い言葉でその心を惑わそうとしているのです。しかし、オデュッセウスは、せめてのことに故国の土から立ち昇る、煙なりとも見んことを願いつつ、むしろ死を望んでいるのです。
ー『オデュッセイア』第1歌より
ここで書かれているのはつまり、オデュッセウス自身は故郷のイタケ島に、妻子の元に帰りたがっているのですが、
女神カリュプソは、その故郷のことを忘れて、自分の元に止まってほしい、と思っているのですね。
しかし、女神というのは、ギリシャ神話の中では死なない(不死)ですので、その夫となるためにはオデュッセウスも不死になることになります。
でも、女神の元を離れて故郷に戻りたいオデュッセウスは、やがては死ぬ人間のままで故郷に帰りたい。
だから、不死よりは、いつかは死ぬ存在でありたいと望んでいるわけです。
人間と神様の恋って、実は結構難しいんですよね!!
「身分違いの恋」の一番究極の形ですからね!!
*このエピソードについて詳しくは、ホメロスの『オデュッセイア』を読んでくださいね〜!
女神カリュプソのかなわぬ恋
さて、そういうわけで、
女神カリュプソと人間オデュッセウスの身分違いの恋
がどうなったのか、ですが、
結局、オデュッセウスは帰国のためにオーギュギア島から船出していき、カリュプソの元を離れていきます。
女神の恋は、ここではかなく終わってしまったんですね・・・
これは、オデュッセウスを哀れんだ最高神ゼウスが、故郷に帰してやることを決定したから。
オデュッセウスを愛していた女神カリュプソは、この決定に悲しみましたが、
ゼウスの命令に逆らうことはできず、泣く泣くオデュッセウスを帰国させてやることになりました。
カリュプソがこのゼウスの決定をオデュッセウスに知らせてやるために探しに出かけると、
オデュッセウスは海辺で故郷を思い、泣きながら海を見つめていたそうです。
この名画は、その瞬間を描いたものなんですね〜
アルノルト・ベックリン「カリュプソー」(1883年)
こんなふうに、自分の元を離れて、故郷に帰りたがっているのを見たら、女神カリュプソも切ない思いをしたんじゃないんでしょうかね〜。
オデュッセウスの心もわかったカリュプソは、自分の島オーギュギアから船出させてやるために、筏(いかだ)を作らせます。
いかだ作りは4日間かかり、五日目にはいよいよオデュッセウスは故郷に向けて、船出することになりました。
その時の様子はこんなふうに書いてあります。
仙女(カリュプソ)は彼に風呂を使わせてから、香を焚き込めた衣装を着せ、黒々とした酒の皮袋、それにもう一つ、水を入れた大袋、さらに食料を詰めた袋もいかだに積み込み、味の良いおかずもたっぷり添えた。仙女(カリュプソ)は温かく穏やかに吹く順風を送り、オデュッセウスは順風に心楽しく帆を拡げた。
ー『オデュッセイア』第5歌より
う〜ん、女神カリュプソの気持ちを思うと、複雑なシーンです。
自分の好きな男性が、ウキウキしながら自分から離れていってしまうんですからね。
でも、カリュプソはもうどうすることもできないので、せめて自分にできる船旅の準備は全部してやって、オデュッセウスを送り出してやります。
女神カリュプソにも、このあとまた、いい男性が現れるといいね!!
と、つい現代の私たちは思ってしまうのですけど、この女神についてはこれ以上の神話はなかったりします。
残念!!
ハッピーエンドにさせてやりたい!
と、古代ギリシャの人たちも思ったのかどうかは知りませんが、
このホメロスの『オデュッセイア』以降の伝承では、女神カリュプソとオデュッセウスとの間には、子供が生まれた、という神話もあるんですよ。
でもなんとなく、はかない恋のエピソードの方がお話としてはキレイにまとまってる気もするかも?!
「パイレーツ・オブ・カリビアン」でもかなわぬ恋
そんなわけで、
そんな切ない恋のエピソードを持つ
ギリシャ神話の「女神カリュプソ」
の名前を引き継いだのが、
「パイレーツ・オブ・カリビアン」に登場する女神「カリプソ」
というわけですね〜
もともとの女神の恋がかなわぬ恋だったせいかどうか、
こちらの海賊たちの女神「カリプソ」も、恋は成就しないまま終わっちゃいました。
こちらの女神の恋の相手は、オデュッセウスじゃなくて、
「デイビー・ジョーンズ」!
あの、顔がタコみたいな気持ち悪〜いキャラクターです。
でも、もともとデイビー・ジョーンズもこんなタコだったわけじゃなくて、
映画の中でも一瞬その本当の姿を見せてくれるんですね〜
でも、愛する女神「カリプソ」の裏切りにあって、彼はこんな怪物になってしまいました!
だから、この映画の中の「カリプソ」は、愛した男が船出していってしまう、っていう切ないキャラクターじゃなくて、
どちらかというと、
自分を愛した男の人生を狂わせる、小悪魔的な女神ですねッ!
じゃあ、ちょっと元のギリシャ神話とはずいぶん違うんじゃない?
と思われるかもしれませんが、まあどちらの女神の恋も、はっきり言って成就していないので、
女神カリュプソのかなわない切ない恋の話は、ひきつがれているのかな〜?と思いますよ!!
それと、以下はちょっとネタバレにもなるので、まだ見てない人は飛ばして読んで欲しいのですが、
まあずいぶん前に公開された映画なので許してね!
映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」の最後では、女神カリプソが人間の女性の姿から解放されると、
ものすご〜く、でっかくなる!
巨大化する!
というシーンがあるのですが、
実はギリシャ神話でも、神様が本当の姿を表すと、その大きさに人間はびっくりする、
つまり、
神様の本当の姿は、でっかい!!
と考えられていたのです。
だから、最後の巨大化シーンは、確かにギリシャ神話で考えても、納得なわけです。
あれだけ大きくなると、人間の目から見ても、「女神が真の姿を現した」ってすぐに分かりますからね!
だから多分、「パイレーツ・オブ・カリビアン」のスタッフも、そこらへんのギリシャ神話をよくわかって映画を作ってたんだと思います!!
でも、あのあと現れるカニは・・・?
それについては、ギリシャ神話ではちょっと不明なので、「パイレーツ・オブ・カリビアン」のオリジナル・バージョン、と思ってくださいね〜
このカニの意味するものはなんなのか?
それはギリシャ神話には出てこなかったので、映画を見たみなさんで想像して楽しんでもらえればと思います!
ギリシャ神話の女神カリュプソも覚えてね〜
そういうわけで、本日は
「パイレーツ・オブ・カリビアン」に登場する「女神カリプソ」
というキャラクターが、
ギリシャ神話の「女神カリュプソ」から作られている!
っていうお話を紹介しました!
「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズがこれだけ世界的に大人気だと、
みんな「カリプソ」といえばもう、それを演じたナオミ・ハリスさんしか思い浮かばないくらいだと思いますが、
これからまたこの映画を見る機会があったら、
ぜひギリシャ神話のオリジナルの「女神カリュプソ」も思い出してあげてください!
愛するオデュッセウスを、泣く泣く送り出してやる女神の切ない恋に、キュンキュンしちゃってくださいね〜!!
『パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド』でカリプソを目撃してね!
というわけで本日ご紹介した
『パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド』
に登場する「カリプソ」を目撃したい方は、
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