もはやノーベル賞の季節の恒例行事となりました
「村上春樹、ノーベル賞受賞なるか?!」
の報道合戦。
そりゃ確かにノーベル賞はすごいけど、毎年毎年騒ぐのはもう止めればいいのに・・・
と思っている人は少なくないはず。
というより、ご本人自身がそもそも欲しいなんて思ってないのでは?
と思ってしまうのですが、そう思う理由はやはり住む場所のチョイスに垣間見られる性格でもありますよね。
わざわざ不便なギリシャの島に住んでた村上さんが、そんな栄誉を求めるかなあ?
ノーベル賞の季節になると、「村上春樹受賞か?」
今まで何回繰り返されたんでしょうね?
ノーベル文学賞発表の時期が近づいてくると、
「村上春樹ノーベル文学賞受賞なるか?」
と一斉報道が繰り返される光景。
これ、やめてあげた方が良くないですか?
私は村上作品を読み込んでいる「ハルキスト」ではないので、こんなこと言える立場じゃないですが、
村上さんが書いてるギリシャ・ヨーロッパ滞在記
『遠い太鼓』
を読むと、そういう名声や地位には関心がなさそうなパーソナリティーが見えてくるような気がするんですけど。
1986年から1989年という三年間にわたって、村上さんはギリシャなどヨーロッパに滞在しているんですが、
この時、村上さんはすでに
『風の歌を聴け』、『1973年のピンボール』、『羊をめぐる冒険』などを発表し、人気作家となっていました。
日本にそのままいれば「セレブ」的に名声を謳歌する生活が楽しめていたはずなのに、
それを離れて日本から遠い、自分のことを周りが誰も知らないヨーロッパで生活することを選んだ人なのですから、
創作に集中できる静かな生活を好む方なんだな〜という印象を持ちます。
でも、毎年毎年この季節になると「ノーベル賞か?」と騒がれるのって、ご本人としてはどうなんでしょう?
シーズンオフのギリシャの島は寂しい・・・
村上春樹さんが周りの人たちに詮索されずに創作を続けたい人なんだな、
というのがよく分かるのが、
『遠い太鼓』
に書かれている、ギリシャに滞在した時のエピソード。
村上さんが初めてギリシャで住まいを構えたのはスペツェス島。
ビーチリゾートの観光地ですが、村上さんが入ったのは観光シーズンが終わってからの10月半ば。
村上さん自身がはっきり書いている通り、ギリシャのシーズンオフの島なんて、「サビれてる」を通り越して「うら悲しい」場所ですよ。
10月にもなればバカンスを楽しんでいた観光客たちは一斉に帰って行ってしまいますし、
観光客相手に島でホテルやタヴェルナや店を開けていた人たちは、み〜んな商いをたたんで帰ってしまうんです。
フェリーもなくなり、バスもなくなり・・・そのため、エーゲ海の島々の人口は激減してしまうのです。
私も実はオフシーズンの12月に一度ギリシャを訪ねたことがあったのですが・・・
ギリシャも冬は寒い! コートを着ます。
そして、街には人影もまばら・・・
しかも、ギリシャは当然、日本に比べるといろんな面で不便なところです。
そんな不便なところが、シーズンオフなら人もいないのでなおさら不便になる。
いくらギリシャの観光地だと言ったって、そんなシーズンにわざわざギリシャに住むって・・・
村上さんは、そういう場所を選ぶ、そんな人なんだな、って思うエピソードです。
創作活動に打ち込むギリシャの島の日々
ギリシャのエーゲ海の島に行ったって、そんなに不便なシーズンオフでは何も楽しくなさそうでは?
と多くの人が思うでしょうが、
ご本人の記述を読む限り、創作活動にはうってつけだったみたいです。
ご本人が1日のスケジュールを書いているのですが・・・
・朝7時に起床 朝ごはん
・お仕事 〜11時頃まで
・奥様と散歩&買い物
・昼食
・お仕事 〜夕方6時頃まで
・夕食
と、ギリシャの寂しい不便な島で、猛烈にお仕事されている。
そうか、村上春樹さんというのは、こういうペースでお仕事されるのか・・・
と感心しきりのスケジュール。
そして自己管理能力の高さ。
これがあるから、長い間コンスタントに作品を発表し続けることができるのですね!
そして、こういうふうに創作に没頭するためには、ギリシャの人影もまばらな島は理想的な場所だったのかもしれない。
そう思います。
ご本人も創作に専念されたいとのお考え
というわけで、村上春樹さんのギリシャ・ヨーロッパ滞在記である「遠い太鼓」を読むと、
なんでわざわざギリシャの寂しい島に住んでお仕事されていたのか、わかるような気がするんですよね。
ご本人のインタビュー(2013年当時)を読むと、ああやっぱり、と納得するようなことをお話しされています。
村上春樹氏 公開インタビュー
僕は普段、あまり人前に出ません。テレビやラジオに出たことはないし、講演もまずやらない。普段は人前に出ないのは、普通の生活を送る普通の人間で、地下鉄やバスであちこち行くので、声を掛けられるのは困るんです。もともと、そういうことにあまり向いていません。この前は、自宅の近所をジョギングしていたら呼び止められ、「村上春樹の家はこの辺にありますか?」と聞かれ、「分からない」と言って逃げました。
文章を書くのが仕事だし、他の事にはあまり首を突っ込みたくない。僕のことはイリオモテヤマネコみたいに絶滅危惧種の動物と思っていただけたら、ありがたいです。
(http://www.jiji.com/jc/v4?id=201305murakamiharuki_int0001)
なるほど、こういう考え方なので、
「普通の生活を送る普通の人間」であるために一番いいのは、ギリシャの島みたいに誰も「村上春樹だ!」って騒ぐことなんてありえない場所だったのかも。
やっぱり住む場所の選び方で、その人の考え方はわかりますね。
それにしても、そうか、イリオモテヤマネコ・・・
でも確かに、イリオモテヤマネコも、周りで騒いだり生態系を乱してると、ヤマネコたちもご迷惑。
貴重なヤマネコだからといって、カメラを抱えて押しかけていては、逆に生命の危機にもなりかねません。
それと同じで、普段は「村上春樹」という作家さんがいるなと分かっていても、できるだけその生態を乱さず、時々出てくる新刊を楽しみに待つ、というのが一番正しい「大切にするやり方」なのかもしれませんね!
幸いなことに、そーっとしてると、コンスタントに話題作を世に出してきてくれますしね!
このペースで新作を読ませていただくためには、こちらにも我慢が必要なのかも?!
静かに書いていただきましょう
というわけで、個人的な見解ですが、
わざわざギリシャの寂しい島に住んで仕事をしたい村上春樹さんのような人が、
世界中で騒がれるノーベル賞をもらうなんて、そんなにありがたくないんじゃないかな〜
という話でした。
住む場所を選ぶ、ってみんなしていることですが、
生き方を選ぶ、ってことでもありますので、その人の考え方や人となりが出るところでもあります。
「好きな場所はどこですか?」っていう質問と一緒ですよね。
そんな村上春樹さんの人となりを知るのに、ギリシャ関連紀行文はかなり興味深いので、
お時間あったら是非目を通してみてくださいね〜!