ギリシャ神話に登場する
エレクトラ
という女性をご存知ですか?
アルゴスの王女なのですが、父親が母親に殺される!という悲劇に見舞われて、
父の仇として母親に復讐を決行する女性なのです!
そのため、父親を愛して母親を憎むファザコンの元祖のようにもなっているんですよ。
いったいどうしてそんなことに?
そんな数奇な運命の女性について、簡単にご紹介します!
もしこのエレクトラのことが気になったら、ぜひ読んでいってくださいね!
エレクトラはアガメムノン王の娘!
さて、今回ご紹介するギリシャ神話に登場する人物
エレクトラ
この人はどういう人かと言いますと、ギリシャ神話で名高い
アガメムノン王とその妻クリュタイメストラの娘
そう、要するに王女様ですね!
ですので、なんの不自由もない優雅な立場であるはずなのですが、
とある出来事がエレクトラの運命を狂わせていきます・・・
母クリュタイメストラが父アガメムノンを暗殺!
エレクトラの運命を大きく変えてしまった出来事というのは、ギリシャ神話で名高い
トロイア戦争
父親のアガメムノン王はこの戦争の際、ギリシャ軍の総大将としてトロイアに攻め入り、
故国アルゴスを10年もの間留守にしました。
その間、妻クリュタイメストラは、アイギストスと愛人関係になり、
アガメムノン王がやっとトロイアを攻め滅ぼして帰国すると・・・
なんと!
妻クリュタイメストラが愛人アイギストスと共謀して王を暗殺!!
妻が夫を殺す、と言う壮絶な殺人が行われたんですね。
怖い! 世のお父さん、これを知ったら安心して夜眠れなくなるかも?!
*ここら辺の詳しい話は、こちらの記事も合わせてどうぞ!
そして・・・
王を暗殺したクリュタイメストラとアイギストスは、アルゴスの支配者の座につくことになりました。
父アガメムノンの仇として、母親を暗殺!
こうしてアルゴス王アガメムノンは妻のクリュタイメストラと愛人のアイギストスに殺されてしまったわけなのですが、
これを怒ったのが、アガメムノン王の娘
エレクトラ!
そりゃそうですね、実の父親が殺されたんですから。
しかも母親は殺人者で、愛人が共犯です。
これは怒らないはずがない。
すると、母と愛人アイギストスは彼女に冷たい仕打ちを続けます。
そこに登場するのが、エレクトラの弟である
オレステス
彼は、父の暗殺当時、まだ幼かったので他国に預けられていたのですが、
成長した今、ひそかに
父の仇を討つために帰国!
父親の墓参りにきていたエレクトラは、偶然、帰国してきたオレステスに再会するのです!

そこで再会を喜んだエレクトラは、オレステスの敵討ちに協力することになり、
実の母であるクリュタイメストラと、愛人アイギストスを殺す手助けをしてやることになります!
姉と弟が、二人で実の母親を殺す・・・
普通だったらとても考えられない残酷な計画ですが、王である父親を殺された二人の怒りはそれほどに大きいものでした。
そうして、エレクトラの助けもあって、オレステスは見事、敵討ちに成功!
しかし、実の母親であるクリュタイメストラを殺したことで、
オレステスは罪の意識から、大変な苦しみを背負うことに・・・
というのが、大まかなお話の流れです。
*ここらへんの詳しいお話は、アイスキュロスの『オレステイア』、そしてエウリピデスの『オレステス』に登場しますので、よかったらぜひ読んでみてください!
『オレステス』は日本でも舞台化されていて、DVDも発売中です!
エレクトラが暗殺したわけじゃない・・・けど!
さて、こうして、
オレステスとエレクトラが共謀して母親を殺した
というと、
エレクトラも剣を取って戦ったようなイメージを持たれる方もいるかもしれませんが、
実はエレクトラは一切戦闘に加わっていません
ですので、エレクトラ自身が母親を暗殺したわけではないんですね。
このオレステスとエレクトラの物語は、悲劇作品でなんどもリメイクされているんですが、
エレクトラが殺した、というストーリーは一つも残ってません。
そこまでの大それた事をしでかすキャラクターとは、ギリシャ悲劇の世界では考えられていなかったみたいですね!
というより、古代ギリシャでは、女性は男性を戦場に送り出す側。
エレクトラは、弟オレステスを励まし、父親の仇である母親を討ち取るという戦いに送り出してやったので、
古代の感覚でいうと立派にその役割を果たしてやった、というところでしょうか。
そうして、姉と弟で協力して父親の仇である母親を殺した、と考えられていたようです。

エレクトラは元祖ファザコンなの?
このように、
エレクトラとオレステスの姉弟は、「父アガメムノンを殺した仇」として、
実の母親クリュタイメストラを殺してしまいます!
このギリシャ神話の有名なエピソードは、
現代の心理学の方にも大きなインスピレーションを与えることになりました。
心理学の研究によると、家族の中で娘というのは
「父を愛し、母親を憎む」
という傾向が見られるそうなのですが、
その傾向にエレクトラの名前をつけて、
「エレクトラ・コンプレックス」
と呼ぶのだそうです。
まあ、わっかりやすく言うと、
「ファザコン」
のことですね!
う〜ん確かに、家族の中でも母と娘というのは女性同士というのもあって、難しいところもありますよね。
そしてこの反対で、息子の方が
「母を愛し、父親を憎む」
という傾向を示す場合は、
同じくギリシャ神話に登場するオイディプス王が、実の母親と結婚して父親を殺してしまったことにちなんで
「エディプス・コンプレックス」
*「エディプス」はギリシャ神話の「オイディプス」のこと
と呼ばれています。こっちはまあ、要するに
「マザコン」
ですね!割とこっちの方が有名なような気もするなあ。
ところで、エレクトラの場合、父親を第一に考えて、母親を憎んで殺してしまいますから、
ファザコンといえばファザコンなんですが・・・
でもエレクトラは、父親を殺したのが母親、という通常の家庭環境とは違った異常な状態にあったし、
しかも母親は愛人と仲良くやってたりしたので、
こんな母親だと憎まれてもしょうがない気もします。
果たしてそんなに父親を愛していたんだかどうだかもよく分かりませんしね。
だから心理学のいう「エレクトラ・コンプレックス」を当てはめていいのかなぁ?
そして、その論理でいうと、息子であるオレステスは、
「エディプス・コンプレックス」
なはずで、父親よりも母クリュタイメストラを愛すべきなのですが、
父親の名誉のために母親を殺してしまっていますね。
ですから、これまた「エディプス・コンプレックス」じゃない気もするなあ。
と、実際のギリシャ神話は、心理学の理論とはちょっとずれてたりもします。
まあ、有名なギリシャ神話の登場人物を分かりやすく名前につけた、というところですかね。
*オイディプスの神話について詳しくは、こちらの記事も合わせてどうぞ!
現代によみがえった暗殺者エレクトラ!!
さて、こんなギリシャ神話の悲劇の王女
エレクトラ
しかし現代でもこの「エレクトラ」という名前は、
ギリシャだけでなくヨーロッパ全般で一般的な女性の名前として使われています。
神話を知っていると、「そんな不吉な名前を?」とつい思ってしまうのですが、あまり気にしないみたいですね。
そして、アメコミ原作のNetflixの大人気ドラマ
「デアデビル」
には、「エレクトラ」という名前のギリシャ人のキャラクターが登場していますよ。
ここに登場するエレクトラは、
「サイ」を武器に戦う、めっちゃ強い暗殺者!!
ギリシャ神話では弟を励ますだけだった女性が、現代のドラマでは武器を取って戦いまくります!!
まあ時代を超えて、いろんなイメージを引き起こさせる、
っていうのがギリシャ神話の一番すごいところですので、
実の弟に母親を殺す手伝いをしてしまった不幸な王女エレクトラは、
無敵の暗殺者として現代によみがえった
っていうのは、とっても面白いと思いませんか?
古代ギリシャと現代社会の女性のあり方の違いというのも面白いですよね!
ドラマの「デアデビル」を見るときは、
そういうところにも是非注目して見てもらえたら嬉しいです!!
そのほか、同じコミック原作でエレクトラが主人公の映画も製作されていますよ!
それが、ジェニファー・ガーナー主演の
『エレクトラ』
こちらも、また一味違ったかっこいいエレクトラが見れます!ご興味ある方はぜひ一度見てみてくださいね!
ギリシャ神話のエレクトラもよろしくね!
ということで、ギリシャ神話の登場人物から
エレクトラ
という女性をご紹介しました!
アルゴスの王女なのですが、父親が母親に殺される!という悲劇に見舞われて、
父の仇として母親に復讐を決行する、という数奇な運命の女性です。
そのため、父親を愛して母親を憎むファザコンの元祖のようにもなっているのですが、
エレクトラ本人は、いろんな事情もあって複雑な人。
理由がわかると、結構同情したくなっちゃう、忘れられない人物です!
Netflixのドラマ「デアデビル」に登場する女性暗殺者の名前としてもおなじみですので、
日本ではこちらの方が有名かもしれませんが、
その名前のもととなったギリシャ神話の悲劇の王女・エレクトラについてもぜひ覚えておいてあげてくださいね!