ギリシャ神話に登場する
クロノス神
ってご存知ですか?
ゼウス神やヘルメス神などに比べると日本では知名度は低いかもしれませんが、
実はゼウス神のお父さん!
ギリシャ神話ではとても重要な神様なんですね。
そんなクロノス神を簡単に分かりやすく、解説します!
興味ある方はぜひ読んでいってくださいね!
クロノス神ってどんな神様?
さて、それではギリシャ神話に登場する重要な神様
クロノス神
まずはその誕生からご紹介します!
クロノス神は、
という生まれ。
この両親から生まれた子供たちのうちで一番末っ子でした。
クロノスは父ウラノスを倒す!
このように、クロノス神はウラノスとガイアの間の子供だったのですが、
しかし父親のウラノスは、妻ガイアから生まれた
ヘカトンケイル(百手巨人)たち
を恐れて、生まれ出たこの怪物をガイア(大地)の奥に隠してしまいます。
そうなると、ガイアはせっかく生んだ子供をもう一度体に戻されて、苦しむことに。
これを怒ったガイアは、鋼鉄の大鎌を作り出し、
その大鎌でウラノスを倒すように子供たちに頼みます!
自分が産んだ子供たちに、自分の苦しみの原因を取り除いてくれるよう頼んだんですね。
しかしなんと、いきなり自分の夫、子供たちにとっては父親を殺す計画に乗り出すとは・・・
そんな〜極端な・・・
と常識人は思ってしまうかもしれませんが、ギリシャ神話の世界ではこんなことも起こってしまうのがすごいところ。
とはいえ、いきなり父親を殺すように言われた子供たちはみんな尻込みしますが、
そんな中・・・
末っ子のクロノスはその鎌を受け取り、父親を倒す役割に名乗り出るのです!
そうして、クロノスは、父親が母ガイアの元を訪れるのを待ち伏せて、
その鎌で父ウラノスの大事なところを切って捨ててしまいました
ということです・・・
え〜、そんな!
という展開ですが、そこはギリシャ神話。
こうしてクロノスは父を倒し、父に代わって支配者として君臨することになります。
ウラノスの時代の終わりについて詳しくは、こちらの記事も合わせてどうぞ!
*ついでにこの時生まれたのが、愛と美の女神アフロディテ! その誕生について詳しくは、こちらの記事も合わせてどうぞ!
クロノスはゼウス神に倒される!
さて、こうして世界の支配権を手にした
クロノス神
ですが、その支配は長いことは続きませんでした。
クロノスは、同じ両親から生まれた
レイア女神と結婚
ええ、近親婚なんですが、ギリシャ神話ではこれは多い話なのでスルー。
クロノスとレイアの間には、
という神々が生まれました。
しかし!
今度はクロノス神が、生まれた子供たちに支配権を奪われることを恐れて、
この子供たちが生まれると次々と飲み込んで行きました!
それに怒った妻のレイアは、
が生まれると、その子の代わりに大きな石を産着でくるんで、夫のクロノスに飲み込ませました!
こうして父親に飲み込まれることなく助かったゼウスは、クレタ島でこっそり育てられることに。
やがて成長したゼウスは、知恵の女神メティスの力を借りて、
飲み込まれた兄弟たちを吐き出させることに成功!
こうしてゼウスは、兄弟たちと共にクロノスとティタン神族との戦いに勝利し、
世界を支配する最高神として君臨することになるのです。
*ゼウスが父親を倒した経緯について詳しくは、こちらの記事を合わせてどうぞ!
*ゼウスとティタン神族の戦いについて詳しくは、こちらの記事を合わせてどうぞ!
クロノスの時代はいい時代だった?
というわけで、
こうして息子のゼウスに倒された
クロノス神って、ギリシャ神話の中で悪役なの?
という疑問を持たれる方もいるかもしれませんが、
どうもそういう事ではないようです。
ヘシオドスによると、この世界の時代は5つに分けられていて、
- クロノスの時代(黄金時代)・・・人間は労働しなくて良い。争いのない幸福な時代。
- ゼウスの時代(白銀時代)・・・人間は神を軽んじゼウスに滅ぼされた。
- 青銅の時代・・・人々が殺し合う世も末な時代。
- 英雄の時代・・・トロイア戦争などでアキレウス、オデュッセウスなどの英雄が活躍した時代
- 鉄の時代・・・ヘシオドスの生きている時代で、これまでで最悪の時代
となっています。
そうなると、クロノスの黄金時代に、人類は幸せだったことになるわけですよね。
それがだんだん劣化してきてしまった、という考え方です。
となると、クロノス神というのは、人類に多くの恩恵をもたらしてくれた素晴らしい神様、ということになるわけですので、
ゼウスに倒されたとはいえ、クロノス神というのは人類にとってありがたい神様、として信仰されていたのは間違いないようですよ!
この時代区分について詳しくは、ヘシオドスの『仕事と日』を読んでみてね!
オリンピアのクロノス信仰
そして、ゼウスの登場で影が薄くなってしまったとはいえ
クロノス神はオリンピック発祥の地・オリンピアで信仰されていたようですよ
オリンピア市はゼウス信仰の一大拠点で、
ゼウスに捧げる「オリンピア競技祭」が大々的に開催され、ギリシャ中から参加者が押し寄せました。
この「オリンピア競技祭」が、いわゆる「古代オリンピック」と呼ばれるもので、現代のオリンピックの先祖になるわけですが、
そんな競技祭が行われるオリンピアのゼウスの神域の中には、
「クロノスの森」
と呼ばれる森があります。
そのため、オリンピアの最初の支配者は、クロノス神だったと考えられています。
ですから、常にクロノス神の存在は意識されていたんじゃないでしょうか。
決してギリシャ神話の中の「悪役」とかそんなわけじゃないってことですね!
クロノスはケイロンのお父さん?!
そして、このクロノス神ですが、
ケンタウロスの賢者ケイロンのお父さん
という伝承もあるのです!
体が馬で上半身が人間のケンタウロスは、気性が荒くて野蛮な種族だと考えられていましたが、
ケイロンだけは賢く、穏やかで、アキレウスなど多くの英雄たちを教育した教育者でした。
このケイロンの誕生については、
クロノス神がオケアノスの娘であるニンフのピリュラ(菩提樹)を愛してしまったため、
奥さんのレイアの目をごまかすために馬の姿に身をやつして彼女と交わったということです。
こうしてケイロンは、半分馬のケンタウロス族の姿となって生まれた、という伝承があります。
ケイロンはそんなわけで、ケンタウロスながらとても知的で賢い性質だったのですね。
そんなケイロンの父親がクロノスということは、クロノスも賢いと思われていたのかな?
*ケイロンについて詳しくは、こちらの記事も合わせてどうぞ!
そのほか、クロノスの子供だという説があるのは、
鍛治の神ヘパイストス
通常はヘパイストスは、ヘラ女神が一人で生んだ、とされていますが、
実は、クロノスとヘラ女神の子だ、という別伝もあるんですね。
う〜ん、謎多き、クロノス神です。
クロノスの祭・クロニア祭
そして、このクロノス神に捧げるお祭りとして知られているのが
クロニア祭
アテナイ市などいくつかの市で行われていたようです。
時期としては収穫の後ですので、収穫祭のような意味合いだったのでしょうね。
その特徴としては、
市民も奴隷も平等となるどんちゃん騒ぎ!
奴隷と主人が対等に宴会を楽しんだり、
あるいは主人と奴隷の立場が逆になって、主人が奴隷に仕えたりもしたそうです!
クロノス神、意外と進歩的?
クロノスはローマのサトゥルヌスへ
さて、そんなクロノス神ですが、
後には他のギリシャの神々と同様に、ローマ神話へと受け入れられることになりました。
その時にローマでは、クロノス神は、
サトゥルヌス神(Saturnus)(*英語では Saturn(サターン))
と同一視されるようになりました。
このサトゥルヌス神は、ローマの農耕神。
クロノスがゼウスによって倒された後、イタリアに渡ってきたという伝承があるのです。
サトゥルヌスを迎え入れたのはヤヌス神(ローマの門の守護神。二つの頭を持つ。)で、
ローマ神話でもサトゥルヌスの時代は黄金時代に当たります。
確かに農耕の神様なら、食料も豊富でいい時代だったと考えられたんでしょうね。
ローマのカピトリウムの丘へ続く道の途中、フォロ・ロマーノの西端にサトゥルヌス神殿が建てられていて、
神殿内部には大鎌を持ったサトゥルヌス像が収められていたそうです。
ああ、この大鎌は・・・
と思って複雑になった方達、気持ちお察しします。
そしてこのサトゥルヌス神の祭礼は
サトゥルナリア祭
と呼ばれて、12月17日から1週間続いたそうです。
このお祭りでは贈り物の交換や、奴隷の自由、様々な遊び、盛大な飲み食いなどが行われたとか。
このため、
サトゥルナリア祭はクリスマスの起源
という説もあるんですよ!
*クリスマスとサトゥルナリア祭について詳しくは、こちらの記事も合わせてどうぞ!
クロノスと土星
そして、このクロノスの神話を受け継いだ
サトゥルヌス神は、土星に名前を与えています!
土星のラテン語名は「サトゥルヌス Saturnus」
英語名は「サターン Saturn」
と呼ばれています。
土星は太陽系では木星に次ぐ巨大な星ですが、
木星が「ジュピター」と、ゼウスを受け継ぐユピテルの名前を与えられているので、
一番は息子に譲ったということですね!
それも息子に倒された神話のまんまです!
そして土星には、62個もの衛星があるのですが、
名前が付いている53個のほとんどはギリシア神話由来の名前!
土星の主な衛星
- タイタン(ティタン)・・・最大の衛星。ゼウスと戦ったティタン神族の名前。
- レア(レイア)・・・二番目に大きい。クロノス神の妻、ゼウスたちの母の名前。
- ディオネ・・・ドドナの神託所では、ゼウスの妻とされている女神。ウラノス(天)とガイア(大地)の娘(*出生については諸説あり)。アプロディテの母親ともされる。
- テティス(テテュス)・・・ウラノス(天)とガイア(大地)の娘。ティタン神族。両親の同じオケアノス(大洋)と結婚し、三千人のオケアノスの娘たち(オケアニデス)と世界の川の神々を生んだ。
- ミマス、エンケラドゥス・・・ゼウスたちと戦ったギガンテス(巨人族)。
というように、みんな、ギリシャ神話由来!
星の世界のことを調べていくと、結局ギリシャ神話に戻ってくるのが面白いところです!
科学技術の最先端の宇宙の世界が、古のギリシャ神話とタッグを組んでいるんですね!!
次に夜空の土星を眺めるときには、ギリシャ神話のクロノス神のことを思い出してあげてください!
クロノス神も忘れないでね!
というわけで、
ギリシャ神話に登場する
クロノス神
について、簡単にご紹介しました!
日本では知名度は低い神様かもしれませんが、
実はゼウス神のお父さん!
という神話の世界では重要な神様。
ゼウスの前には人類に幸せな時代をもたらしてくれていたという神様でもあります。
次に天体観測して土星を見つけたときには、ぜひクロノス神のことを思い出してあげてくださいね!
そして、クリスマスの時にも!
この神様のことを、意外と身近に感じられるかもしれません!