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「シャイニング・ガール: 凛と輪廻と幻獣龍」過去と未来を行き来する巫女

更新日:

こんにちは、イレーネです。

本日は新刊書のご紹介。

吉行ギズモ著

「シャイニング・ガール: 凛と輪廻と幻獣龍」

ギリシャの予言する巫女に興味がある方なら、きっと面白い内容ですよ!

Josch13 / Pixabay

「シャイニング・ガール: 凛と輪廻と幻獣龍」について

今回読んだのは、AmazonのKindle版で出版されている新刊

シャイニング・ガール: 凛と輪廻と幻獣龍

Amazonの作品紹介:

架空映画シナリオ。
「私たち前世では家族でした!。」少女のその言葉にたじろぐ夫、息子と娘。母は10才で小学四年生、父で17才高校二年生、兄46才で冴えない中年男、娘は戦前生まれって!こんな家族ってアリ?。

滑稽で楽しく騒がしく、ちょっと変で愛すべき物語。
(本書はシナリオ形式で書かれています。)

この作品のあらすじを紹介すると・・・

主人公の凛ちゃんは、家庭の事情で福島の小学校に転校してきました。

そこで、「前世の家族」である夫・健人(17歳)、上の息子・一徳(56歳)、そして下の娘・百合子(70歳)を見つけ出します。

当然ながら、前世の記憶なんか無い健人と一徳は戸惑いますが、

前世の記憶を確信している凛ちゃんと、すでに痴呆を発症している百合子は、前世の家族との再会を喜びます。

でも、そんな奇妙な家族を、周囲が認めてくれるわけもなくて・・・

と、「前世の家族」と現在の世の中のズレから、物語が読者の想像のつかない方向へと進んでいきます。

前世を信じるかどうか、それは人によって考え方もありますが、

ひょっとしたら前世の家族と今世でも出会っているかもしれない?と思う人は多いと思います。

この作品は、そんな「輪廻」を、ちょっとユーモラスに、そして切なく物語っているファンタジーとなっています。

「輪廻」ってあるかも?と思ってる人は、手に取ってみると、きっと楽しく読むことができますよ〜

人には見えないものを見る巫女・日本とギリシャ

さて、そんな新刊

吉行ギズモ著「シャイニング・ガール: 凛と輪廻と幻獣龍」

ですが、

日本が舞台で、登場人物も全員日本人ですが、私が読むとギリシャ悲劇の世界にもダブって見えました。

なぜなら、主人公の凛ちゃんは、ギリシャ神話の世界ではおなじみの、予言する巫女と同じだからです。

凛ちゃんは、他の人たちには見えないものを見ることができます。

以前に他界した小学生の姿、そして、人の前世です。また、これから起きる未来も見えます。

もちろん、他の人たちは信じてはくれません。

この「巫」の力を発揮するためには、周りに信じてくれる人も必要なのですが、残念ながらいつも疑われてしまって、信じてはもらえません。

この悲しさは、ギリシャ悲劇で一番有名な巫女・カッサンドラと同じです。

カッサンドラは予言の神アポロンから予言の術を授かった、本物の巫女です。

しかし、神アポロンに背いたため、自分の予言を誰も信じてもらえなくなるという罰を与えられました。

故郷トロイアがギリシャ軍に滅ぼされることを知ったカッサンドラは、人々に警告をしますが、誰も信じてくれません。

でも結局、トロイアはカッサンドラの予言通りに、滅びてしまったのです。

このように、ギリシャ神話の巫女・カッサンドラは、

未来を予言する他に、過去に起きた事件も見ることができ、しかも、人には見ることのできない鬼神の姿も見ることができます。

カッサンドラの予言のシーンは、アイスキュロスの名作

アガメムノーン

アガメムノーン (岩波文庫)

に出てきます。

この中でカッサンドラは、周りの人たちには誰にも見えないビジョンを見て、

過去に起きたことを正確に言い当て、そしてこれから起きることもはっきりと予言します。

こういった「予言の力」は、カッサンドラと凛ちゃんに共通するものです。

ですから、この「シャイニング・ガール: 凛と輪廻と幻獣龍」を読むと、現代の日本の作品ですが、ギリシャ神話の世界に共通するような、巫女の活躍する物語だと気付かされるのです。

そのため、初めて読む作品でも、どこかで「あ〜、これ知っている」みたいな懐かしい感じも受けましたよ!

巫女・シャーマン・シャーマニズム

そんなふうに、この作品の主人公凛ちゃんは、現代の日本人の設定ですが、

古代ギリシャの巫女のような存在でもあり、すでにその時点で時間軸をはるかに超えた存在です。

それは古代ギリシャの巫女たちも同じで、過去と未来を見ることができる彼女たちは、通常の世界の時間軸を超えてしまっています。

その上、彼女たちは、本来は人間たちとは世界が隔たっているような、霊や鬼神の世界とも交信します。

巫女カッサンドラは、常に人間の現在の世界と、過去・未来・霊魂の世界を行き来して、人々を恐れさせています。

また、同じアイスキュロスの悲劇「エウメニデス」

アイスキュロス I ギリシア悲劇全集(1)

(*「エウメニデス」は単行本がないので、全集の中に入っています)

では、デルポイのアポロン神殿に勤める巫女が、他の人々には見えない神々・エリニュスたちを見て、びっくりして腰を抜かす、というシーンも登場します。

そしてもちろん、このデルポイのアポロン神殿に勤める巫女たちは、神アポロンの声を聞くことができる、と信じられていて、神アポロンの言葉を求める人々が、ギリシャ中から集まってきていたというのは歴史的事実でもあります。

このように、古代ギリシャでは、巫女たちが、神々の世界や過去・未来と行き来をして、

通常の人間たちに見えないもの見て、聞こえない声を聞いて、それを伝えてくれる、というふうに考えられていました。

「シャイニング・ガール: 凛と輪廻と幻獣龍」の凛ちゃんも、こういった巫女たちの系譜を受け継ぐ存在です。

こういう人たちを一般的に「シャーマン」と言います。

このような「シャーマン」たちが力を発揮する宗教を「シャーマニズム」と言い、ほぼ世界中で同様の宗教形態が認められています。

800px-chuonnasuan_the_last_shaman_of_the_oroqen_in_july_1994_photo_by_richard_noll
オロチョン族のシャーマン

古代ギリシャ社会も「シャーマニズム」が生きていた社会で、そのためカッサンドラのような巫女が悲劇に登場するのですね。

では、凛ちゃんはどうでしょう?

この作品の中の凛ちゃんは、現代の日本の社会で、どこか居心地が悪そうです。

信じてくれる人も少なくて、学校では孤立しています。

でも、本当に凛ちゃんのような存在は現代はいなくてもいいのでしょうか?

いえ、今でも都会の片隅で、「占い」と称して人の現在・過去・未来を見る人たちが活動していますし、その声を求める人たちが数多く集っているのもまぎれもない事実。

そしてこの作品でも、凛ちゃんの「巫女の力」によって、前世の家族は一時の救いも見ているのです。

古代のシャーマニズムは、現在でも生きている、そしてこれからも、すたれることはないだろう。

この作品を読むと、そんなふうに思わせられるのです。

「輪廻」はどうかな?

さて、そんなふうに、「シャイニング・ガール: 凛と輪廻と幻獣龍」は、

古代ギリシャのシャーマンが現代によみがえったような物語なのですが、

では、凛ちゃんが口にする「前世の家族」「来世の家族」というような概念は、古代ギリシャであったのでしょうか?

これに関しては、古代ギリシャでそういう「輪廻」のような考えがあった、かどうかは現在のところ不明です。

「不明」というのは、古代ギリシャでは宗教の一番大事なところは口外禁止、という考えもあったので、

現代では結局突き止めることができないと思われるからなんですね。

でも実はあったんじゃないか、という説もありますので、本当のところはわかりません。

でも、凛ちゃんのように、過去と現在と未来を見える人なら、

当然ながら、その前の生、その先の生、までも見ることができても良さそうなので、

実は古代ギリシャでもあったとしても不思議ではありませんね。

巫女・カッサンドラは、「アガメムノーン」の中で、自分の死ぬ様子もビジョンで見ています。

未来が正確に見える巫女なら、当然自分の死も見えるはずですよね。

では、死んだ後は見えていたのか??

あるいは生まれる前は??

残念ながらアイスキュロスはそこまでは書いていないので、この点まではわからないのですが・・・

でも、自分の肉親や親しい人たちと、この世で別れてもまた会いたいと思う人は多いはず。

これは宗教の差、時代の差、地域の差を超えて、人間の根源的な欲求と言ってもいいんじゃないのかな。

だからみんな本当は、凛ちゃんみたいに自分の前世の家族に見つけて欲しい、と思ってるはず。

そういう意味では、古代ギリシャの巫女たちも、そういう力を求められていてもおかしくないな、とこの作品を読んで思いました。

MemoryCatcher / Pixabay

時間と空間を超えろ!

というわけで、本日ご紹介した

吉行ギズモ著「シャイニング・ガール: 凛と輪廻と幻獣龍」

は、時代設定も場所も全く異なるのですが、どこかギリシャ神話の世界を思わせる作品でもありました。

古代ギリシャの巫女たちも、期待されていたのは通常の人間には絶対不可能な、時間と場所の制限を超えて真実を見る力。

この作品の主人公凛ちゃんも、現代日本社会にありながら、時間と場所の制限を軽々と超えていく力があります。

そういう力が実在すると信じるかどうかはともかく、心のどこかにそういう欲求がもしあるなら、

(そして人間というのは多くがそういう欲求を持つものですが)

この作品の世界はきっと楽しめると思いますよ!

そして当然、古代ギリシャの神話世界も楽しめるはずです!

そういう世界観を楽しんでいると、あなたの前にも、空飛ぶドラゴンが現れるかもよ!?

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