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イレーネの推しマンガ

「イムリ」と古代ギリシャ:古代戦争、夢、社会制度

またもう一つ、はまったマンガをご紹介!

三宅乱丈さんの

「イムリ」

本当に面白い!!

これだけのファンタジー、そうそう読めない!

精巧に作り上げられた世界観に圧倒され、そして古代ギリシャとの共通点もちらほら・・・

もう今、毎日「イムリ」漬けです!

三宅乱丈「イムリ」は壮大なファンタジー!

もうこのマンガ、寝不足になりながらも続きが読みたくて読みたくて、気がついたら一気読みでしたよ!

三宅乱丈さんの

「イムリ」!!

簡単にあらすじを説明すると・・・

ルーンとマージという、架空の二つの星が舞台のSFファンタジー。

支配者層「カーマ」、奴隷民「イコル」、ルーンの原住民「イムリ」という三つの民族が、

支配権と自由を求めてせめぎあう世界。

ルーンは4千年前の古代戦争の後凍結され、その時「カーマ」と「イムリ」の間に何があったのか、今はもう人々の記憶から失われて分からなくなってしまった。

ルーンが凍結された後、「カーマ」は隣の星マージに移住して、階級社会を形成して暮らしていたが、

「カーマ」は故郷の星ルーンでなくては子供が生まれないため、ルーンの凍結が溶けてきた現在帰還を進めている。

でもそこは、ルーンの原住民「イムリ」が暮らす世界。

「カーマ」の支配者層である呪師の子・デュルクは、呪師候補生としてルーンを訪れることになるのだが、

そこでデュルクの運命は大きく変わっていく・・・

っていうのが第1巻のほんのさわりなのですが、あまり話してしまうと読んだ時に面白くなくなってしまうので、

あとは実際にマンガを読んで壮大な「イムリ」の世界を体感して欲しいと思います!

ファンタジー史に連なる日本発ハイ・ファンタジー

この第1巻を最初読んだ時は、この後の展開が全く読めなくて、

最初に呪師の学校にデュルクが通うことになるので、あれ?

ハリー・ポッター?

と思ったら、

派手なタトゥーを入れたルーンの原住民「イムリ」が出てきて、

アバター?

とも一瞬思ったけど、

読み進めると、それらとも全く違う、独自の世界観を持つ壮大なハイ・ファンタジーなのでした!

ここまで精密に地理や民族、社会制度まで作り上げる世界は

上橋菜穂子さんの傑作

「守り人シリーズ」

を思い起こさせるんだけど、

全く違う星を舞台にして、宇宙船や独特の生物まで作り上げて、

カーマの「侵犯術」のようなサイキックな要素や、また人間の暗い部分も残酷に描いているところから、

上橋さんの作品よりは大人の読者向けだに思えますし、

全く独自の「三宅乱丈ワールド」と言えると思うんですよね。

ここまで全く違う世界を一から独自に作り上げるハイ・ファンタジーは、

作者の知力を相当のレベルで要求すると思うんですが、

この「イムリ」は難なくそのレベルをクリア。

また一つ、日本発のファンタジーの傑作が生まれたな〜と感動するレベルの作品なのです!

古代ギリシャの神話的世界

これまでのファンタジーが、多かれ少なかれ古代神話の世界、

とりわけギリシャ神話の世界の題材をちょこちょこ取り入れて世界を組み立てていたように、

「イムリ」も読んでいくと、「あ〜分かる分かる」っていう古代ギリシャ的要素が入っていたりします。

まず最初にそれを思ったのが、

「カーマ」と「イムリ」の古代の大戦争

4千年も前のことなので、今では「カーマ」の持つ古代文献にわずかに残っているのと、

文字を持たない「イムリ」が口承で伝えてきた詩の中でしかわかりません。

これの何が古代ギリシャかというと、言わずと知れた古代の叙事詩

『イリアス』

ここに描かれている「トロイア戦争」は、遠い昔の出来事で、ずっと神話上だけの話だと思われていました。

しかし、それが古代に実際に起きたと信じていたのが、かの有名なシュリーマン。

見事、小アジアでそれと思しき古代遺跡を発掘し、一躍時の人となります

シュリーマンが発掘した古代都市が本当に「イリアス」のトロイアなのかどうかは今も諸説ありますが、

ずっと昔に起きた古代戦争で、長いあいだ口伝えで伝承され、古代の文献に書き残されていた、

というあたり、やっぱり古代ギリシャ神話の世界を思い起こさせますよね!

「イムリ」の夢と古代ギリシャ人の夢

そして「イムリ」の世界で面白いなあ〜と思うのは、

原住民の「イムリ」たちは双子で生まれて、

お互いに夢で情報を知らせ合う

というところです。

「イムリ」たちにとって、夢は単なる幻や潜在意識の見せる残像ではなくて、

実際に起きた出来事を正確に伝える情報伝達ツールでもあります。

こういうふうに、夢の持つ力を信じて利用していた、というのは、

古代ギリシャ人も同じなのです。

以前の記事でも書きましたが、古代ギリシャ人にとって夢は、

自分の脳が勝手に見せるものではなくて、神々の世界から送られる予兆のようなもので、神聖なものだったのです。

ギリシャ人は自分が見た夢を軽く扱うようなことはせず、そこから神の意志を読み取ろうとしていました。

これは、アイヌの人たちも同じだったようです。

アイヌの人たちも夢を予言のようなものと思っていたということは、

人類はその昔、電気もテレビもない頃は、夢を何らかの情報伝達手段としていたのではないでしょうか。

そう思うと、「イムリ」たちが、正確に夢を見る、という設定は、

荒唐無稽なものではなくて、古代からの人間の知恵の一部として、すんなりと頭に入ってくるような気がします。

「イムリ」と古代ギリシャの社会制度

そしてマンガ「イムリ」の設定の中で一番心が傷むのは、

支配者層「カーマ」は、「イコル」という奴隷民を使っている

というところです。

「イコル」たちは「カーマ」に侵犯術をかけられて、自分本来の心を失った奴隷となっています。

そして何を隠そう、古代ギリシャ社会も奴隷たちに支えられた社会でした。

かのソクラテスだってアリストテレスだって、奴隷たちがいる社会で哲学をしていたわけですよね。

奴隷たちは売り買いされ、「生命のある所有物」としてやり取りされていたんです。

これは古代ローマになっても同じ。

かの有名な「スパルタカス」だってローマの奴隷でした。

映画「スパルタカス」 劇場用オリジナル予告篇日本語字幕付き

というか、奴隷制は古代世界だけの話じゃなくて、人類史ではつい最近と言っていいほどまで、奴隷制を行っていたのですよね。

現代だって、すべての人類が「自由民である」とは言い難いところはあるはずです。

そういう人類史があるので、「イムリ」の中に出てくる奴隷民「イコル」や、侵犯術によって「奴隷化」されていく登場人物を見て、多くの人たちは心を揺さぶられてしまうのではないでしょうか。

そんなふうに「奴隷化」する「カーマ」たちに対して、自然と拒否反応を覚えてしまうのですよね。

三宅乱丈さんはすごい!

というわけで、

マンガ「イムリ」は、古代ギリシャを彷彿とさせるような、古代的・神話的要素が上手く組み合わされて、独自の世界観を作り上げている作品です。

その精緻に作り上げられた世界は、読んでいても、二度・三度と読み返さないとわからないところが満載で、とんでもない読み応えです!

これを頭の中で全部作り上げた作者の三宅乱丈さんは本当にすごい!!

しかも多分、「古代ギリシャを彷彿とさせるような、古代的・神話的要素」って、全部分かってて使いこなしてるんですよね。

「守り人シリーズ」の上橋菜穂子さんは文化人類学者ですので、そういう世界観にもともと精通していたわけですが、

この三宅乱丈さんも相当、そこらへんの知識も深い方だとお見受けします。

とにかく、日本の鬼才なのは間違いないな〜

そんな三宅乱丈さんが描く「イムリ」現在19巻まで発売中!

ぜひ一度、読んでみてください!

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