さて、本日もギリシャ神話のお話です。
日本ではギリシャ神話がよく好まれている方だと思うんですが、
実はギリシャ神話って、現代人が読むと
あっけにとられるような身もフタもない話
がよく出てくるんですよね〜
「本当は残酷な〜」
シリーズに余裕でランクインですね。
ですので、「ギリシャ神話が好きなんです」ってキラキラした瞳で言ってくださる方たちに、ギリシャ神話のえげつない話をするのは気がひけるのですが、まあお話としてはそのえげつなさ加減が、結構面白かったりします。
というわけで、本日は勝手に、
ギリシャ神話に出てくる悪女ベスト3
をランキングしてみようと思います。
この悪女達の話を読むと、男性たちは女性不信になるかもよ?!
ギリシャ神話に出てくる悪女・第3位
さあ、それではギリシャ神話に出てくる悪女、
まずご紹介したいのは第3位!
栄えある第3位に選ばれたのは・・・
パイドラ
です!!
(*長母音を入れると本来は「パイドラー」と読んでいたそうです)
パイドラは、クレタ島のミノス王とパシパエとの間の娘
「アリアドネの糸」
で有名な、アリアドネの姉妹です。
クレタ島にテセウスがミノタウロス退治にやってきた時
アリアドネは糸玉を貸して、無事にラビリンス(迷宮)から出られるようにしてやったんですね。
それはアリアドネがテセウスに恋したから尽くしてやったんですが、
あっさりテセウスはアリアドネを捨ててしまったと伝えられています。
アリアドネを連れてクレタ島からアテナイに帰る途中に立ち寄ったナクソス島で、
アリアドネだけ置き去りにしてしまったそうな。
テセウスってひどいですよね!
でも、アリアドネはその後、ディオニュソス神に愛されて、花嫁になった、という神話もあります。
*アリアドネの神話について詳しくは、こちらの過去記事をどうぞ!
そしてテセウスはその後に、
アリアドネの姉妹のパイドラと結婚した
と伝わっています。
姉妹間で乗り換えるとか、サイテーだな!と思うけど・・・
まあ、ギリシャ神話だと、そういう情け容赦ない話が多くって!
さて、そのパイドラと結婚した時、テセウスにはすでに、アマゾンのヒッポリュテとの間に、
ヒッポリュトス
という息子がいました。
このヒッポリュトスは大変な美青年で、
パイドラは義理の息子のヒッポリュトスに熱烈に恋してしまいます!
そしてヒッポリュトスに言い寄るのですが、彼は大変な潔癖性の青年で、
義理の母でありながら自分に愛をささやくパイドラに激怒して、ひどい言い方をして拒絶します。
その激しい拒絶に傷ついたパイドラは、夫テセウスに、
「ヒッポリュトスが自分を横恋慕して乱暴したので、辛いので死にます」
という意味の置き手紙をして、自殺してしまうのです。
妻の死後、この手紙を読んだテセウスは、当然ながらヒッポリュトスに激怒。
なんと、自分の実の息子なのに、
死の呪い
をかけてしまいます。
その呪いのために、ヒッポリュトスは馬に引きずられて若い命を散らすこととなってしまいました・・・

ローレンス・アルマ=タデマ『ヒッポリュトスの死』
そう、パイドラは・・・
フラれた腹いせに、ヒッポリュトスを絶体絶命の危機に陥れる嘘をついて、死に追いやるという仕返しをした・・・
転んでもただでは起きない悪い女
なのです!
まあこれは、ヒッポリュトスも、好意を示されたのに、手ひどい拒絶をしたからいけなかったんですが。
そんなわけで、
パイドラはちょっとかわいそうなので、悪女としては第3位です。
とは言っても、相手の命取ってますから、怖いといえば怖い女ですよね。
一途な女性でも、手ひどい振られ方をすると、何をするか分からない?!
世の中のモテる男女のみなさんも、くれぐれも相手をお断りするときには、恨まれないように気をつけましょうね〜!
*このパイドラの詳しい話は、エウリピデス作の『ヒッポリュトス』を読んでくださいね!
こちらの全集に収録されていますよ!
ギリシャ神話に出てくる悪女・第2位
さて、ギリシャ神話に出てくる悪女、堂々の第2位は、
ギリシャ神話中でも最強クラスの魔女・メデイア
です!
(*長母音を入れると、本来は「メーデイア」という名前ですよ)
メデイアは黒海沿岸にあった王国コルキスの王女
本来なら王女として何不自由ない生活を保障されていた彼女の人生を狂わせたのは、
金羊皮を求めて「アルゴ船」に乗ってコルキスにやってきた、
英雄イアソン!
*英雄イアソンについて、詳しくはこちらの過去記事もご参照ください
イアソンに恋してしまったメディアは、国の宝である金羊皮をイアソンに渡してしまい、
すべてを捨ててイアソンとともに国を出ます
国王であるお父さんを裏切った上に、しかも!実は逃げる際、実の弟を殺して逃げてます。
その後いろいろあって、二人はギリシャのコリントスに落ち着き、結婚して子供も二人も儲けたのですが・・・
しかし!
色男イアソンは、コリントスの王女との間に縁談が!
そうなると、当然王女と結婚すれば後々には王になれるわけですから、
イアソンにとっては、またとない良い話。
でも、既に妻のメデイアがいる妻子持ちの身だったのですが・・・
あっさりとメディアを捨て、コリントスの王女と結婚することに
二人の子供までいるのに捨てられてしまったメディアは怒りに燃えます。
ここからが、彼女の魔女としての本領発揮!
得意の魔術を使って
コリントスの王と王女を惨殺
そして最後には、
イアソンとの間の自分の子供たちも殺してしまいます
そして、絶望するイアソンを残して逃げて行ってしまうのです・・・

(イーヴリン・ド・モーガン『メーデイア』)
どうですか、この
ダンナの浮気相手を親子共々殺し、
果ては自分の子供まで殺してしまうという徹底ぶり。
しかも、元ダンナのイアソンを殺さないのは、生きたまま地獄を味あわせるため・・・
子供を亡くした親の苦しみを生涯味あわせるためだった、
というサディスト(?)
でもやっぱり、メディアを悪女に変えたのは、
愛するダンナの裏切り
というところもあって、ちょっとかわいそうなので、第2位です。
今でも芸能人の方々が、長いこと自分を支えてくれた奥さんを裏切って、若い女性に乗り換える、ってゴシップ誌を騒がせることがよくありますが、やっぱり裏切りの代償は高くつく、と覚えておいたほうが良さそうですね!
*メディアの詳しい話は、こちらの過去記事をどうぞ!
*エウリピデス作の『メーデイア』も、こちらの全集に収録されていますよ! 合わせてどうぞ!
ギリシャ神話に出てくる悪女・第1位
そして、ギリシャ神話に出てくる悪女、
栄えある(?)第1位は・・・
アガメムノン王の妻・クリュタイメストラ
です!!
彼女の夫のアガメムノン王は、トロイア戦争で、総大将としてギリシャ勢を率いた英雄です。
しかし、ご存知の通り、トロイア戦争は長引きに長引き、
なんと10年もの間、妻クリュタイメストラのいる家を空けました。
その間・・・
クリュタイメストラは、愛人アイギストスを家に引き込んで、密かに
アガメムノン暗殺計画
を練っていたのです!
ようやっとトロイア戦争が終わり、アガメムノンが10年ぶりに家に帰ると・・・
妻クリュタイメストラは喜んで迎え、風呂で旅の疲れを流すように勧めます。
そして何も知らないアガメムノンが風呂場で裸になったところで・・・
投網で絡めとって刺し殺してしまいました!

ジョン・コリア「クリュタイムネーストラー」
風呂場で丸腰になった時を狙うとは、卑怯な!
しかも、
愛人と共謀して夫を殺すとは、あっぱれな悪女ぶり。
やっぱり、クリュタイメストラが、ギリシャ神話中のナンバーワンの悪女に決定ですね!!
世のお父さん方、今夜からお風呂に入るときには油断しすぎないように!
丸腰な上に、風呂場は滑りやすいですぞ・・・
でも、クリュタイメストラにも殺す理由はあって、実はアガメムノンがトロイア戦争に行く前に、可愛がっていた娘のイピゲネイアを神への生贄として殺されてしまったことを恨んでのことだったと言われています。
子供を殺されて復讐に及んだということですね!
まあとにかく、復讐されるような悪いことをしないように、気をつけて生きたいものです!
*クリュタイメストラの詳しい話は、アイスキュロス作の『アガメムノン』を読んでみてくださいね!
おしまい!
というわけで、
以上、ギリシャ神話の悪女ベスト3でした!
いかがでした?
どれも男性を震え上がらせるようなことをしでかした悪女ばかり。
でも、この三人以外にも、ギリシャ神話には
「え〜?そんなことすんの?」
「ヒド〜〜〜」
と、
現代の私たちが引いてしまうような強烈キャラ
がたくさんいますので、
気になった方は自分なりのベスト5、いやベスト10をぜひリストアップしてみてくださいね!
しかし、こんな怖い女性の話ばかりをしていると、
ギリシャ神話って怖いものだから、それを好きな人たちって、残酷なんじゃないの?
と誤解を受けそうですが・・・
ちなみに、私イレーネはギリシャ神話を読んでも、そんな大それた行いに及んだことはありませんよ〜
ホラー映画見て本当に事件を起こすわけないのと同じです(笑)
ですから、怖いギリシャ神話を語り伝えていたギリシャ人って、残酷な人なの? って思う方もいるかもしれませんが、
古代ギリシャ人もそんな感覚でお話を楽しんでいたのかもしれませんよ!?
「ギリシャ人ってそんな人たちなの?!」と恐れることなく、
ギリシャ神話の悪女達の世界を楽しんでくださいね!
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