当ブログは広告を掲載しています

ギリシャにまつわる本

「ギリシャ人の真実」を読んでみた

ギリシャって、歴史・神話の国、美しい建築・美術品の国・・・

いろいろなイメージがありますが、やはり日本人にとっては、まだまだ遠い国でもあります。

そして今現在のニュースで見るギリシャは、

「経済危機の国」

でも、それ以上の詳しい情報は、なかなか入ってきません。

現在のギリシャの危機は、どうしてこうなったの?

この状況を、ギリシャの人たちは、どう思ってるの?

そんな疑問を持ったら、手にとって読んでみて欲しいのが

柳田富美子著『ギリシャ人の真実』

本日はこの本についてご紹介します!

著者はギリシャ語通訳

というわけで本日ご紹介するのは

『ギリシャ人の真実』

この本を書かれたのは、

柳田富美子さん

という、日本では珍しいギリシャ語の通訳・翻訳・そして語学講師の方です。

アテネ大学でギリシャ語を学んで、そのあとはアテネの日本人学校で働いていらしたそうです。

長年、日本とギリシャを行き来して仕事をされてきたそうで、ギリシャ人の友人・仕事仲間も多いそうです。

現在は日本で「ギリシャプラザ」という語学学校を主宰されているそうです。

こういう方が書いた本であれば、現在のギリシャの状況について情報を得るのにうってつけですね。

日本にいるとなかなか分からないギリシャの実情のお話が、この本を読むとわかってきます。

ギリシャ危機で何が変わったのか

この本の中では、

著者であるギリシャの知識・経験豊富な柳田さんが、

現地のギリシャ人の話や、ご自身が実際現地で感じたことを織り交ぜて、現在のギリシャ危機について解説してくれています。

ですので、よくニュースで流れるような、借金の金額を繰り返すような報道とは、情報の深みが違いますね!

この本が出版されたのが2013年ですので、残念ながら情報がその時点までしかないのですが、

2011年、2012年にギリシャにやってきた危機で、どう変わったのか

ということを詳しくすることができます。

柳田さんの解説によると・・・

年金基金が崩壊寸前で国の財政は実質的に破綻していて、もうどうにもこうにもならない。危機に陥る数年前からそう言われ続けていたし、ギリシャ国内ではテレビの討論番組や新聞を通して警鐘を鳴らす声もあったが、国民も政府もそれには真剣に耳を傾けていなかった。なんとかなる、誰かがなんとかしてくれる・・・。ほとんどの人はそう思っていた。

う〜ん、この危機意識の薄さ・・・

あれ、でも、この状況って今の日本じゃない?ってもちょっと思ったり。

日本だって、立派な借金大国ですから、他人事とも思えませんよ。

ですから、その後ギリシャに何が起こったのか、よく知っておく必要があると思いますが、このようになったそうです。

それがわずか数ヶ月後には、みるみる給料、手当、年金が減りはじめ、新しい税金が課せられ、企業は倒産、民間企業で解雇が増え、失業率がどんどん上がり、2013年5月の失業率は27.6%になった。5年前(2008年)には7.3%だったことからも、わずか数年での急激な悪化だということがわかる。25歳未満の若者にいたっては64.9%という。国の金庫は空っぽで、EUやIMFからの融資をつないでの綱渡りのやりくりとなっている。

以前はホームレスといえば外国人ばかりだったのが、ギリシャ人のホームレスが見られるようにもなった。ホームレスのために教会や市役所が炊き出しや配給をしているが、そこにギリシャ人も並ぶようになり、列の中にギリシャ人高齢者が目につく。
・・・・・
子や孫の経済的重荷になっているからと自殺する人、住宅ローンを支払えなくなって家を手放す人、事業に失敗して車をはじめ全ての財産を手放す人、ギリシャには将来がないからと外国への移住をめざす若者やファミリーも増え続けている。

う〜ん、深刻ですね。

日本がこうなったら、本当にたまらんなあ〜・・・

若者の失業率が異常に高いのは、社会にとっても本当に危機的な状況だというのがわかります。

新しい次の世代が国を支えるどころじゃなくなってるんですからね〜

危機以前40年間の四つの転換点

でも、ギリシャ経済がここまで危機的な状況に行くつくまでには、一体どういう経緯があったんだろう?

そういう疑問に答えるために、柳田さんは過去40年にさかのぼって、4つの転換点をあげてわかりやすく解説してくれています。

さすが長年ギリシャに関わってきた知識と経験が違いますね!

転換点1) 1974年の「政体移行」

これは私もうっすらとしか知識しかなかったのですが、1967年から1974年まで、

ギリシャは軍事独裁政権下

にあったということです。

つまり、民主主義じゃなかったんですよね。

その後、1974年に軍事政権が倒れて共和国家となりました。

転換点2) 1981年の政権交代

そしてギリシャはその後、

1981年にはEC(EUの前身)の一員となりました

だから、ギリシャが「ヨーロッパの一員」になったのなんて、ほんの最近のことなんですね!

この時、政権についたのは、

パソク(全ギリシャ社会主義運動)党

うん?

そうです、社会主義の政党ではないですか。

「労働者の味方」の党は世界最強の労働組合を守りまくり、

ここで大甘な社会の基盤が出来上がったんだな・・・

そして、ECからは補助金も流れ込み、政治家はその補助金を使って、公務員を増やしていった・・・

投票の見返りに公務員職を斡旋してやってたんですって。

これが、ギリシャの異常な数の公務員のカラクリ

まあ、社会主義国は、国民全員が公務員だったわけですから。

で、結局国が立ち行かなくなって、現在はほとんどの国が市場経済へと移行しました。

でも実は、ギリシャはうまく市場経済にも移行できていなかったのでは・・・?

転換点3) 2001年〜04年。ユーロ導入からアテネ五輪

そして、次の転換点は2001年!!

ギリシャはユーロを通貨として導入します

しかし、これが一番痛かったんだな〜

突然物価が上がり、そしてユーロの信用貸しでさらに借金は膨れていくことに。

実体経済とかけ離れた通貨を持つことは、実は恐ろしい。

でも、その恐ろしさに対して警戒心を緩めさせたのが、

2004年のアテネ・オリンピック景気

インフラをどんどん整備して、どんどんお金は湯水のように使われた。

まさに、

ギリシャ・バブル!!

これって、日本人なら誰しもが、耳が痛いところでもあるでしょう?

そして当然バブルははじけ・・・

転換点4) 2010年からの経済危機

そのあとは、皆さんご存知のように、2008年にリーマンショックが世界を襲い、

世界的に経済は冷え込むことになります。

そして、ギリシャも、

2010年には、経済危機が明らかに

この時についての柳田さんの文章が切ない

お金に浮かれた放漫な日々、それがある日突然お金から見放されると、ヨーロッパから背を向けられ、世界中から冷たい視線で見られ、国も国民も素っ裸にされて信頼も自信も失い、生活を脅かされる過酷な状況に置かれてしまった。

切ないなあ〜

でも、これって、日本だって・・・

バブル経済で浮かれまくって、世界でお金をばらまいて、その後長い事、いや、今だって、緊縮・増税で暮らしているんですからね〜。

そう、そして今だって、とんでもない規模の借金を抱えているのです。

このギリシャの状況、とても笑えないですよ。

ギリシャ危機の原因とは?

まあ、そんな風に、日本人にも他人事とは思えないところはたくさんあるんですが、

ギリシャの状況がこんな風に、行き着くところまで来てしまったのは、

ギリシャ独特の事情があるようです

やっぱり国民性?

柳田さんの豊富なギリシャ人脈によって、ギリシャ人がこの危機をどう捉えて、どう生活しているのかが詳しく語られていて、それがこの本を読む上で一番興味深かったところです。

私がギリシャらしくて面白いな〜と思ったのは、次の点

ギリシャ人の脱税

ギリシャでは領収書を切らなかったりして、

脱税が横行

しているんだそうです。

政治家を信用していないのと、徹底した個人主義。

でも、税金を納めなかったら、政府を賄うことはできないわけで・・・

この状況は危機で変わってきてるみたいですけど、さすがしたたかなギリシャ人!

公務員天国

これはさんざん報道もされてきたから知ってはいるんですけど。

ギリシャが公務員天国

という話。

国民の4〜5人に一人が公務員かそれに準じる職、ってむちゃくちゃでしょ!

まさに、市場主義というよりは社会主義国家に近い

そりゃ、EUに公務員減らせと言われちゃうわけだけど、どうなんでしょうね。

公務員は様々な特典で優遇されているそうですので、その人参がある限り、またみんな公務員に群がることになりそうだけど・・・

コネ社会

ある意味、日本の田舎に似てるな〜と思ったのは、

「コネ社会」

買い物するでも何するでも、コネを頼って、安くしてもらったりして、今でもコネが社会の重要な基盤なのです。

人々が孤立しないからいい面もあるけれど、やっぱりこればっかりやってると市場が育たないよね・・・

産業がない

ギリシャは海運業、農業、そして観光業・・・くらいしかない、というのは分かっていたけど、

やはり絶望的に産業がない!

それは補助金に頼り切って、国民が産業を発展させる努力を怠ってきたことが背景にあるようです。

現在の借金地獄を抜け出すためには、何か稼げる産業を育てて返済していく以外ないのですがね・・・

ギリシャ愛に溢れた目

と、いうような、ギリシャ社会の問題点を指摘しつつも、

著者の柳田さんのギリシャを見る目は愛に溢れています

ありきたりの報道のように、ギリシャを非難しすぎることもなく、かといって擁護しすぎることもなく・・・

ギリシャ人の友人でも言ってることが矛盾していれば指摘もしていて、なかなか辛辣なところもあります。

(ギリシャ人に向かって、日本人はずっとそういう税金(ギリシャで課税され始めたもの)を払ってるよ、と言うところなど)

この本の後半は、ギリシャという国の紹介にも当てられているので、経済危機ばかりではなくて、ギリシャがどういうところなのか、知ってもらうのも本を書いた目的のようですよ。

ギリシャっていうのは、よく知れば知るほど、憎めない魅力を持った国ですからね・・・

経済問題にしても、「おい、それ、おかしいだろ」と突っ込みたくなることが山ほどあるんですが、まあギリシャだから仕方ないか、って許したくなっちゃうというか。

そして、日本人が読むと、バブルの怖さとか、借金経済が破綻したらどうなるか、とか、今後の自分たちを考える上でも、いい本だと思います。

いつかどうにかなるさ・・・

では済まないことって、ありますからね。特にお金がらみだと。

そういう意味でも、この本は日本の皆さんにオススメですね。

まだ読んだことがない方は、ぜひ一度目を通して、

ギリシャ人ってどういう人たちなのか、そしてどうしてこんな経済危機なのか、理解を深めてもらえると嬉しいです!!

-ギリシャにまつわる本
-